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読書:『マッキンダーの地政学』H.J.マッキンダー

①紹介

イギリスの地理学者ハルフォード・J・マッキンダーによる『マッキンダーの地政学-デモクラシーの理想と現実』(曽村保信訳、原書房、2008年)を紹介します。第一次世界大戦が終わった年に発行され、今や地政学の古典として名高い本書。およそ100年前の教訓は、現在、世界各地で起きている紛争を読み解くうえで欠かせないでしょう。

②考察

「近代戦略的な意味におけるハートランドとは、要するに必要に応じてシー・パワーの侵入を阻止できる地域のことである」
➢ ハートランドとは、北極圏から下のロシア全域とアジアのほとんど半分、そしてヨーロッパのほぼ四分の一を占める心臓地帯のこと。海岸から離れており、これを落とすには海上兵力ではなく陸上兵力が必要となるが、現在それが可能な国が心臓部の外にあるだろうか。

「東欧を支配する者はハートランドを制し、ハートランドを支配する者は世界島を制し、世界島を支配する者は世界を制する」
➢ 世界島とは、ユーラシア大陸とアフリカ大陸を合わせて一つの島と見なしたもの。今でこそ東欧はいくつかの国々に分かれているが、何らかの理由でこれらを支配できる国があるとしたら。大国が地球上において一つだけでないことはある種の幸運に他ならない。

「たとえ現在のロシアに代わって新しい勢力が内陸の一帯を支配する地位に立ったとしても、同地域の回轉軸としての地理的な重要性がもつ意味はすこしも変わらない」
➢ マッキンダーによれば、仮に日本や中国がその地位に立ったならば、世界は黄禍に恐れ慄くのだという。領土的野心のある国ならばそれを実行しかねないが、そこはハートランドと重なる部分なので、海は無論、陸から攻めることも困難だろう。

③総合

戦争の歴史は、土地の奪い合いの歴史であると言っても過言ではない。だからこそ、その土地の重要性を知るのに、周辺に散らばっている資源や宗教、人口の問題、地理的条件は決して無視できないのだ。今後は、米中露の三大国はもちろんのこと、東欧史の理解を踏まえ、戦争が終わらないウクライナを含むそれらの国々の動向も注視すべきだろう。

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