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学術記事

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記事一覧

貨幣発行自由化の先にあるもの

貨幣発行自由化の先にあるもの

インターネットの確かなトレンドの一つに『web3.0』と呼ばれるものがある。ティム・バーナーズ・リーがワールドワイドウェブを1989年に発明してから、データという無形資産のあり方が問われるようになった。

まず、web1.0では、コンピュター開発会社やその他のデータ会社が一方的にユーザーへデータを持ちかけ提供していた。ところが、デジタルマーケティングなどのデータ・ドリブンの発達により、web2.0

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サブスクリプションと倫理学

サブスクリプションと倫理学

「所有」から「利用」への価値観の変化は、一見すると小さな変化に見えるが、倫理的な面で見方を変えると、非常に大きな変革と言えるだろう。
今年も自分にとっての学びを振り返っているなかで、2023年の初めに書こうと思っていた本雑記は年末になってしまったのだけど、こんなニュースが当初密かに物議を醸していたのはご存知だっただろうか。

当然ネットは大荒れ、「命を甘くみるな」とか動物愛護団体への非難もみられた

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人はなぜ、宇宙を目指すのか

人はなぜ、宇宙を目指すのか

先日、驚くべき記事が目に入った。それが、以下の記事。

https://www.cnn.co.jp/fringe/35174186.html

民間企業の人間が、宇宙へ行ける時代がいよいよやってきた。アポロ計画やスペースシャトルで宇宙飛行士だけが行くことができるとされてきたのだが、一般人が地球の外へ飛び出した。

振り返ってみると、戦後にかけて、アメリカとソ連が宇宙開発の競争を繰り広げていたことは

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誰にも縛れない社会で生きるということ

誰にも縛れない社会で生きるということ

新型コロナウイルスと言われる無知のウイルスが社会に与えた被害は甚大であることはいうまでもない。大学ではオンライン授業を余儀なくされ、ニューノーマルと言われる時代に突入し、その多くはネガティブなものである。例えば、マスクをしながらの生活や、コロナ禍でのうつ病の増加など、深刻な問題として挙げられる。

もちろんポジティブな面もある。オンライン化によって通勤を必要としない、リモートワークが普及し、業務効

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自己啓発本と自己語り

自己啓発本と自己語り

『嫌われる勇気』『7つの習慣』『人を動かす』これらの自己啓発本には、非科学的な要素が多く含まれているという共通点がある。これらはどれもベストセラーとして有名だ。多くの日本人はこうした自己啓発本を読んだり、セミナーを開いたりしている。

こうしたスピリチアルな自己啓発本が世に出てきた背景には何があるのだろうか。何か、大きな背景が存在するのだろうか。

最初に思いついたのは「新興宗教」のような、マイン

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最近の哲学が胡散臭くなっていると感じて

最近の哲学が胡散臭くなっていると感じて

ふと、マルクス・ガブリエルやカンタン・メイヤスーなどの現代哲学者の論文を読んでいると、どうも最近の哲学はどこかパッとしないなと感じている。

確かに、古代〜近代哲学は、大きく学問の礎を作ったと言っても過言ではない。ここでは、詳細に哲学者の思想の話はしないが、古代ではプラトンのイデア論、中世になるとトマスアクイナスの神の存在証明、近代になると、「我思うゆえに我あり」で有名なデカルトの独我論。さらにカ

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子供と大人を区別すること

子供と大人を区別すること

最近、教育学の勉強をしていると、どこからが子供でどこからが大人なのかということを考える時があります。社会に出て、社会人になったら大人、20歳を過ぎるまでは子供、お酒が美味しいと感じるようになったら大人など、その線引きは久しく曖昧になっています。

「まだ、子供だから」と言われるのは意外と4歳ぐらいまでで、それ以降はもうお兄ちゃんなのだからしっかりしなさい、などと親から言われる。そう考えると、意外と

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現代社会における宗教について

現代社会における宗教について

近頃、私の最寄りの駅で宗教の勧誘がとても増えているなあと感じました。当然こういうご時世なのだから、まあ、宗教に縋る人も出てくるわけだし、別にその人を否定するつもりはありません。

ただ、宗教って今の社会でどういう役割を果たしているのだろうかということをもう一度考えてみようとふと、思いました。

太古の昔からあると言われている宗教と言われるものですが、この大変な現代社会に生きる我々にとって、宗教って

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デジタル民主主義の未来

デジタル民主主義の未来

とても刺激的というか、興味深い対話だった。それは、オードリータンのデジタル民主主義についての話だ。そもそも、デジタルと民主主義を混合させるということは、長年議論されているものではある。しかし、このオードリータンが議論の的にしてるものとしては、「人間がデジタルを操るのか、それともデジタルが人間を操るのか」という人間とデジタルの共存に関する部分だ。

もともとオードリータンは台湾のデジタル改革の先駆者

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都市社会学から考える20××年の都市構想のあり方

都市社会学から考える20××年の都市構想のあり方

この数年の確かなトレンドに、「誰一人取り残さないデジタル化の実現」がある。その実現の一環として、GIGAスクール構想や、デジタルデバイドにおける格差の是正など様々な取り組みが昨今なされている。その中でも数年後の未来を考える上でははずせない取り組み・思想の一つに「デジタル田園都市国家構想」というものがある。

「デジタル田園都市国家構想」とは、「地方創生の一環としてデジタルを駆使し、都市部に負けない

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神話の社会的意義

神話の社会的意義

かくして人は「嘘」が大好きだ。お世辞や社交辞令など礼儀としてつく嘘や、恋人や友達、飲みの席などでの相手を喜ばせるような嘘など、社会では様々な嘘が蔓延っている。正直、人間社会は嘘をなくして、生きていくことなどはできやしない。かつて、歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリは、人間社会は太古より「虚構」によって成立した、と供述した。あながちこの主張は間違ってはない。

現在では、嘘を現実のように見せることなど

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無意識を制御するAI選挙

無意識を制御するAI選挙

大学生の頃イギリスに留学して、プレミアリーグを見た時のことをふと思い出した。日本がドイツに勝った時、国が繋がったような気がした。プレミアリーグでは僕はアーセナルのファンなのだが、アーセナルファン同士で、絆や繋がりを感じた。

ところで、近代社会というのはナショナリズムが叫ばれ、上記のような共同体がどのように出来るのかという学術的研究が多く存在する。

その研究で最も有名なものの一つにベネディクトア

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「可愛い男子」はいつ誕生したか

「可愛い男子」はいつ誕生したか

形容詞cuteの記号論的体系を考察してみた時、かわいいという日本語には多くの不確定要素が含まれていることは容易に理解できる。それは日本人が英語のcute/prettyのように区別をしないということだけではなく、かわいいという形容詞に対して、さらに形容詞的要素が付随しまうことも一つの複雑性を増している原因だろう。例えば、「ぐうかわ」「おにかわ」「グロかわ」など、日本には海外になはい「かわいい」が量産

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