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言葉のテリーヌ

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色とりどりの言葉を僕の好みで集めてみました。
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2020年1月の記事一覧

「繊細だね」って簡単に言わないでくれ

「繊細だね」って簡単に言わないでくれ

「鈍感になって生きやすくなるために」「繊細な部分をうまく生きやすくしよう」っていう本が流行っている昨今、どれだけの人が「繊細である」ということで生きづらいのかというと、まだまだその数は計り切れないと思う。

ただでさえ人と比べてしまうことの多いわたしたちだ。少し人と諍いが起きたら自分のせいにしてしまったり、逆に相手に嫌な感情を抱いたりする。わたしは諍いすら避けてきた。

その扱いづらい「繊細」を何

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名前

昔々、ある村に一人の男がいた。

彼は、財産も、能力も、全てを持っていた。

ただ1つだけ、彼には、名前がなかった。

村の人々は、彼を「彼」と呼んだ。

「あの家の人」

「あのお金持ちの人」

「あの優秀な人」

そんなふうに呼んだ。

誰も、彼の名前を気にしなかった。

彼は、名前が欲しくなった。

村中の人々に、名前を売ってはいないかと聞いた。

しかし、誰に聞いても、名前を売ってはいなか

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風に舞う花びらのように、川面を流れる木の葉のように

「風流」という言葉がある。
主に、雅やかな様子や趣があることを指すと解されている。

けど、玄侑宗久さんという僧(兼、小説家)がテレビで説明していたことが印象に残っている。「風流とは仏教の用語で、思うがままにならないことを受け入れる心の余裕、つまり『揺らぎ』のことです」と。
仕事で雁字搦めになって身も心も限界が近かった時に、玄侑さんが喩えて「雨が降ってきたけど傘を持っていない。あぁ風流だねぇ」と説

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予防線

高校時代、国民的人気アニメの某キャラクターと同じ苗字のクラスメートがいた。どういうわけだったか、彼と一緒に過ごすことが多かった。

ある時、クラスメートと連れ立って、学校の最寄駅の立ち食い蕎麦屋に行った。どんな話の流れか、みんなカレーを食べることになったのだが、その彼だけが明らかに乗り気でなく、蕎麦を注文した。
ノリが悪いというツッコミが入るより前に彼が口を開いた。

「カレー好きなんだけどさ~。

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Introduction

とある友人( https://note.com/kishibe )から「ひでさんの文章が好きで、何か共作できたら良いなと思ってるので一緒にnoteやりましょうよ」と言われて、おだてに弱い僕は調子に乗って3分後にはアカウントを作成していた。

しかし、これといって創作意欲があるわけではない。彼のような流麗な言葉を紡げるわけでもない。僕は子供の頃から文章を書く行為が本当に苦手だった。

特に読書感想文

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2020.1.22          エッセイ日記                *私を見つめて。

2020.1.22 エッセイ日記 *私を見つめて。

朝、仕事に向かうため刺さるような冷たい空気から肩をすくめて駐車場まで歩いた。
凍ったような冷たい車のエンジンをかけて、Youtubeからオールナイトニッポンを聴きながらギアーをドライブに入れてサイドブレーキを解除してアクセルを踏む。
車の表示を見ると、気温は氷点下2℃。辺りは白くモノトーン一色になっている。自分の気持ちも今はその景色とそう変わらない。
仕事は、相変わらず山積み状態。一緒に仕事してい

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判定負け

一昨日、久しぶりに母と電話をした。
正月には実家に帰っていたから、母の声を聞くのは約2週間ぶりでしかないというのに「久しぶり」と感じてしまった僕は、やっぱりマザコン野郎なのだろうか。

ただ、実際に「久しぶり」と感じてしまうほど、この2週間は濃かった。同世代の色んな人と話し、色んな人生を聞いた。すっかり感化され思いが募り募った僕は、母に電話した。僕が変えたくて変えたくてしょうがなかったことを訴える

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Azure

Azure

「今この空の写真があったとして、周りを切り取った真っ青な写真見て、どの季節か判る?」

学生時代の話だ。友人が突然そんなことを言い出した。ラジオの天気予報か何かを聴いたことが発端だった気がする。
「どうしたの急に(笑)」
「『春らしい空模様』とか『冬の寒空』とか言うけどさ。実際、空を見ただけでそんな違い判る?これは春の空とか冬の空とか」
特にオチの無い話で、その後で実際に空の写真をトリムして確認し

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