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介護の言葉㉕人生100年時代

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 私は、臨床心理士・公認心理師越智誠(おちまこと)と申します。

「介護の言葉」

 この「介護の言葉」シリーズでは、介護の現場で使われたり、また、家族介護者や介護を考える上で必要で重要な「言葉」について、改めて考えていきたいと思います。

 時には、介護について直接関係ないと思われるような言葉でも、これから介護のことを考える場合に、必要であれば、その言葉について考えていきたいとも思っています。

 今回は、ここ数年になって、急激に耳にする頻度が増えた言葉ではあるのですが、それを聞いて、いろいろと考えさせられたので、このテーマで取り上げようと思いました。

 よろしくお願いします。

100歳

 もう何年も前の話になってしまいましたが、妻と一緒に在宅で介護をしていた義母が、100歳を迎えた頃のことは、覚えています。

 誕生日が12月で、だけど、敬老の日は9月なので、その近辺に「100歳の祝い事」は集中しました。その時の首相や都知事の名前の入った賞状や、記念品、銀杯などが届きました。

 どこまで本当か分かりませんが、昔は100歳の方には、100万円が贈られる、という話をする人がいて、今も、それに近いことがあるのではないか、というような話まであったのですが、当然ですが、そんな大金が贈られるわけはありません。

 ただ、100歳なので、もし新聞などの取材があれば、それを受けますか?というような質問に答える機会もあって、そういったことには、いろいろと相談をした上で、受けないことにしました。

 唯一、家にやってきてくれたのは、近所の出張所の所長さんで、直接、お祝いを渡してくれる、ということは拒めないので、お願いしました。できたら断りたかったのは、所長で、怖そうな男性が来たら嫌だったのですが、その時は、女性の所長さんで、義母にも私たちにも気を使ってくれたので、変な緊張をしないで済んだのは、ありがたいことでした。

 義母は、耳も聞こえなくなっていて、身障者手帳も取得していました。ほぼ立てないので、ベッドで生活し、ポータブルトイレに私たちが連れて行き、要介護4でしたが、食欲はあって、元気も良く、所長さんが来たときも、笑顔と大きな声で対応してくれました。

 平均寿命は伸びたとはいっても、家に100歳の人がいると、ご近所の方も含めて、義母は「すごいですね」とほめられて、うれしそうでした。


 ただ、介護をしている家族としては、何しろ、このお祝いをされているときは、まだ満100歳ではなかったので、とにかく、12月の誕生日までは生きていてもらわないと、なんとなく、お祝い事をしてもらったのに、だましたようになってしまうし、と思いながらも、その後、無事に100歳を迎えられた時は、いつもの年とは違う安堵感がありました。

 義母は103歳まで生きてくれたのですが、妻と私の二人で介護をしていた期間が、19年くらいにはなったはずです。もちろん、最初から、全介助に近いわけではありませんでしたが、誰かが何かしらの補助をしなければ生活できなかったはずで、そう考えると、長生きしている人は、もしも家族が何かしらの世話や介護をしているとする場合は、その長寿の背後に、家族の費やした手間や時間があると思えるようになりました。

人生100年時代

 いつの頃からか、「人生100年時代」と言われるようになりました。

 最初に聞いた時は、「老後2000万円必要問題」と同様に、社会の不安をあおって、仕事につなげる金融業界のキャンペーンかもしれない、と思っていました。

 それは、屈折した見方なのかもしれませんが、健康寿命までが「100年」にならない限り、長生きした分だけ、おそらくは、うちの場合のように、誰かが介護とまでいかないとしても、人の手は必要になると思われますので、介護などの支援とともに語らない限り、「人生100年時代」は、とてもポジティブな見方ができませんでした。

 ただ、それは民間だけというのではなく、厚労省のサイトでも、こうした動きが出てきましたので、これからも言われ続けていくのだと思います。

 ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎えています。

100年という長い期間をより充実したものにするためには、幼児教育から小・中・高等学校教育、大学教育、更には社会人の学び直しに至るまで、生涯にわたる学習が重要です。

 人生100年時代に、高齢者から若者まで、全ての国民に活躍の場があり、全ての人が元気に活躍し続けられる社会、安心して暮らすことのできる社会をつくることが重要な課題となっています。

 こうした中で、当然ながら、高齢者や介護に関係ありそうな項目もありました。

介護と労働

介護人材の処遇改善
 
介護人材の確保のため、2017年4月から、介護職員について、経験などに応じて昇級する仕組みをつくり、月額平均1万円相当の処遇改善を行いました。
 今後、経験・技能のある職員に重点化を図りながら、介護職員の更なる処遇改善を進めます。

リカレント教育
 労働者が何歳になっても必要な能力・スキルを身につけることができるよう、リカレント教育機会の拡充に取り組んでいます。

高齢者雇用の促進
 働きたいと考える高齢者の希望をかなえるために、高齢者の就業促進策に取り組んでいます。

(厚生労働省ホームページ:「人生100年時代」に向けて)

 本当に「人生100年時代」になれば、介護が必要な人は増大するのは間違いありません。

 そうした中で、「介護人材の処遇改善」という目標はあるものの、「リカレント教育」や「高齢者雇用の促進」は、元気でいることが前提なので、もっと要介護者が増えた場合、現在の介護保険のあり方を考えると、家族が介護する負担は増えることがあっても、減ることはなさそうです。

介護者支援

 さらに言えば、「人生100年」といった言葉は、笑顔とともに語られることが多くなったように思います。

 それでも、ここまで述べてきたように、とても個人的な経験でも、103歳まで生きてくれた義母も、私と妻が介護をした期間が、15年以上はあったように、長生きをする人には、多くの場合、それを支える家族がいるはずです。

 もし、これから、コロナ禍のあとでさえ「人生100年時代」になっていくとすれば、その本人に対して、どうケアをしていくか。
 介護の専門家を、どうすればもっと大事にできるのか。
 それだけではなくて、より長い年月、介護をすることになる家族を、どう支えていけばいいのか。

 そういったことも含めて考えて、対策をとっていかないと、その「人生100年時代」は、とても明るく語れることではなくなってしまうと思います。


 そうしたことを考えているので、「人生100年時代ですね」と、明るく言われた時に、どうしても、それに賛同するような心からの笑顔ができなくなっているのが現在なので、少し申し訳ない気持ちもあります。

 ただ、「人生100年時代」と明るく言えるようになるためには、介護のこと、介護をする人たちへの支援のことも、考えなくてはいけないのだと思っています。



(他にも、いろいろと介護のことを書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。



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