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ルソー『社会契約論』を読む

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過去に執筆した記事のうち、『社会契約論』の紹介をした記事がまとめてあります。
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#書評

ルソー『社会契約論』を読む(号外)
ルソーにおける「執行権」の概念とその所在

ルソー『社会契約論』を読む(号外) ルソーにおける「執行権」の概念とその所在

以前書いた記事の中で、とあるコメントをいただきました。そのコメントは、「ルソーにおいて「執行権」という概念はあるのか?」という内容。

 こうして私の書いた記事にコメントを頂けるだなんて・・・と嬉しく思っています。と同時に、いただいたコメントが上記のような「質問」でしたので、今回はその質問に対して、私の知りうる限りでお答えする、という回にしたいと思います。

 いつも記事を読んでくださっている方々

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美しきルソー

美しきルソー

 前回の記事で、『社会契約論』第二篇第十一章が「美しい」という話をしました。今回は、なぜあの引用箇所が「美しい」のか、を見ていくことにします。

前回の記事はこちら

 というのも、前回、

と言ってルソーの引用をしたのですが、その引用直後に、

とまさかの「説明なし」のまま、ただ美しさを讃美するだけで終わっていたからなのです。今回は、しっかり説明します。

美しいルソーの文章・・・ね。美しいでし

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ルソー『社会契約論』を読む(7)

ルソー『社会契約論』を読む(7)

 今回の記事では、第二篇第八章以降を扱います。この第八章、次の第九章、そしてさらに第十章は、いずれも「人民について」という同じ章立てで構成されています。まず、ルソーはこんな風に言います。

人民についてというのも、建築家と同様、法律を制定する際にも、それ自体として申し分ない完璧な法律を編纂することから始めるのではなく、あらかじめそれを与えようとしている人民が、それを支えるに相応しいかどうか吟味する

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ルソー『社会契約論』を読む(5)

ルソー『社会契約論』を読む(5)

 前回の記事では、以下の2点が明らかにされました。

今回は、この二つをふまえてさらに明らかになることを、まずはじめに紹介することから始めます。

一般意志は常に正しい しかし、ここにはある問題があります。その問題とは、たとえ一般意志が常に正しいとしても、人民の議決が常に同じように公正であるということにはならない、という問題です。なぜ、このような矛盾が起こるのでしょうか。それは、「人はつねに自分の

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ルソー『社会契約論』を読む(1)

ルソー『社会契約論』を読む(1)

 今回から、数回に分けて、ルソーの『社会契約論』を読み解いていきます。
 『エミール』と並んでしばしばルソーの主著と紹介される『社会契約論』。光文社古典新訳文庫のカバーには、「世界史を動かした歴史的著作」とあります。事実、『社会契約論』は、フランス革命を起こした人々に大きな影響を与えたと言われています。そんな『社会契約論』を、このnoteでは、原典にも立ち返りながら、できる限り丁寧に読んでいきます

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