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パンドーラーの池の底

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#詩人

現代詩 「ギヨタンの夢」

夢の中で仕事をしていて
上手にできないのが切なくて
目が覚めた
早く目を瞑り
再び仕事にとりかからねば
可及的速やかに
朝はもう其処まで来ている
夜を徹して職工たちは
今も慌ただしく労働している
だがしかし
無策に寝ても詮方ない
革新的な作業工程を考えなけりゃあ
斯うして起きた意味がない
其う 意味がない

ぬばたまの未明の閨に
胡座をかいて僕は
仕事の要領を考えた
ううむふむむと考える
だがしか

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漢詩の言葉「冬夜書を讀む」/翻案「片付けられない」

漢詩の勉強です

冬夜書を讀む  <菅山茶>
雪は山堂を擁して 樹影深し
檐鈴(えんれい)動かず 夜沈沈
閑かに乱帙(らんちつ)を収めて 疑義を思う
一穂(いっすいの)の青燈(せいとう) 萬古(ばんこ)の心(こころ)

【語句解説】

檐鈴(えんれい)…檐は訓読みで「のき」。軒のこと。鈴は風鈴。軒下に吊られた風鈴を呼ぶ。

夜沈沈…春宵値千金にも出てくるフレーズ。ちんちんと読んでいるけれど、しんし

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漢詩「去る者は日に以て疎し」/翻案「死んだあなたを忘れる」

漢詩の勉強です

去る者は日に以て疎し 無名氏

去る者は日に以て疎く
来る者は日に以て親しむ
郭門を出でて直ぐ視れば
但だ丘と墳とを見るばかり
古墓は犁(す)かれて田と為り
松柏は摧(くだ)かれて薪と 為る
白楊(はくよう) に悲風(ひふう)多からん
蕭蕭(しょうしょう)として人を愁殺(しゅうさつ)す
故の里閭(りりょ)に還らんと思い
帰らんと欲するも 道 因る無し

【語句解説】

疎し…薄ら

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『ちーちゃんとかれはさん』

『ちーちゃんとかれはさん』

丘の上のまん中に、白くて大きな建物がたっていました。
その中庭に、太っちょの木が一本はえていました。
太っちょの木がいいました。

「オラオラ! はっぱども!
さっさと光採りこんでエーヨー運ばんかい!
太陽はんかて、いつまでも
照ってるワケにはいかんのやで!
陽がくれてまうわ!」

はっぱをかけられた はっぱたちは
夏のあつい陽射しの中、汗をカキカキ働きました。

たくさんの光をエーヨーにかえては

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『詩人の朝』

『詩人の朝』

確かに確かだ
ボクの本棚には真っ白い食パンが並んでいる
切り揃えられているそれを一冊抜き取ってみたまえ
どうにも香ばしい薫りが鼻腔をくすぐるだろう

引き出しに敷き詰めた珈琲豆から
弾きたて珈琲を優雅に奏で、芳醇に味わう朝
詩人の暮らしというのはどこかしら
かかとが浮いてるものさ

猫と自転車はセットだが
今は二人とも家出している
ニヤニヤしてしまうのを我慢しながら
チーズとバター味の喧嘩をして

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『こころ』

『こころ』

心はどこまで広がれると思う?
心はどこまで深くなれると思う?
心はどこまで輝けると思う?
心はどこまで悲しくなれると思う?
心はどこまで黒くなれると思う?
心はどこまで強くなれると思う?

こたえは、どこまでも、だ。
心は、命そのものだから。

あとは君が、心をどうしたいかだ。

『僕と金魚と星降る夜と』

『僕と金魚と星降る夜と』

大のクジラが二足歩行で歩いているのだから
ワニだって二足歩行で歩いていい。
こんな星降る夜なら特に。

口をあけて
星を食べると
金平糖のように甘い味がした。

霜の降りた道に
静かにバスが停まり、
魚たちが降りたり乗ったり
僕も乗らなきゃいけないはずなのに
体が動かない。

バスが去ってゆく。
赤いテールランプが峠の向こうにかすんで消える。
金縛りがとけて走り出す。
駆けても駆けても景色は同じ。

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