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介護に備える②家族との関係をよくする

   このnoteの記事は、家族介護者の支援につながれば、と考え、家族介護者の方だけでなく、介護に興味がある方や、介護の専門家へも向けて、いろいろと伝えようとしてきました。

(私の経歴については、ここをクリックしていただければ、少し長いですが、概略は伝わるかと思います)。

   ただ、それだけでなく、まだ介護をしていないのだけど、介護に興味を持つ方々も当然ながら多いのではないか、という印象も持つようになりました。このシリーズでは、そうした「介護に備えたい」方々へ向けて、何回かに分けて、お伝えしようと考えています。

   この内容は、今まで書いてきたことと重なってしまうこともあるのかもしれませんが、少しでもお役に立てるようにしたいと思っています。前回(リンクあり)に続いて、第2回目は「家族との関係をよくする」です。

家族との関係

   今回、「家族との関係をよくする」というテーマなのですが、前提として、全員に当てはまるとは考えていません。これを読んでいただいている人たちは、比較的若く、これから介護に関係するかも、と思っている方達だと考えています。

 そうであれば、現実的には、これから介護をするかもしれない相手は、親や祖父母になるかと思うのですが、「家族との関係をよくする」ことができるのは、それほど関係が悪くない方々だと思っています。

 祖父母や親など、要介護者になる可能性がある方がいらっしゃったとしても、そういう方々と、今はいろいろあって距離をとっていて、できたら、介護はしたくない、という方もいらっしゃるかもしれません。

 そうした方々は、今回の記事の最後の方になるのですが、「介護をしないことを準備する」という項目を読んでいただければ、と思っています。

介護の負担感

 介護が始まってからの負担感については、いろいろと書いてきました(リンクあり)。その負担感だけで、かなり追い詰められてしまうこともありますが、介護の負担感は、介護が始まってからだけでなく、それまでの要介護者との関係性によって生じている葛藤なども含めて、のしかかるように加わってくることがほとんどです。

 介護負担感=介護前からの葛藤+介護を始めてからの負担感

 やや乱暴な図式なのですが、「介護負担感」は、このように考えられるはずです。

 このうち「介護を始めてからの負担感」は、やってみないと分からない、ということだと思いますが、それでも、その負担感を少しでも減らすため方法も、考えてきました(リンクあり)。

 今回は「介護前からの葛藤」について、介護が始まるまでに、この部分の負担感を少しでも減らすための方法を考えていきたいと思っています。

家族との関係をよくする

 今は、介護とほぼ無縁の生活をされていて、「介護に備えたい」という方に向けて、お伝えしたいのは、可能であれば、「家族との関係をよくする」ことを意識してもらえないでしょうか、ということです。

 もちろん強制ではないのですが、今回は、比較的若い方と想定し、その親御さんや、もしかしたら祖父母の方との関係が、それほど悪くない場合は、これまでよりも意識的にコミュニケーションを増やしてみるのは、どうでしょうか。

 どんなご家族であれ、その関係がすごく良好の場合のほうが、もしかしたら少数かもしれません。
 逆にいうと、多少の葛藤があるのは当然ですから、たとえば子供の立場だった方が独立し、別世帯で住むようになると、親に対して、そんなに連絡もとらなくなったり、帰省もしなくなったりしている可能性も高いと思います。

 一般的な話ですが、家族関係の葛藤がある場合、そのままにしていたら、ずっと変わらないまま存在し続ける、という印象が年々強くなっています。課題(というのは大げさとしても)というものは、解決なり、納得するなり、話し合うなり、何かしらの働きかけをしなければ、その課題は、何十年たっても、実はほとんど変わらないと思うようになりました。

 今年は、コロナ禍のために、家族であっても、別の場所に住んでいる場合は、実際に会うことは難しくなってしまい、また、こういう非常事態が続いていることによって、関係性に微妙な変化があった人もいるかもしれませんが、もし、よかったら、単純に、連絡の数を増やすことから始めてみてはいかがでしょうか。

 何かをしようと考えなくても、それだけで、おそらくは、ほんの少しずつでも関係性はよくなっていくと思います。もちろん、すぐに目覚ましい変化があるわけではないとは思いますが、それでも、今までとは違う変化を自分から起こして、関係性を少しでもよくする、ということを始めてみるのも、マイナスにはならないと思います。

 その行動には、照れがあったり、急に連絡を増やすのは抵抗感があるかもしれませんが、もしも、将来、介護をする気持ちがあるとすれば、その将来の自分の負担感を少しでも減らすには、今の関係性が少しでも良くなればなるほど、減る可能性があります。

 将来の自分のため、と思って、試してみては、どうでしょうか。

「振り込め詐欺」の予防

 また、こうしてコミュニケーションを少しでも増やしていけば、意図をしていないかもしれませんが、結果的に、ご家族が「振り込め詐欺」の被害にあう確率も減っていきます。普段、電話などもしないと、「振り込め詐欺」にだまされがちですが、よく連絡をとっていれば、間違えにくいですし、何か不審なことがあった時に、連絡をしやすい状況になっているので、そうした被害を防げる確率も増えます。

「振り込め詐欺」は、現金などの直接的な被害ももちろん避けたいのですが、それと同様に、時としてそれ以上に、「振り込み詐欺」の被害にあうことでの、心理的なダメージが大きい場合があります。どうしてだまされてしまったんだ、と責められることもありますし、被害者でありながら、周囲の人に迷惑をかけてしまった、という自責の念によって、心身の調子が悪くなることもありえます。

 コミュニケーションを増やし、関係性が少しでも良好になることで、そんな悲劇も防げる可能性が高まります。


 さらに、もし、こうして「介護に備える」努力をして、将来介護が必要でないこともあり得ます。それでも、ご家族との関係が良くなるとすれば、それは、悪いことではないと思いますが、いかがでしょうか。

介護をしないことを準備する

 ここからは、冒頭付近で述べたように、たとえば、要介護者になるかもしれない親との関係がよくなくて、現在、すでに距離をとっているか、もしくは、将来は、それこそ顔を見たくないような気持ちでいる方であれば、別の準備が必要だと思います。

 赦せない気持ちを抱いたまま、母と向き合いつづけることはできません。お金や公的支援などを使って、なにがなんでも避けるでしょう。一対一で本気で向き合ったら、危険な状況になってしまうのは目に見えているから。それを避けるためにもなんとか〝本当の気持ち〟にふれないまま関係を終わらせたい。本当のことを口にしないことで、静かな別れを迎えられるかもしれない、と思っているんです。

 これは、母親と娘の関係についての書籍ですが、他の関係性であっても、もし、こうした考えに共感できるのであれば、「介護をしないための準備」が必要ではないでしょうか。

 きらいな親の介護を無理やりすれば、そのストレスで今度は自分の子やパートーナーにネガティブな感情をぶつけてしまうでしょう。自分の心身の健康もたちまち損なわれるでしょう。怒りや恨みを抱えた人に介護される親も不幸です。いいことはひとつもありません。

 たとえば、「嫌いな親」と距離をとっていたとすれば、今は「親」のことは考えたくないかもしれません。それでも、未来に、何が起きるかは、本当に分かりません。

 何も準備していない状況で、いきなり親が倒れる。そして、自分が介護をしなくてはいけなくなることもあり得ます。もしも、どうしても「介護をしたくない」のであれば、「介護をしないための準備」をしないと、ご自分も、ご家族も、周囲の方々も、思った以上に傷つくこともあるかもしれません。

 どうしても、考えたくない、ということであれば、無理をすることはありませんが、必要以上の混乱を避け、ご自分の苦痛や周囲からの非難をなるべく少ないまま、介護をしなくていいようにするには、いろいろな準備をしていく必要があることを、「きらいな母を看取れますか?」を読んで、改めて思いました。

 もちろん、この本だけでなく、他にもいろいろと参考にできる資料などもあるでしょうし、「介護をしないための準備」も、人によって違うとは思うのですが、その「準備」を始めることも、ご自分の将来のためではないでしょうか。


 今回の、「介護に備える」は以上です。
 次回「介護に備える」③は、また来週の予定です。(投稿したら、ここにもリンクします)




(他にもいろいろと介護について書いています↓。読んでいただければ、ありがたく思います)。


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越智誠  臨床心理士/公認心理師  『家族介護者支援note』
 この記事を読んでくださり、ありがとうございました。もし、お役に立ったり、面白いと感じたりしたとき、よろしかったら、無理のない範囲でサポートをしていただければ、と思っています。この『家族介護者支援note』を書き続けるための力になります。  よろしくお願いいたします。

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