マガジンのカバー画像

一目置かれる!地方公務員が読んでおきたい書籍(21年秋~)

40
地方公務員として14年間勤務し、現在も大学教員として政策の研究や地方公務員との交流を続けています。これからの地方公務員が「一目置かれる存在」となるために、どのような書籍を読んでお… もっと読む
運営しているクリエイター

記事一覧

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:池上彰「新聞は考える武器になる-池上流新聞の読み方」祥伝社黄金文庫、2023年

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:池上彰「新聞は考える武器になる-池上流新聞の読み方」祥伝社黄金文庫、2023年

 テレビで分かりやすい社会情勢の解説をされる池上彰氏の番組は、今なお多くの方に視聴されています。また、著書「知らないと恥をかく世界の大問題」も14冊目が刊行され、書籍も人気を集めています。普段の生活でそうしたことを知る機会も時間も限られている私たちにとって、池上氏の番組や著書は、大変ありがたい存在です。

 本書は、池上氏が長年、朝日新聞に連載してきた「池上彰の新聞ななめ読み」を基にしています。2

もっとみる
地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:藻谷ゆかり「山奥ビジネス-一流の田舎を創造する」新潮新書、2022年

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:藻谷ゆかり「山奥ビジネス-一流の田舎を創造する」新潮新書、2022年

 「地方創生」「デジタル田園国家都市構想」などと称して東京一極集中の是正のために大々的な政策を打っておきながら、現時点まで成果と言えるものが見えてきません。むしろ、新型コロナの影響もあって少子化はますます進む一方で、人の流れも一時的な変化はあったものの元に戻ってしまい、事態は悪化の一途をたどっているようです。

 成果をあげるためのポイントとして「仕事」が重要なのは言うまでもありませんが、一般的に

もっとみる
地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:熊田安伸「記者のためのオープンデータ活用ハンドブック」新聞通信調査会、2022年

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:熊田安伸「記者のためのオープンデータ活用ハンドブック」新聞通信調査会、2022年

 行政機関がデータを利用しやすい形にして公開し、利用者のさまざまな分析を促す「オープンデータ化」の取り組みは、すでに広がっています。本書はそうしたデータの紹介が中心ですが、全体を読むと「公開されたデータだけでも分かることは結構ある」ということが非常に良く理解できます。

 著者はジャーナリストです。その仕事は、世の中が知りたいことを他に先んじて伝える「スクープ」を探すことにあると思います。しかし、

もっとみる
地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:大西康之「流山がすごい」新潮新書、2022年

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:大西康之「流山がすごい」新潮新書、2022年

 「東の流山市、西の明石市」と巷で言われるほど、この2市は人口増加で注目を集めています。市長のキャラクターが強いのは圧倒的に明石市なのですが、流山市の人口増加率は全国トップです。多くの地方自治体が人口減少に直面し、国では「異次元の」対応が検討されているなかで思わしい結果が依然として出ていません。流山市から何かを学ぶことができれば、各地の人口減少対策も一歩進められるかもしれない、そうした思いで本書を

もっとみる
地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:加藤崇「水道を救え:AIベンチャー「フラクタ」の挑戦」新潮新書、2022年

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:加藤崇「水道を救え:AIベンチャー「フラクタ」の挑戦」新潮新書、2022年

 地域住民アンケートで「政策分野別満足度・重要度」の調査をすると、ほとんどのケースで水道はいずれもトップになります。人が生活するのに水は絶対に欠かせないものですし、水道は「使えて当たり前」の状況になっているので、そのような結果になるのも当然と言えば当然です。

 しかし、実は水道事業は自治体が運営していながら税金ではなく料金収入を財源としているため「公営事業」となっています。しかも、誰にも必要なも

もっとみる
地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:久松達央「農家はもっと減っていい-農業の常識はウソだらけ」光文社新書、2022年

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:久松達央「農家はもっと減っていい-農業の常識はウソだらけ」光文社新書、2022年

 本書のタイトルが刺激的で興味をひかれたので、購入しました。農業は日本の大切な産業であることは言うまでもありません。ただ、零細・兼業の形態が多いため、それをいかに維持するかに主眼が置かれてきたように思われます。つまり、補助金等による財政的な支援で、市場による競争では淘汰されてしまうのを防ぐ形で農業が維持されてきました。本書は、そうした既存の農業政策からの脱却を訴えています。

 ただ、いわゆる市場

もっとみる
地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:

 新年度がまもなく始まり、新たに地方公務員としての道を歩む学生には、初心を忘れず頑張っていただきたいと思います。今回は、彼らへのエールとともに、新採用職員を迎える現役地方公務員にも読んでほしい本を紹介したいと思います。

それは、新採用職員を対象とした研修用のテキストブックです。以下の3つがオススメです。
①特別区職員ハンドブック(ぎょうせいオンラインショップ)
https://www.union

もっとみる
地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:東大ケーススタディ研究会編・白木湊著「伝説の論理思考講座」東洋経済新報社、2022年

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:東大ケーススタディ研究会編・白木湊著「伝説の論理思考講座」東洋経済新報社、2022年

 「東大」とタイトルの付く本を最近よく見かけるが、公務員の世界は東大から距離を置かれつつある。かつてのように東大卒のエリート官僚がめっきり減り、多様な大学から国家公務員総合職に就くようになっているからだ(この傾向自体は好ましいことだと個人的には思うが・・・)。学生の公務員離れが進んでいると言われる、象徴的な現実がこれである。

 しかも、最近はコンサルティング業界にそうしたエリート層が流れていると

もっとみる
地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:日本経済新聞社政治・外交グループ編「データで読む日本政治」日本経済新聞出版、2022年

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:日本経済新聞社政治・外交グループ編「データで読む日本政治」日本経済新聞出版、2022年

 政治は公務員の仕事とは切っても切れない関係にあります。公務員は政治から中立であるべき存在ではありますが、行政機関の長(国務大臣、地方自治体の首長)として公務員を指示する立場にあるからです。そのため、政治がどのような状況になっているのかを把握しておくことは、公務員の仕事がどのようになるのかを知るうえでとても重要だと思います。

 本書は、政治に関するさまざまなデータを紹介し、日頃は抽象的に(ドロド

もっとみる
地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:森永康平「日本&世界の景気を把握し先読みする経済指標読み方が分かる事典」日本実業出版社、2022年

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:森永康平「日本&世界の景気を把握し先読みする経済指標読み方が分かる事典」日本実業出版社、2022年

 経済がどのように動いているのかを一言で表すのはとても難しいのですが、それは経済の動向が多面的だからだと思います。特に、現在のような「スタグフレーション(景気が悪いのに物価が高い状態)」は、通常ではほとんど起こらないもので、これをどう判断すれば良いのか、さまざまな議論が交わされています。

 本書は、経済がどのような側面を持っているのか、それらを客観的に把握するデータとしてどのようなものがあるのか

もっとみる
地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:田村秀「自治体と大学-少子化時代の生き残り策」ちくま新書、2022年

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:田村秀「自治体と大学-少子化時代の生き残り策」ちくま新書、2022年

 自治体と大学の両方に、ほぼ同じ期間、身を置いた立場として、興味深く読ませていただいた。と同時に、地方が生き残っていくために各地で設置された大学そのものが、これから生き残りをかけて新たな戦略を練らなければならない、ということも痛感した。言ってみれば、大学が生き残れるかどうかが、その地域が生き残れるかどうかの試金石になるかもしれない。

 大学の主な設置形態は、国立・公立・私立である。このなかで、自

もっとみる
地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:菅原琢「データ分析読解の技術」中公新書ラクレ、2022年

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:菅原琢「データ分析読解の技術」中公新書ラクレ、2022年

 EBPM(証拠に基づく政策形成、Evidence Based Policy Making)の重要性が叫ばれるようになって久しい。しかし、そう叫ばれれば叫ばれるほど、証拠を歪められ、ひどい場合は捏造することで自己に都合の良い政策を導こうとする「EBPMまがい」の懸念も生じる。したがって、EBPMが適切に行われているかどうかを見極める「リテラシー」も同時に必要になるだろう。その出発点になるのが、デー

もっとみる

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:「脳のパフォーマンスを最大まで引き出す 神・時間術」大和書房、2017年

実は、この本は私のバイブルと言っても過言ではないくらい、何度も読み返しています。時間術や仕事効率化の本はたくさん出回っていますし、著者の代表作は他にもっと有名なものもありますが、私にとっては本書が最も繰り返して読んでいる本です。

刊行から5年ほど経っていますが、気がつくと増刷されて最新刊と並んで書店にたくさん置いてあります。きっと、皆さんにも参考になることがたくさん書かれているので

もっとみる

地方公務員が読んでおきたい書籍の紹介:久保田崇「官僚が学んだ究極の組織内サバイバル術」朝日新書、2022年

本書を読むと、2つの反応に分かれそうな気がします。1つは「人間関係の構築は、組織で生き残って正しいと思うことをするための最重要課題。自分も成長できる」というもので、もう1つは「組織内の人間関係って、こんなに面倒なものなのか。そんなことに気を取られるくらいなら、就職せず起業した方が良い」というものでしょう。

私の反応は前者でもあり、後者でもあります。というのは、私のキャリアは当初

もっとみる