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読書:『佐藤優の地政学入門』佐藤優

①紹介

元外務省主任分析官で作家の佐藤優氏による『働く君に伝えたい「本物の教養」佐藤優の地政学入門』(Gakken、2022年)を紹介します。なぜウクライナやイスラエルは戦火に巻き込まれるのか?米中対立の背景には何があるのか?答えは地理にありました。本書は地政学に基づき、変化の絶えない国際情勢を読み解く一助となるでしょう。

②考察

「対象とする国のイデオロギーは変わっても、その地理的要素は大きく変わることがない」
➢ 「大きく」は変わらないということに注意が要るだろう。確かにヒマラヤ山脈が吹き飛んで平地になったり、日本列島が再び朝鮮半島やサハリンと陸続きになる可能性は現時点ではないが、新たな航路の確保や近年の温暖化に伴う海面上昇によって地形が変わることは十分にあり得、たとえそれが極小なものであっても、各国の政治や外交に与える影響は計り知れない。

「日本列島は、シーパワーのアメリカが、ランドパワー国家を抑え込むための防波堤ともいえる」
➢ ここで言うランドパワー国家とは言うまでもなく中国とロシアを指している。はたして日本列島は地理的偶然の産物と言えるのか。それは日本がランドパワーとシーパワーの衝突を和らげる緩衝地帯になることを意味しているのではないか。あくまで国内から米軍が撤退すればの話ではあるが。

「米中対立は『冷戦』から『熱戦』に移行しようとしているといえる」
➢ それは、かつて米ソが展開した冷戦より過激なものとして起きるだろうか。否、すでに始まっているかもしれない。時代も戦術も大きく変化している。情報戦(プロパガンダ)はもちろん、サイバー・ドローン攻撃もその一つだ。現在ウクライナやイスラエルで起きている戦争もそうだが、「熱戦」は時代のうねりを象徴するものとなるだろう。

③総合

「地政学的リスク」という言葉を聞かない日はないと言っても良いくらい、最近はそれへの関心が高まっているように思われる。地理的条件は、ある国にとって大きな武器や紛争の原因にすらなり得るのだ。世界地図の見方は一つだけでないということを知るのが、私たちが地政学に触れる目的なのかもしれない。

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