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熱冷ませぬ雨

子どもの頃、毎月読んでいた小誌「たくさんのふしぎ」。
毎号さまざまなテーマで、とりわけ気に入って何度も読んだ号がいくつかあった。
中でも「アマゾン・アマゾン」という、その名もアマゾンを取材した内容のものは大のお気に入りで、今でもよく覚えている。
ページをめくると、深い緑の森が広がって、いつか訪れてみたいと思ったものだった。
当時はまったく存じ上げていなかったのだけれど、後に今森光彦さんの著だったことを知る。

キャッサバの根から採ったでんぷんでつくる主食。
逆さ吊りにされてこれから茹でられようというアルマジロ。
枝を切ると水がしたたるジャングルの樹木。
背中が透けた昆虫。
ヘリコニアというバナナの仲間。
そして、スコール。

ジャングルを時折襲う強い雨。
そこに生きる人たちは、一時を過ぎれば雨はピタリを止むことを知っている。
だから、雨の間はただ雨が止むのを待つ。
しとしとと降り続く雨の国に生まれた自分からすると、そんなさまは潔く、どこか敬意すら感じながら、熱帯の気象現象を想像したものだ。

ところがここ十数年、この国でもスコールは日常になってしまった。
突然不穏な雲がやってきたと思ったら、あっという間に雷雨の中にのまれてしまう。
本の中のあの森はやはり今もスコールを見送って、変わらぬ姿のままだろうか。

体温よりも高い外気にくらりとしながら、ここはもう熱帯なのかもしれないと思う。



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