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組織づくりについてのエッセイ

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組織づくりと人材育成とDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)について書いた記事をまとめています。
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記事一覧

「支援学」(Helping)への招待 #6 - ほんとうの意味で、相手の話に耳を傾ける

「支援学」(Helping)への招待 #6 - ほんとうの意味で、相手の話に耳を傾ける

今回は、「Chapter 3 成功する支援関係とは?」を読んでいきます。これまで見てきたように、支援を求める人と、支援を提供する人との関係は、気持ちの面で対等ではありませんでした。助けを求める人が「ワンダウン(一段下にいる)」の状態に置かれてしまうからです。

「ワンダウン」の状態のままでは、クライアントが自らの手で問題に取り組むことを目指すという、ほんとうの意味での支援が機能しづらくなります(本

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「支援学」(Helping)への招待 #5 - 役割を演じる?

「支援学」(Helping)への招待 #5 - 役割を演じる?

引き続き「Chapter 2 経済と演劇」の内容を見ていきます。今回のポイントは、「演劇」の部分が意味することについてです。

前回見たように、シャインさんは人間関係に経済(価値の交換)の側面があると考えました。人を助けることにおいても、「助ける↔︎感謝する」という価値の交換が行われているからです。

そして、価値の交換が成り立つためには、その状況に相応しい役割を演じなければならないと言います。具

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「支援学」(Helping)への招待 #4 - 信頼とは何か

「支援学」(Helping)への招待 #4 - 信頼とは何か

今回から「Chapter 2 経済と演劇」に入っていきます。

シャインさんは、人間関係には経済(価値の交換)の側面があると考えました。本の中でも挙げられているように、日本語にも英語にも「注意を払う(pay attention)」や「敬意を払う(pay respect)」といったお金のやり取りを想起させる表現があります。

人を助けることにおいても、「助ける↔︎感謝する」という価値の交換が行われて

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「支援学」(Helping)への招待 #3 - 問いの深まり

今回は、Chapter 1から「人を助けるとはどういうことか」という問いが、深められていく過程を見てみたいと思います。

前回の記事で、支援には二つの意味が含まれていることを見てきました。一つは、支援行為そのものを、もう一つは、役に立つ支援行為が生まれ得るような人間関係(=支援関係)を築くことを意味していました。

「人を助けるとはどういうことか」=「支援関係を築くとはどういうことか」であると言え

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「支援学」(Helping)への招待 #2 - 支援とは、支援関係を築くこと

「支援学」(Helping)への招待 #2 - 支援とは、支援関係を築くこと

前回の記事で、人を助けたり、人から助けられたりすることは、誰にとっても日常的で大切な営みなのではないか?ということに触れました。

シャインさんは「支援」をどのように捉えているのか。まえがきの冒頭にさっそく示されています。

支援とは人間関係の基本であると言います。支援を提供する人と受ける人との間で、何かしらの物事を進めるための人間関係の基本形であると。私たちは、人に指示をしたり強制したりすること

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「支援学」(Helping)への招待 #1

「支援学」(Helping)への招待 #1

人を助けるとか、支援といった言葉から、どのようなイメージが浮かびますか?ボランティアや専門的な資格が必要な職業?余力がある時にできること?自分の仕事や日常生活とは関わりが薄いもの?でしょうか。

誰かと一緒に暮らしている人は、朝起きて相手の様子がいつもと違うことに気付いたら「よく眠れなかったの?」と声を掛けることでしょう。学校や職場で、友達や同僚から「何か手伝おうか?」と声を掛けられることもあるか

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誰かの助けになるということ

誰かの助けになるということ

マネージャー、同僚、親、友人、教師、コンサルタントなどとして、自分の提案が相手に受け入れられなかった、もしくは、相手に受け入れられるのに時間を要したということはありませんか?

ちなみに僕は、たくさんあります。そういう時は、この言葉の意味を自分のなかで深めながら、次に向けて学ぶ時だと思うようにしています。

メイヤロフは、ケアをされる側の成長に応じて(成長をよく観察することで)、ケアをする側が何を

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「クライアントの変革リソースが増える」ということ

「クライアントの変革リソースが増える」ということ

今回は、コンサルタントの支援のあり方について、「クライアントの変革リソースが増える」という視点から考えてみたいと思います。

ここでは、変革リソースのことを、クライアントが目の前の新たな現実に対処する際に活用できる視点、知識、考え方などであるとします。

あらためて、支援とは何か?エドガー・シャインさんの『謙虚なコンサルティング』(英治出版)という本のなかで、監訳者の金井壽宏さんが、シャインさんの

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年始のご挨拶と、「より良い組織づくりの支援」について考えてみたこと

年始のご挨拶と、「より良い組織づくりの支援」について考えてみたこと

新年おめでとうございます。皆さまにとって、健やかで豊かな一年となりますように。本年もよろしくお願いします。

2023年の最初の投稿では、コーフライヤーの事業の中心である「より良い組織づくりの支援」に関して、私たちのあり方について書いてみようと思います。

それにあたり、僕が敬愛しているMITスローン経営大学院名誉教授のエドガー・シャインさんの力を借りたいと思います。『謙虚なコンサルティング—クラ

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「チームワークとリーダーシップを育む」ということ

「チームワークとリーダーシップを育む」ということ

昨年に続き、横浜市立大学(YCU: Yokohama City University)の「プレ・インターンシップ科目」の一部を担当する機会をいただきました。

担当パートでは、チームで企業研究を行うという演習を通して「企業研究」と「チームワーク」を学んでもらうことを目指しました。

今回のnoteでは、講義の内容を振り返りながら、「チームワークとリーダーシップを育む」ことについて考えてみたいと思い

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「筑波大学ILC」と「マジョリティの特権」と「安心な対話の場」をめぐる小さな旅

「筑波大学ILC」と「マジョリティの特権」と「安心な対話の場」をめぐる小さな旅

先日、「筑波大学インクルーシブ・リーダーズ・カレッジ」の1コマで、「マジョリティの特権」をテーマとしたワークショップを企画し、ファシリテートする機会に恵まれました。

今回は、このワークショップを実施する一連の過程から感じたこと、学んだことを書きたいと思います。

「筑波大学インクルーシブ・リーダーズ・カレッジ」(筑波大学ILC)とは?筑波大学ILCは、「『Diversity / Inclusio

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誘ってもらった冒険に応じられるよう、できる準備をしておこう

誘ってもらった冒険に応じられるよう、できる準備をしておこう

先日、誘われて、初めて「哲学対話」に参加しました。
今回のnoteでは、哲学対話に参加して得た気づきなどについて書いていきます。

哲学対話とは?哲学対話では、与えられたテーマをめぐって、参加者が自由に考え、意見を伝え合います。
テーマが決められている場合もあれば、その場に集まった参加者でテーマを決める場合もあるようです。

今回の哲学対話では、次のテーマがあらかじめ参加者へ伝えられていました。

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人事パーソンとしての自分を深く支えている3冊

人事パーソンとしての自分を深く支えている3冊

今回は、人事に関わる自分を深く支えている3冊について書きたいと思います。

いずれも、企業人事として働いていた頃から独立して現在に至るまで、折に触れて手に取る本です。

『知識創造企業』 野中郁次郎/竹内弘高 (東洋経済新報社)「人や組織の可能性を開く人事の仕事は、知識社会における企業活動の根幹を支えている」

この本のおかげで、人事領域に携わる自分の仕事の意義を、そのように考えられるようになりま

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リーダーやマネージャーや人事にとって、「問い」を考えることは大切だと思う

リーダーやマネージャーや人事にとって、「問い」を考えることは大切だと思う

僕はロジカルシンキングに苦手意識がありました。
元々は、「あーそれいいね、やってみようか」とすぐに言いたいタイプです。
もちろん、それで済ませられる場面ばかりではありませんので、大学時代の恩師とか、大学院時代の恩師とか、新卒で入った会社の先輩方に随分と鍛えられました。
そのおかげで少しばかりはマシになった、はずです。

ところで、「考える」という行為には、その前段に「問う」という行為があります。

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