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心象空間 エッセイ・小説

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エッセイは日常の出来事に触れ感じたことを心のままに、書き連ねています。 小説は頭の中のモヤモヤを言葉にする作業です。
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ショートショート「超・回復傷薬」

ショートショート「超・回復傷薬」

またやってしまった___。アキは流血した指先を見つめ思った。ほつれたスカートのはしを安全ピンで止めようとして、あやまってピンを自分の指に刺したのだ。血がどんどんにじんでくる。

アキは急いで絆創膏を探し、指に巻いた。こういうことは日常茶飯事だ。子どものころからそうだった。27歳になった今でも、怪我が絶えない。

せっかちな性格も多少の影響はあるのかもしれないが、ほぼ毎日のように怪我をしているとなる

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私にとっての絵と詩

私にとっての絵と詩

今月は、幾作品か絵を描き終えた。
ただ私の場合、絵を描き終えて「さぁ完成だ」とはならない。

絵に何か一言書き添えたくなって、早起きした朝は描いた絵と向き合い頭に浮かぶ言葉を書き留めていく。
それがいつも、「詩」という形で完結する。

詩は、描き終えた絵をぼーっと眺めながら心に浮かんだ言葉を紡いでゆく。
それはまるで、言葉の煌めく小さな星屑を組み合わせるかのよう。

広い集めては繋ぎ、外しては別の

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大切な人は必ずそばにいる

大切な人は必ずそばにいる

いつの間にか、瞬間移動したようだ。

自宅で娘と寝ていたはずの私は、いつの間にか実家の自分の部屋に一人佇んでいた。

ドアのノック音がした。

部屋に入ってきたのは、父だった。

「やあ、久しぶり。」

と言って父は、紙袋を私の前にそっと置いた。

「あ、うん。」

父が何を持ってきたのかと袋を覗いたら、袋いっぱいに大小色様々な駄菓子が詰め込まれていた。

懐かしいな。

幼い頃、近所に駄菓子屋さ

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貝殻と私

貝殻と私

先週末、海へ行った。

一つ上の兄が海近い場所に家を買い、どんな場所なのだろうという興味と、私は海が好きだから。

兄宅から海まで歩いて5分もかからないという。

車でナビを見ながら兄が住む街まで進んで行くと、幾棟ものマンションが立ち並ぶ集合住宅が続き、突然視界が開けた。

彼方に見える水平線。

空はどこまでも高く、砂浜は広大に横へ横へと伸びていく。

兄家族と合流し、砂浜をゆっくり歩いた。

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