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読みがえり

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読んだ本のレビュー(書評)をまとめています。雑多な書棚ですが、興味があればどうぞ!※注意🚨紹介している本を一度読んでから開くのをオススメします。限りなくネタバレに近いので笑笑
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2024年4月の記事一覧

読書:『ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ

読書:『ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー』ブレイディみかこ

①紹介

イギリス在住のライターであるブレイディみかこ氏の『ぼくはイエローで、ホワイトで、ちょっとブルー』(新潮文庫、2021年)を紹介します。南東部の都市ブライトンにある元底辺中学校に通うことになった息子の成長を綴った本書は、Yahoo!ニュース|本屋大賞2019ノンフィクション本大賞を受賞しました。


②考察

● 「多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからい

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読書:『ホモ・デウス』(下)Y.N.ハラリ

読書:『ホモ・デウス』(下)Y.N.ハラリ

①紹介

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『ホモ・デウス-テクノロジーとサピエンスの未来』(下巻、柴田裕之訳、河出書房新社、2018年)を紹介します。前回読んだ上巻の続きですね。崇拝の対象が人間からデータに変わるとき、私たちは、人間性は、そして心は一体どこへ行くのでしょうか。


②考察

● 「意味のない世界のために意味を生み出せ——これこそ人間至上主義が私たちに与えた最も重

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読書:『佐藤優の地政学入門』佐藤優

読書:『佐藤優の地政学入門』佐藤優

①紹介

元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による『働く君に伝えたい「本物の教養」佐藤優の地政学入門』(Gakken、2022年)を紹介します。なぜウクライナやイスラエルは戦火に巻き込まれるのか?米中対立の背景には何があるのか?答えは地理にありました。本書は地政学に基づき、変化の絶えない国際情勢を読み解く一助となるでしょう。


②考察

● 「対象とする国のイデオロギーは変わっても、その地理的

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読書:『海をあげる』上間陽子

読書:『海をあげる』上間陽子

①紹介

教育学者の上間陽子氏による『海をあげる』(2020年、筑摩書房)を紹介します。Yahoo!ニュース|本屋大賞2021年ノンフィクション本大賞に選ばれた本書が訴える沖縄の現実。母(著者)と娘、県民の喜怒哀楽に私たちが思うことは何でしょうか。

②考察

● 「あなたの窮地に駆けつけて美味しいごはんをつくってくれる友だちができたなら、あなたの人生は、たぶん、けっこう、どうにかなります」

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読書:『ホモ・デウス』(上)Y.N.ハラリ

読書:『ホモ・デウス』(上)Y.N.ハラリ

①紹介

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『ホモ・デウス-テクノロジーとサピエンスの未来』(上巻、柴田裕之訳、河出書房新社、2018年)を紹介します。過去に焦点を置く前作の『サピエンス全史』に対し、いずれ人類が見るであろう未来を語る本書。しかし、その内容は再考の余地を多く含んでいるかもしれません。


②考察

● 「人類は、(略)飢餓と疾病と暴力による死を減らすことができたの

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読書:『新・100年予測』G.フリードマン

読書:『新・100年予測』G.フリードマン

①紹介

世界的な情報機関ストラトフォーの創設者で「影のCIA」こと、ジョージ・フリードマン氏による『新・100年予測-ヨーロッパ炎上』(夏目大訳、早川書房、2015年)を紹介します。EUはこれからどこへ向かうのか?2014年のクリミア危機を予言した氏の先見の明に脱帽すること間違いありません。


②考察

● 「ヨーロッパの統合が紛争を防いできたというのが本当なら、EUなしでは、バルカンやコー

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読書:『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』樋口耕太郎

読書:『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』樋口耕太郎

①紹介

経営者の樋口耕太郎氏による『沖縄から貧困がなくならない本当の理由』(光文社新書、2020年)を紹介します。その理由を沖縄社会に根付く歪な文化に見出した時、もう気安く「いいところ」とは言えなくなるでしょう。日本の一大観光地・沖縄の抱える不都合な真実がここに。


②考察

● 「沖縄の根本原因を突き詰める旅は、日本の根本原因を突き詰める旅でもあり、そして、私たち自身を見つめる旅になるだろ

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読書:『サピエンス全史』(下)Y.N.ハラリ

読書:『サピエンス全史』(下)Y.N.ハラリ

①紹介

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による『サピエンス全史-文明の構造と人類の幸福』(下巻、柴田裕之訳、河出書房新社、2016年)を紹介します。前回読んだ上巻の続きですね。飽くなき欲望によって歴史的な革命を次々と起こしてきた人類。その子孫である私たちが招くであろう近未来もついでに覗いてみませんか?


②考察

● 「ホモ・サピエンスは独特で神聖な性質を持っており、その性質は他

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読書:『マッキンダーの地政学』H.J.マッキンダー

読書:『マッキンダーの地政学』H.J.マッキンダー

①紹介

イギリスの地理学者ハルフォード・J・マッキンダーによる『マッキンダーの地政学-デモクラシーの理想と現実』(曽村保信訳、原書房、2008年)を紹介します。第一次世界大戦が終わった年に発行され、今や地政学の古典として名高い本書。およそ100年前の教訓は、現在、世界各地で起きている紛争を読み解くうえで欠かせないでしょう。

②考察

● 「近代戦略的な意味におけるハートランドとは、要するに必要

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読書:『小説 琉球処分』(下)大城立裕

読書:『小説 琉球処分』(下)大城立裕

①紹介

沖縄の小説家・大城立裕による『小説 琉球処分』(下巻、講談社文庫、2010年)を紹介します。前回読んだ上巻の続きですね。琉球最後の王・尚泰が日本への従属を呑んだことで、王国の崩壊が音を立てて始まりました。残された民は一体どうなるのか。日本への同化を迫られる苦痛は、今日の沖縄が抱えるそれと非常によく似ているような気がします。


②考察

● 「(こんなはずはない。時代の流れというものは

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読書:『サピエンス全史』(上)Y.N.ハラリ

読書:『サピエンス全史』(上)Y.N.ハラリ

①紹介

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏による大ベストセラー『サピエンス全史-文明の構造と人類の幸福』(上巻、柴田裕之訳、河出書房新社、2016年)を紹介します。遥か大昔にネアンデルタール人を滅ぼしたホモ・サピエンス。なぜ私たちの祖先は生き残ることができたのか。「認知革命」がもたらしたその進歩史に衝撃を受けます。

②考察

● 「虚構、すなわち架空の事物について語るこの能力こそが、

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読書:『第三次世界大戦はもう始まっている』E.トッド

読書:『第三次世界大戦はもう始まっている』E.トッド

①紹介

フランスの歴史人口学者エマニュエル・トッド氏による『第三次世界大戦はもう始まっている』(大野舞訳、文春新書、2022年)を紹介します。2年前に起き、今も終息の兆しが見えないウクライナ戦争。その原因は何か?アメリカとロシアの思惑は?突入してしまった新しい戦争の経過とこれからを人口動態の観点から探ります。


②考察

● 「なぜ、ウクライナの人々はロシアに戻りたがるのでしょうか。プーチン

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読書:『小説 琉球処分』(上)大城立裕

読書:『小説 琉球処分』(上)大城立裕

①紹介

沖縄の小説家・大城立裕による『小説 琉球処分』(上巻、講談社文庫、2010年)を紹介します。史実に基づく大河ドラマさながらの物語。明治政府の一方的な決定によって意見が分かれ翻弄される琉球の人々。作者が亡くなってから4年目となる今年、沖縄が抱える諸問題の根幹に迫ってみませんか。

②考察

● 「軍隊を置くのは、琉球の防衛なんだよ。清国や列強が琉球をねらっている」
➢ 大久保利通の使いであ

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