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ちらし寿司

春は野菜が美味しい。最近は季節の感覚がなくなるほど、年がら年中どんな野菜もスーパーに並ぶけど、季節特有の、特に春の野菜はやっぱりその時じゃなくては出会えないのでは?と思う。とても特別感がある。
季節のモノを食べることは、体にもいいらしい。
冬から春にかけて、苦みのある野菜が出始める。菜の花、ふきのとう、たらの芽、うど…。その苦みは、冬の間に溜まった老廃物や毒素をデトックスしてくるらしい。昔々から、人は知らない間にそうやって体のメカニズムを整えていたのだと思うと不思議だ。体が欲するものを頂くのは重要だ。今はいつでも好きなものを食べることが出来て、自分の体であってもその感覚は鈍っている気がする。
いつも出回っている野菜でも春が特別な野菜もある。春キャベツ、春ごぼう、新玉ねぎ、新じゃが。たけのこに豆類。さっと炒めたり、茹でたり、兎に角シンプルな食べ方が美味しい。そして、何より色がキレイ。ただでさえ、春らしい色味が、火が通ると途端に艶をまして彩度が上がる。あの色の変わる瞬間が好きだ。それに見とれてぼやぼやし過ぎると、茶色味が強くなるので、気をつけなければならない。

因みに、私はこの5月に年をとる。この時いつも、母はちらし寿司を作ってくれる。春野菜と錦糸卵、今年は鯛の昆布締めがのっていた。そして、「パンッ」と叩いて香りを際立たせた木の芽が散らされている。もう、良い年の私だが、いつの頃からかの定番である。
ちらし寿司って、地味だけどものすごく手間がかかる。
「ご馳走」って、豪華絢爛なものを言うのでなくて、文字通り、走り回って集めてくるということだと誰かに教わったことがある。その労力を想って「ごちそうさま」と言う時、よりありがたみが増す。
今年も母のちらし寿司で年を重ねた。
木の芽の香りでキリリっと背筋をのばして。

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