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hoshikuzu
2023年7月29日 18:56
連日お風呂の中を歩いているようだな、と外に出るたび思う。それでも花も咲き、実も成る草木には頭が下がる。湯に浸かった水中花のごとく、夕風に吹かれた花が揺れる。芽吹きの季節はだいぶ過ぎてしまったけれど、新芽を見つけることはしばしばある。よくよく目を凝らしてみると、黄緑のちいさな粒が色づく季節に備えていたり。花と交代するように、木々の頂上に現れた新しい葉が光る。ヒイラギやヒノキ類のように
2023年7月24日 17:42
近所の百日紅並木が満開を迎えている。紅、薄紅、白と、それぞれの花を咲かせて、さしづめ夏の桜といった趣で。それでいて、桜ほど注目を集めないところもいい。真夏の陽射しに負けず花を咲かせる頼もしさ。つるりとした樹皮はよく見ると、まるでジグソーパズルのようで、まだらに色が重なる。中でも私は白い百日紅が好きだ。真っ青な空にぽっぽっと泡がはじけたような白い花が、とても清々しい。「さるすべり」な
2023年7月16日 18:27
桜の木を見上げると、青々とした葉はどれもちいさな穴がびっしりと開いていた。初夏の頃、お腹いっぱい食べつくした毛虫たちの置き土産。緑のレースから夏の空が透けて見える。先日、網戸の外にちいさな卵が産みつけられていた。直径二ミリほどの薄緑の粒が十数個。蛾かなにかだろうと踏んでいたら、どうやらカメムシだったらしい。ひと月と経たないうちに卵は空になっていた。網戸の網目よりもちいさな虫の子らは
2023年7月13日 17:22
一日続くと構えていた本降りの雨は、昼過ぎ、肩透かしをくらったように止んでしまった。雨が遠ざかると、息を潜めていた蝉の声が戻ってくる。先日、実家の木に小ぶりの蝉が貼りついていた。一見、樹皮かと見まがうような斑模様。ニイニイゼミだという。家族が今年初だと持ち帰った抜け殻はアブラゼミのものだった。つい昨日は、早くもその生涯を終えた蝉が門前に横たわり、蟻たちの糧になろうとしていた。透き
2023年7月11日 17:04
子どもの頃、毎月読んでいた小誌「たくさんのふしぎ」。毎号さまざまなテーマで、とりわけ気に入って何度も読んだ号がいくつかあった。中でも「アマゾン・アマゾン」という、その名もアマゾンを取材した内容のものは大のお気に入りで、今でもよく覚えている。ページをめくると、深い緑の森が広がって、いつか訪れてみたいと思ったものだった。当時はまったく存じ上げていなかったのだけれど、後に今森光彦さんの著だったこ
2023年7月6日 17:03
6月が去り、この街のお祭月になる。街の中心を貫くアーケードに、コンコンチキチン、という金属楽器と笛の混じったBGMが流れはじめる。「山」や「鉾」と呼ばれる山車を所有する町内は、年に一度の大舞台に向けて、その準備に追われる。山鉾が街を巡る日の三日ほど前から、封鎖された通りに出店と人が溢れ、おそらく一年で最も賑わい華やかな数日。巡行は昔、郷里の友人が訪ねてきた際、一度だけ観に行ったことがある
2023年7月4日 03:12
深夜一時を過ぎると、窓から月が見える。向かいの家と家の間に、ちょうどぴったりと埋め込まれたように。今夜は満月だそう。どうりでまるい。辺りの灯りはすっかり消えて、月だけがぽっかり光って。左党のくせに甘いものが好きだったせいか、晩酌の友はすっかり甘味ばかりになってしまった。チョコレートにアイスクリーム、饅頭、羊羹、なんでもござれ。バニラアイスにちょっといい塩をぱらりとひと振りするのが夏