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小波 季世|Kise Konami
2024年10月19日 15:20
■親子の出迎え早朝、静かな雨音で何度か目が覚める。東京から新幹線とバスを乗り継ぐこと約5時間かかって到着する、1,000メートル級の山々に囲まれた山間のまち。その片隅にある民家の2階の和室。窓のすぐ外は山々で、昨日この家に着いたときは鹿の親子が出迎えてくれた。できたら朝から散策に出かけようと思っていたけれど、移動続きで昨日も2万歩近く歩いていたためか、体が動かない。貪欲に動き回り、とにかく「
2024年9月16日 20:29
■春の日のメロディーポストを開けると、夜空色の封筒が入っていた。見覚えのあるその封筒。受け取るのは2回目だ。中身はわかっていた。だからこそちゃんと落ち着いたときにこそ開封したいと思っていたら、数日が経っていた。静かな部屋の中で一人そっと封を開ける。中に入っていたのは、数枚のモノクロ写真と折りたたまれたメッセージ。私は一瞬で「あの日」に戻っていった。* * *春の昼下がり。窓から明るい
2024年8月12日 18:15
■過去からの贈りもの7月某日、大学の先生からメッセージが届く。今年ゲストとして大学1年生向けの授業にお邪魔した。その受講生の提出課題についてのお知らせだった。提出課題は、それぞれの学生が趣向を凝らした短い動画形式でまとめられていた。数ヶ月前、授業で私が話したこととリンクするような内容もいくつかある。技術的には荒削りでも、圧倒的な素直さで胸のど真ん中に飛び込んでくる言葉や表現。目の奥が熱くな
2024年7月7日 16:40
■宝物のようなほめ言葉6月某日。尊敬する方に、お見せした原稿を手放しでほめられた。今でも夢なんじゃないかと思う。書くことを人生のなりわいの一つにしているとはいえ、本当に尊敬している––高校生の時から知っている––プロの書き手の方からの言葉だったから。あたたかいお言葉と「!」やニコニコマークがいっぱいの感想原稿を受け取った日から、何度も見返している。愛を持って厳しいことも率直におっしゃる正直な
2024年5月26日 15:56
■プロローグ日本から飛行機を乗り継いで25時間ほど。ロンドン、ヒースロー空港。子どものときから好きで、年末にはいつも観たくなる映画の舞台。人生2回目のヨーロッパ旅行はそこからスタートした。イギリスへの入国手続きはあっけなく終わる。EU諸国やカナダ、オーストラリアなどといった国のほか、日本や韓国のパスポートを持っている入国者は、無人ゲートでパスポートを機械にスキャンさえすれば、すぐに入国できる
2024年4月30日 10:21
■穢された豊かさ。そしていま。1日1日の密度が、それまでの1年をぐらぐらと煮詰めたくらいに濃かった4月。旅に出た。成田空港から飛行機で西日本へ。初めて降り立った土地や懐かしい土地を歴訪した数日間。最後に訪れたのは、香川県は豊島にある豊島美術館だった。訪問の数週間前に読んでいた冒頭の小説にも登場するこの美術館。私がその存在を知ったのは、元々は親友夫婦に勧められてのこと。いつかは行きたいと思
2024年3月29日 07:02
■石橋を叩いて割る彼女、今にも落ちそうなつり橋を走り抜けようとする私3月某日。疲労感とともに目覚める。前日、気づいたら7cmヒールで1万歩近く歩いていた。パソコンや本が数冊が入った鈍器のようなかばんを持ち歩きながらの移動だったので、さすがに足首が悲鳴を上げている。疲労のあまり寝るのが優先で、マッサージを怠ったのがいけなかった。まずは体を温め直さなくては。寝ぼけまなこで浴室に向かい、蛇口をひねっ
2024年3月3日 07:54
■アメリカからの友人と旅人2月某日、アメリカ在住の友人Kが一時帰国するというので数年ぶりの再会。数年ぶりでも、久しぶりという感覚はほぼなかった。お互い、今以上にもっと未熟だった学生時代に出会い、相手の赤裸々な一面を良くも悪くも知り尽くしているから、ということもあるかもしれない。私が人生に弱気になっていたときにKに本気で怒られたときもあるし、Kに対して私が烈火のごとく怒り狂い、絶縁予告をしたこ
2024年1月31日 22:55
■6年ぶりの海の向こう2024年の2日目。10年ぶりに韓国を訪ねた。人生3度目の訪韓。海外旅行は実に6年ぶり。コロナで海外渡航も難しかった2021年、海外に行けるようになったらすぐに行けるようにと新調したパスポートは、お披露目になるまでに実に3年がかかった。成田空港とも6年ぶりの再会だ。6年前も今回も、年明け早々日本を発つ。クリスマスや年越しのシーズンを過ぎてから海外渡航するのは、飛