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想い出レストラン

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時々思い出す、忘れられない想い出の味。
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#エッセイ

ちらし寿司

ちらし寿司

春は野菜が美味しい。最近は季節の感覚がなくなるほど、年がら年中どんな野菜もスーパーに並ぶけど、季節特有の、特に春の野菜はやっぱりその時じゃなくては出会えないのでは?と思う。とても特別感がある。
季節のモノを食べることは、体にもいいらしい。
冬から春にかけて、苦みのある野菜が出始める。菜の花、ふきのとう、たらの芽、うど…。その苦みは、冬の間に溜まった老廃物や毒素をデトックスしてくるらしい。昔々から、

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繰り返す餅好き

繰り返す餅好き

お正月が過ぎてもう一か月経とうと言うのに、母はお餅を好んで食べている。お雑煮用に年末にお餅を買い始めて、無くなると補充し、お雑煮を食べていた。近頃は海苔巻きやら、きな粉餅にして食べている。
昔、お餅が好物だった祖母に、
「よく飽きずにお餅ばっかり!」
と言っていた母がである。今では、週末に帰ってくる妹に同じように言われている。

食べ物の好みは年を重ねるごとに変わる。子供の頃嫌いだったモノが、大人

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小笠原のチャーハン

小笠原のチャーハン

久しぶりの平日休みになった主人。久しぶり…というより、ほとんどあり得ない平日の休みだ。ウキウキでお昼を外で食べることにした。大体、主人と行くお昼ご飯は『お昼ご飯』であって、『ランチ』ではない。カレー、ラーメン、ちゃんぽん…、いいとこお蕎麦屋さんである。その日は所用でいつもは行かない方角だったので、今日は『ランチ』かな~っていう願い…むなしく、やっぱりラーメンだった。ブーブー文句を言いつつ向かうと、

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チリコンカンと白い蕾とお月さま

チリコンカンと白い蕾とお月さま

最近、食欲が無くなった…と言う母を心配していた。確かに、元々ほっそりしていたけれど、近頃はやけに小さく見える。娘二人は、いかに痩せるかに興味津々なのに、羨ましくもある。だけど、母の食欲不振はパーキンソン病だと言うことも関係しているのであって、ちょっと心配なのだ。
そんな折、テレビで見て美味しそうだったと、チリコンカンを食べてみたいわと言う。
へえ。そんな異国の食べ物に惹かれるなんて、まだまだ食欲は

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とち餅

とち餅

旅行に出て、お土産屋さんでつい買ってしまうものがある。とち餅だ。本当はお土産物のそれより、また食べたいとち餅がある。味の濃さが全然違う。いつも、買ってしまっては、「違うんだよな…。」とお父さんを思い出す。

学生の頃、縁あって和紙工房に二週間ほどお世話になったことがある。味わい深い経験だった。
元々はお父さんの家系の仕事だったが、お母さんの方が引き継いでいた。お父さんは大きな機械を使って大量に漉く

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味覚の旅

味覚の旅

近頃、週末だけは必ず母の所へ帰ってきていた妹が、近頃はリモートワークで平日もいる。今月いっぱいは続くらしい。
妹が帰ってくる週末は張り切って料理をしていた母だが、毎日となるとモチベーションが続かなくなってきたようだ。少し献立のレパートリーに困っている様子だった。妹も作ってはくれるようだが、母としては「私が作ります!」の姿勢の様だった。いつまでたっても母は母である。

昔から料理好きな母なので食事に

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ココアを飲むとMからエアメールが届く

ココアを飲むとMからエアメールが届く

学生の頃の夏休み、一通のエアメールが届いた。フランスからだった。フランスに知り合いなどいるはずもなく、友達の誰かが旅行に行くとも聞いてはいなかった。差出人はMだった。
「cheka様。元気にしていますか?僕は今、フランスにいます。セーヌ川のほとりでこの手紙を書いています…。」
とか何とか。この先の文章をしっかり覚えていないけれど、いつものMっぽくなくて感心したことを覚えている。折角のいい文面をしっ

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週に一度はパン屋さん

週に一度はパン屋さん

最近近頃、太ってきた数ある理由の一つには、パン作りがある。
ホームベーカリーなるものを買ってしまったのだ。

事の始まりは、何十年ぶりかに中学の同級生とLINEで話をするようになり、遠いところから、手作りパンを「ご賞味あれ!」と贈ってくれたパンがそりゃあもう美味しすぎたことにある。自家製パンってこんなに美味しいの?とたまげてしまった。

お互い長い月日には色々あった。
彼女は、パン作りと縫物に没頭

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お弁当と言えばウチはアレ

お弁当と言えばウチはアレ

以前、母のお味噌汁には敵わない…という記事を書いたことがあるが、

実は、お味噌汁だけではない。玉子焼きもおひたしも、胡麻和えも…シンプルなお料理ほど敵わない。唯一、あんたの方が美味しい…と言ってくれるのは、お好み焼きだのカレーだの、誰でも作れそうなそれである。

母のお料理は食卓の献立としては美味しいのだが、お弁当となると実に地味だった。お弁当に関しては子供の私には少し不服だった。今の世のママさ

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最後の晩餐は果物で

最後の晩餐は果物で

そろそろ梨が並びだした。

「梨が食べたいなぁ…。こ~んな大きな梨があってな…。」
亡くなる間際、もう、お白湯しか口にしなくなったおばあちゃんが呪文のように言ってたのを思い出す。
小さい頃、おばあちゃんのお父さんがお土産に持ち帰った、両手で持ってもはみ出すほどの大きな梨。その梨がすごく甘かったことを忘れられないと言うのだ。
「美味しくてな…。」
そう言って目を閉じた。きっとその味を思い出している。

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シェフ、美味しかったです。

シェフ、美味しかったです。

「ドイツ料理のお店はどう?」
「いや…。ドイツ料理は不味いイメージしかないので、出来れば他がいいなあ…(-_-;)」

友人とのランチのお店選びでの会話である。
私はドイツ料理を酷く不味い!と思っていた。それは、何も私の妄想ではない。実感としての印象である。
卒業旅行でヨーロッパを巡ったのだが、その時にドイツにも足を運んだことがあるのだ。勿論、ドイツ語はダンケシェーンくらいのものである。中学生レベ

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お味噌汁のほっこり成分

お味噌汁のほっこり成分

お味噌汁。寒い冬には勿論、夏でも一口すすればほっこりする。感覚の問題かと思えば、実はそうではないらしい。ほっこりさせてくれる成分がお味噌汁の中には含まれているせいだという。

家の食卓にも欠かせない一品である。具になるのは色々だ。豆腐とわかめとキノコはよく登場する。ジャガイモと玉ねぎやジャガイモとわかめは、ホクホクトロトロで結構好き。冷蔵庫にあるもので具だくさんにすることもある。茄子をゴマ油で炒め

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果物屋さんのアイスクリーム

果物屋さんのアイスクリーム

近頃は、何でもかんでも美味しくて驚く。飲食店はもとより既製品も随分美味しく改良されている。滅多に…というか全く買ったことが無かったが、試しに買ってみた冷凍食品には感動さえ覚えた。昔の冷凍食品はもっと、申し訳なささのようなモノがあったが、今はもう堂々胸を張っている感じだ。

「美味しいもんちゅうのは意外と分からんもんで…。分からんまんま美味しいものを食べてると、今度、不味いものがハッキリわかるんや。

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脳内調理で赤を足す

脳内調理で赤を足す

いちごシャーベット。それは、叔母が作るいちごシャーベット。
夏休み日なると祖母の家に入りびたりになる小学生の頃、車で二十分ほどのところに住んでいた叔母の家にも時折出かけた。
叔母は洋裁が得意で、小さい頃の服はほとんど叔母が作ってくれていたのだ。今思い出しても、可愛いワンピースだった。お気に入りで遊びに外へ出るのだが、なかなかのわんぱく娘だった私は、公園に留まらず裏山へ入り込み、枝や柵に引っ掛けては

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