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「川崎市麻生区」長寿日本1の秘密は「公園の多さ」か、「坂道の多さ」か

目次

「カラオケ」と「晩酌」が長寿の秘密?

ずば抜けた公園の多さ

「坂道の多さ」との関連

「犬の散歩」の多さ

麻生区の公園ガイド



「カラオケ」と「晩酌」が長寿の秘密?


5月12日に厚労省が発表した「市区町村別平均寿命調査」で、川崎市麻生区が男女とも日本1になった。

その「長寿日本1」の理由をめぐる報道で、いい加減な内容に呆れるものと、参考になるものの両方があった。

まず、呆れた方から。TBSですね。


麻生観光協会の鈴木事務局長は「歌っている人が多い」と話していました。
この辺りは昭和音楽大学や川崎市アートセンターや音楽祭など“芸術のまち”としても親しまれています。シニアサークルなどで合唱や演奏が毎日のように行われているとも話していました。

麻生区のカラオケ店に聞くと、歌を歌っている人や、サックスなど楽器を演奏している人もいるそうで「夕方までは高齢者が半分ほど、週3で来る人も」と話していました。

歌ったり楽器を演奏したりすることが活発で、これが長寿に繋がっているのかについて、高齢者福祉に詳しい東洋大学の高野龍昭教授は「飲み込む力の衰え防止になり、食べ物がつかえにくく、長寿に繋がる」と話していました。

そして、まだ長寿の秘訣が駅前にあります。この辺りというのは新百合ヶ丘駅があり、飲食店が充実している。

麻生区長会連合会の宮野敏男会長は「お酒を飲みながら人と交流ができる環境があることも長寿の秘訣」と話していました。宮野会長は76歳なんですが、健康法を聞くと「晩酌」「お酒を飲めることが健康の証!」と語っていました。

TBS:平均寿命“日本一”川崎市・麻生区で長寿の秘訣を徹底調査(5月26日)


なにみんな、いい加減なことを言ってるんだろうね。公共の電波で。

「お酒を飲めることが健康の証」なんてねえ、非科学的なこと言わないでほしい。

いい飲み屋は一定数あってほしいけど、基本的には、酒は飲まない方がいいんだよ。世界的にも、酒の発がん性を警告する声が大きくなっている。晩酌の習慣はやめた方がいい。人との交流は健康上も大事だが、交流のたびに酒飲んでたら確実に寿命を縮めます。

「芸術のまち」なんてのも、行政が勝手に言ってるスローガンでね。行政と癒着した地域の小権力者たちが見当はずれなことを言ってるな、としか思わない。

麻生区の「芸術のまち」コンセプトがスベってることは、前にも指摘し、批判しました(note「新百合ヶ丘は「笑い」の聖地だった」)。

音楽大学や映画大学があるからって、それらの大学がすごく有名で実績がある、となって、初めて「芸術のまち」と言えると思うんですね。

大学にはがんばってほしいし応援もするけど、大学があるから「芸術のまち」というのは、それらの大学と関係ない大多数の市民にとって、無理にこじつけている感が強い。


スローガンにするなら、「芸術のまち」なんてのより、「長寿のまち」でしょう。事実なんだから。市区町村別平均寿命調査は5年ごとだから、あと5年は「長寿日本1」を名乗れる。

世界的に長寿村として知られる沖縄県大宜味村みたいに、「長寿宣言」の石碑とか、「ようこそ日本1長寿のまちへ」の横断幕とか、ドーンと作ってほしいんだよね。


でも、区も、麻生観光協会も、そういうブランディング的、マーケティング的な面でははなはだ頼りない。

上のTBS番組での登場の仕方を見ても、麻生観光協会には困ったもんだ。前に桜まつりの件でも書いたが、どうも年寄り支配の前例踏襲から抜け出ていない。

千載一遇のチャンスなのに、「長寿日本1」を観光資源に観光客を呼び込もう、なんてことは、どうせ考えないだろうな。

私は、この際「長寿世界1」とぶち上げて世界中からインバウンドを呼び込め、と主張したけど、まあそんな発想はない。


多分「めでたい」とか言って、役所の上役と宴会やって終わりでしょう。


このTBSの番組に登場する観光協会事務局長の鈴木氏は、「鈴木一族」かもしれない。

麻生区に昔からある駅は「柿生」だが、そのあたりはずっと「鈴木一族」の支配下にある。「鈴木」の名前が入ったアパートだの駐車場だのがいっぱいある。


昔からの地主集団だ。行政も頭が上がらない。観光価値が上がり、地価が上がれば、地主たちがいちばん儲かるのにね。

観光協会事務局長の鈴木氏が、一族の人かは知らないが、こういう名主みたいなのは世襲制なんじゃないかな。名主として、それなりの苦労はあるかもしれないが、機動性や戦略性がなく、どうしても旧態依然になる。

村八分にされたら困るから、これ以上は言わないけどね。


ずば抜けた公園の多さ


それに比べたら、週刊ポストの記事は、参考になりました。

「川崎市麻生区」はなぜ男女ともに平均寿命全国1位なのか?(週刊ポスト 5月26日)


面白いのは、上のTBSの番組が、長寿の秘訣として「新百合ヶ丘駅があり、飲食店が充実している」ことを挙げているのに対し、週刊ポストは、まったく逆のことを「長寿の秘訣」としていることです。

いわゆる“地元の飲み屋街”がない。夜10時とかに駅に着き、“そこから1杯”ができない。また、平日も休日も家と駅の往復は徒歩やバスだから、みんな適度な運動にもなる(週刊ポスト)


まあ、これもこじつけっぽいが、比較的高齢者率が高いので、「若者の街」のように深夜まで開いている店が少ないのは確かです(それは確かに治安にも健康にもよいことでしょう)。


それよりも、この週刊ポスト記事で参考になるのは、麻生区の「公園の多さ」を指摘したところです。

区がホームページで公表する〈令和3年度版【統計データから見た麻生区の現況】〉によれば、麻生区の公園数は321か所で市内7区の中で最も多く、2位の宮前区(213か所)に大差をつけている。1.2ヘクタール以上の公園は15個ある。
「数多くある公園などで体操やウォーキングをされる方は多いです。また、戸建ての住宅街が整備され、街中をウォーキングしやすいというのもあるかもしれません」(川崎市麻生区役所の地域ケア推進課の担当者)


確かに、ここに引っ越してきて公園の多さに気づいたし、その公園がどこもよく整備されているのに感心していました。

これは、麻生区の公園整備課とかが、がんばってくれているのだと思う。地方税の払いがいがあるというものです。

それに加えて、麻生区は健康な年寄りが多いから、ヒマな時間、ボランティアでゴミを拾ったり花を植えたりしてくれているんですね。

そうしたことが健康長寿にも結びついているとすれば、嬉しい。


公園の数え方はさまざまあり、公園の大きさもさまざまだ。

公園と、緑地、あるいはただの空き地の違いは、とか厳密に考えていくと難しい。

公園数の全国市区町村別ランキングなど、ネットの範囲でいろいろデータを見たが(公園数日本1は富山市らしい)、平均寿命と公園数の関係がスッキリ証明されるとは思えない。

ただ、川崎市でいちばん公園数が多い麻生区、横浜市でいちばん公園数の多い青葉区が、それぞれの市で最も長寿であることなど、なんとなく関連は見えてくる。


週刊ポスト記事では、公園が多ければ公園内での運動機会が増える、運動機会が増えれば健康寿命が伸びる、という推論のようだ。

「数多くある公園などで体操やウォーキングをされる方は多い」川崎市麻生区役所の地域ケア推進課の担当者)


「歩くことが認知症予防によいとわかっていますが、車社会の地方より、公共交通機関が整備された都市部のほうが歩行時間は長い。健康に良いスポーツの実施頻度も、公園の近くで暮らしている人では2割多い。男女とも長寿1位になった川崎市麻生区のように、公園が多い、持ち家の戸建て住宅が多い、バス利用者が多いなどの環境は健康に良い環境だと考えられます」(千葉大学予防医学センターの近藤克則教授)


「坂道の多さ」との関連


しかし私は、公園数の多さを、麻生区の「坂道の多さ」と関連付ければどうかと思う。

朝日新聞は、麻生区の長寿の理由を「坂道が多いから」としていました。


多摩丘陵の里山が連なる坂道の多い街で、住民は「足腰が鍛えられて健康な人が多いのかも」と推測する。(朝日新聞5月16日)


麻生区で、「公園が多いこと」と「坂道の多いこと」は、関連していると思う。

なぜなら、以前、私が「街登山のすすめ」で指摘したとおり、麻生区では、公園は高いところ、つまり坂道を上ったところに多いからです。


麻生区では、とくに広い公園ほど、高いところにある。同じ公園でも、例えば東京の代々木公園とか、マンハッタンのセントラルパークとか、そういう低い場所の公園とは違うんですね。

これは、麻生区の成り立ちを考えると、納得できるのではないでしょうか。

麻生区あたりが開発されたのは1970年代以降で、低いところはもう住宅や農地で埋まっていたから、高いところを切り開いていった。低いところに大きな公園を作る余地がなかったから、高い場所に大きな公園を作るしかなかった。

実際、ガイドブックで挙げられるような有名公園、弘法松公園、王禅寺見晴らし公園、王禅寺ふるさと公園、とんび池公園など、みな高いところにあります。

また、万福寺檜山公園や王禅寺ふるさと公園のように、公園内にかなりの高低差があるところもある。

そして、公園にはほとんど駐車場はない。バスか、ほとんどの場合、歩いていくしかない。

だから麻生区では、公園を利用する、イコール、坂道を上る、イコール、運動になるのです。


高いところにあるのは、公園だけではありません。

お寺や神社も高いところにある。麻生区で有名な香林寺とか、琴平神社、月読神社、みな高いところにある。これは、古来高いところ=山が信仰された名残でしょう。

というわけで、坂道を上ると、公園とか、お寺や神社とか、気分が晴れるような場所が待っている。

そういうふうに、麻生区の環境は、坂を上るという運動を促して、健康を増進するように「設計」されているのです。

「犬の散歩」の多さ


一方、麻生区には、低いところにも小さな、まさに猫の額のようなのまで、公園がたくさんある。だから公園の総数が多い。

そうした街角の小さな公園は、小さな子供を連れたお母さんたちや、下校後の子供たちがよく利用しています。運動の場というより、子育て中のお母さんや、学校外での子供たちの交流の場になってるんですね。

そういう場所がたくさんあることは、寿命との直接的関連はわからないが、住環境として気分がいいし、たぶん健康に役立っている。


そして、そうした公園の周りを、多くの人が犬を連れて散歩している。

麻生区で犬の散歩をよく見かけるのは、週刊ポスト記事も指摘している、戸建て率の高さと関係しているでしょう。

犬もよくトリミングされていて、それなりに豊かな家で飼われている感じがする。

犬の散歩も一種のウォーキングで、犬の健康とともに、人間の健康にも貢献しているはずです。


ただ、この週刊ポストの記事にも、5年前に横浜市青葉区が男性で日本1になったときの週刊文春報道と同じ限界がある。

つまり、同じ川崎市内の麻生区と川崎区との寿命の差に着目する一方、麻生区と横浜市青葉区が同じくらい長寿であることに気づかない。

どうしても、横浜市とか川崎市とか、現在の行政の区割りで見て、自然環境の連続性に気づかない。

麻生区にとっては、川崎市川崎区より、横浜市青葉区の方が近いのにね。

私だったら、川崎市麻生区と、隣り合わせの横浜市青葉区に、何が共通しているのかを取材する。

時代が違えば区割りも違う。川崎市麻生区と横浜市青葉区は、かつては同じ武蔵国都筑郡だった。川崎市川崎区は、多摩区などとともに橘樹郡だった。その昔の分け方の方が、平均寿命の差に照応している。


麻生区の公園ガイド


それはともかく、「公園」や「坂道」と健康長寿の関連は、さらに追求してみる価値があると思う。

私は麻生区に住んでいるから、実際に歩いて、運動しながらそれを追求できる。

麻生区はさまざまな観光パンフやネットのサイトを作っているが、主要な公園の案内しかないと思う。

321個あるというのだから、1日に1つの公園に行けば、1年が埋まる。

私のような老人には、公園にトイレがあるかどうかも気になる。

麻生区のすべての公園を踏破し、高度やトイレの情報まで入れた、麻生区「公園ガイド」完全版を作ろうと思いいたったのでした。


<参考>

麻生区の公園 人気ベスト30ランキング

どなたかが作ったランキング。なぜランキングの中に、弘法松公園や王禅寺見晴し公園、早野聖地公園などがないのか不明ですが(遊具設備を評価基準にしてる?)、とりあえずいい公園ばかりです。


1位 鶴亀松公園

2位 万福寺檜山公園

3位 万福寺さとやま公園

4位 向原の森公園

5位 上麻生隠れ谷公園

6位 虹ヶ丘公園

7位 山口白山公園

8位 むじなが池公園

9位 万福寺おやしろ公園

10位 王禅寺公園

11位 丸山こもれび公園

12位 もみじが丘公園

13位 さつき台公園

14位 南黒川第1公園

15位 恩廻公園

16位 千代ヶ丘第3公園

17位 美山台公園

18位 栗木公園

19位 新ゆりアートパークス

20位 王禅寺ふるさと公園

21位 籠口ノ池公園

22位 上麻生北第2公園

23位 百合丘第2公園

24位 西長沢第2公園

25位 白山公園

26位 化粧面谷公園

27位 片平公園

28位 百合丘第3公園

29位 とんびいけ公園

30位 五力田見晴し公園


<参考>


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