渡辺健一郎/kenken

批評家・俳優 「演劇教育の時代」で第65回群像新人評論賞受賞。著書に『自由が上演される…

渡辺健一郎/kenken

批評家・俳優 「演劇教育の時代」で第65回群像新人評論賞受賞。著書に『自由が上演される』(講談社)。 お気軽にご連絡ください。sebatex@gmail.com

記事一覧

演技における居心地の悪さ④

現実が複数であることについて  ここしばらく実家にいるのですが、月一でお墓参りに行っているということで、先日ついていきました。大学生くらいまでは、冠婚葬祭、一…

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演技における居心地の悪さ③

「元気?」の言語行為論  「元気?」と聞かれても、私はそのとき本当に元気かどうか考えてしまいます。相手は元気かどうかを聞きたいのではない、何の気なしの挨拶だと…

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演技における居心地の悪さ②

読書と内言  私たちは「読書」という能力が人間にとって当たり前のものであるかのように思っていますが、しかしそこで行われていることは全く一様ではないとマシュー・…

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演技における居心地の悪さ①

前/後が上演される  2024年2月10日、京都芸術センター(以下、芸セン)講堂で開かれていたお茶会に参加いたしました。芸センでは定期的に、アーティストがホストとなっ…

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2023年7〜9月活動予定(演劇/批評)

【文章】渡辺健一郎×小峰ひずみ 往復書簡(第三回)「顕れる観客」 批評家、小峰ひずみさんとの往復書簡第3回目です。「書くこと・思考のリズム」を問題にしている点で…

【演劇】あした帰った『あなたは山になる』

私がいま厚めに関わっている団体、「あした帰った」の演劇上演のお知らせをいたします。 ●「あなたは山になる」概要 2023/6/4(日) 15:00- @高槻城公園芸術文化劇場・大…

【宣伝】デリダ『声と現象』読解講座(オンライン)

 PARA神保町にて「ジャック・デリダがわからないーー『声と現象』読解」という講座をやることになりました。芸術に関わる人のための哲学書読解講座。 前年度はベンヤミン…

渡辺健一郎×小峰ひずみ 往復書簡(1)――指導者について、書くことについて

小峰ひずみ様  往復書簡の提案、快諾していただいて大変うれしく、ありがたく思います。……せっかくこういう形式なのにどうしても堅苦しくなってしまいそうで、適切な第…

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演技における居心地の悪さ④

演技における居心地の悪さ④


現実が複数であることについて

 ここしばらく実家にいるのですが、月一でお墓参りに行っているということで、先日ついていきました。大学生くらいまでは、冠婚葬祭、一切の儀礼を何と無駄なものだと思っていたのですが、特にそういう発想をすることはなくなりました。目の前に、他にやりたいこと、やらねばならないことが存している場合(何らかの〆切直前とか)にはその限りではないでしょうが、天気も良かったし、ゆっくり

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演技における居心地の悪さ③

演技における居心地の悪さ③


「元気?」の言語行為論

 「元気?」と聞かれても、私はそのとき本当に元気かどうか考えてしまいます。相手は元気かどうかを聞きたいのではない、何の気なしの挨拶だということは分かっているものの、聞かれたことが自分でも気になってしまって、いつも返答がワンテンポ以上遅れてしまいます。
 しかし実際に元気がどうかが問題でないならば「こんにちは」でも良いはずです。何故「元気? How are you?」とた

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演技における居心地の悪さ②

演技における居心地の悪さ②


読書と内言

 私たちは「読書」という能力が人間にとって当たり前のものであるかのように思っていますが、しかしそこで行われていることは全く一様ではないとマシュー・ルベリー『読めない人が「読む」世界』(片桐晶訳、原書房、2024)で言われています。
 この本、三日くらい前に初めて読んだのですが、まさに私が前回の記事で問題にしたこととほぼ重なる内容を書いてくれていると感じられました。私たちは「同じ本」

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演技における居心地の悪さ①

演技における居心地の悪さ①


前/後が上演される

 2024年2月10日、京都芸術センター(以下、芸セン)講堂で開かれていたお茶会に参加いたしました。芸センでは定期的に、アーティストがホストとなった「明倫茶会」が行われています。多くの場合は単にお茶を飲みながら団欒する、という限りではないようです。私は初めての茶会参加でしたが、特異な体験から様々な思考が湧出してしまったので、ここに記述しておきます。
 あらかじめ言っておけば

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2023年7〜9月活動予定(演劇/批評)

2023年7〜9月活動予定(演劇/批評)


【文章】渡辺健一郎×小峰ひずみ 往復書簡(第三回)「顕れる観客」

批評家、小峰ひずみさんとの往復書簡第3回目です。「書くこと・思考のリズム」を問題にしている点で共通している私たちですが、しかしそのリズムには大きな違いがある。書くことにまつわるそれぞれのリズムは、読者=観客といかなる関係を持つのか。

【演劇】1.不労社『悪態_2307』 アフタートーク

7月23日(日) 15:00〜 フジハ

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【演劇】あした帰った『あなたは山になる』

【演劇】あした帰った『あなたは山になる』

私がいま厚めに関わっている団体、「あした帰った」の演劇上演のお知らせをいたします。

●「あなたは山になる」概要

2023/6/4(日) 15:00- @高槻城公園芸術文化劇場・大スタジオ
劇研アクターズラボ+伊藤拓也 あした帰った
  出演・構成:岡部暁美 片岡志保美 斎藤ひかり ナオカ 
        夏小屋丸Chiering 八木智大 保田大介
  調整・制作:渡辺健一郎   指導・演

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【宣伝】デリダ『声と現象』読解講座(オンライン)

【宣伝】デリダ『声と現象』読解講座(オンライン)

 PARA神保町にて「ジャック・デリダがわからないーー『声と現象』読解」という講座をやることになりました。芸術に関わる人のための哲学書読解講座。
前年度はベンヤミン『ドイツ・ロマン主義における芸術批評の概念』を読んだのですが、これが少なくとも私にとってはあまりに実り多く、引き続きコレという著作をやらせてもらえることになって本当に良かった。
 デリダの中では地味だという扱いを受けている本書ですが、芸

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渡辺健一郎×小峰ひずみ 往復書簡(1)――指導者について、書くことについて

渡辺健一郎×小峰ひずみ 往復書簡(1)――指導者について、書くことについて

小峰ひずみ様

 往復書簡の提案、快諾していただいて大変うれしく、ありがたく思います。……せっかくこういう形式なのにどうしても堅苦しくなってしまいそうで、適切な第一歩というのが分からなくなり、書き出しに小一時間かかってしまっている自分に苦笑しています。無理やりひねり出した書き出しが、定型的で凡庸なものになってしまうことをお許しください。
 なるほど、とりあえず書き出してしまうためにも、時候の挨拶な

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