真島朗

中心はエブリスタ↓ noteはアーカイブ保存用に https://estar.jp/u…

真島朗

中心はエブリスタ↓ noteはアーカイブ保存用に https://estar.jp/users/1485188336

マガジン

  • 小説『つらつら物思い』

    『かたかた片想い』→『くらくら両想い』→つづき。寧音視点。

  • 小説『くらくら両想い』

    小説『かたかた片想い』続編

  • 小説『かたかた片想い』

    女子高生百合小説。

記事一覧

ペンを魔法の杖にして

 近年若者の傾向に関して「Z世代」という言葉を持って括られるのを見聞きにするようになった。少し前には「ゆとり世代」もよく用いられていたが、どちらも若者の現状を嘆…

真島朗
10日前
2

子どもと大人の炭酸、私のご褒美。

 お酒の飲めない祖父は甘い炭酸飲料を好んで飲んでいた。美味しそうに飲む姿を見て、炭酸飲料に憧れた幼い頃の私は一口もらって、初めて体験した喉の刺激に驚いた。「こん…

真島朗
1か月前
2

「つらつら物思い」第13話 完

つらつら 2  またいつもみたいに晴琉ちゃんの顔を曇らせてしまうと思っていた。でも予想に反して晴琉ちゃんは一瞬だけ驚きはしたけれど、すぐに暖かい笑顔をくれた。 …

真島朗
1か月前

「つらつら物思い」第12話

つらつら 1  夏休みの大きなイベントと言えば花火大会。例年は自宅のマンションのベランダから眺めていた。会場に行くより家の方がよく見えるし、人混みも喧噪もない。…

真島朗
1か月前

「つらつら物思い」第11話

ぷかぷか  8月。晴琉ちゃんたちが所属するバスケ部の夏の全国大会はあっけなく終わってしまった。なぜなら一回戦目から優勝候補と当たってしまったから。接戦の末の敗北…

真島朗
1か月前

「つらつら物思い」第10話

ぽかぽか 「あぁあ!頭おかしくなる!」  バスケ部の全国大会出場が決まったところに無情に迫り来る期末テスト。晴琉ちゃんはバスケに集中していたようで最近は勉強がお…

真島朗
1か月前

「つらつら物思い」第9話

ふわふわ 2  全国大会への出場がかかった試合の当日。私は円歌と共に会場にいた。飲み物を買ってこようと離れた隙に円歌は他校の生徒に声をかけられていた。私にはもう…

真島朗
1か月前
1

「つらつら物思い」第8話

ふわふわ 1  7月に入り、すぐの土曜日。私の誕生日。でも翌日にバスケ部の全国大会出場がかかった大事な試合があるから、バスケ部の葵ちゃんと晴琉ちゃんに直接お祝い…

真島朗
1か月前
2

「つらつら物思い」第7話

べたべた 2  お見舞いに行った翌日。晴琉ちゃんの体調はすっかり戻ったみたいだったけれど、私への態度がおかしくなってしまった。朝に教室で晴琉ちゃんの前の席を借り…

真島朗
1か月前
2

「つらつら物思い」第6話

べたべた 1  雨に降られた翌日。晴琉ちゃんはお休みだった。円歌に聞いたら「熱出したって。晴琉なのに」って何だか余計な一言を添えて返事がきた。どう考えても昨日、…

真島朗
1か月前
1

「つらつら物思い」第5話

ざぁざぁ 2  風邪が治った数日後。6月はまだ梅雨で明けてはいない。私は放課後に体育館へバスケ部の練習を見に行った。円歌は結局試合は見に行くようになったけれど普…

真島朗
1か月前

「つらつら物思い」第4話

ざぁざぁ 1  6月。晴琉ちゃんとの二度目のデートの日。なのに。待ち合わせの駅に向かう間にゲリラ豪雨に降られた。駅に到着した時には全身がびしょびしょに濡れてしま…

真島朗
1か月前
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「つらつら物思い」第3話

でれでれ  5月の終わり。バスケ部は新入生も加わった状態での初めての練習試合があった。初めてレギュラーになった葵ちゃんの活躍を見るために、ようやく重たい腰を上げ…

真島朗
1か月前
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「つらつら物思い」第2話

とげとげ 「ゲーセンで良かった?」 「うん」  ゴールデンウィークのとある日。半ば強引に取り付けた晴琉ちゃんとのデート。でもデートと思っているのは私だけで、晴琉…

真島朗
1か月前
1

「つらつら物思い」第1話

きらきら 「晴琉ちゃん。お手」 「ん?はい」  高校2年生の春。進級して私は晴琉ちゃんと同じクラスになった。円歌と葵ちゃんは別のクラスだけど二人は同じクラスでと…

真島朗
1か月前
2

「つらつら物思い」プリクエル

 ――恋は醜いものだと思っていた。  一つ年上の志希ちゃんと出会ったのは物心がついたころだったような気がする。気付いたら毎日のように一緒に遊んでもらっていた。か…

真島朗
2か月前
2

ペンを魔法の杖にして

 近年若者の傾向に関して「Z世代」という言葉を持って括られるのを見聞きにするようになった。少し前には「ゆとり世代」もよく用いられていたが、どちらも若者の現状を嘆く際に使われる印象がある。「ゆとりは仕事ができない」「Z世代はすぐ辞める」といった具合に。「今時の若者は」と嘆くことは今に始まったことではなく昔からあることだが、私はこういった分断を煽る言葉が苦手だ。
 「今時の若者は」と嘆いている年上の世

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子どもと大人の炭酸、私のご褒美。

 お酒の飲めない祖父は甘い炭酸飲料を好んで飲んでいた。美味しそうに飲む姿を見て、炭酸飲料に憧れた幼い頃の私は一口もらって、初めて体験した喉の刺激に驚いた。「こんなの飲めない!」と騒いだ私は「ジュースでいいでしょ」と母親にたしなめられた。ジュースは子ども扱いされているようで不服だったが、黙って従った。私は炭酸飲料は大人の飲み物なのだと思っていた。
 気付けば炭酸飲料が飲めるようになっていた小学生時代

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「つらつら物思い」第13話 完

つらつら 2

 またいつもみたいに晴琉ちゃんの顔を曇らせてしまうと思っていた。でも予想に反して晴琉ちゃんは一瞬だけ驚きはしたけれど、すぐに暖かい笑顔をくれた。

「何で笑ってるの?」
「んー?……また離れようとしてると思って」

 言葉と共に晴琉ちゃんの腕の中に閉じ込められた。抵抗したらより強く抱きしめられた。身動きが取れない私に対して晴琉ちゃんは楽しそうに笑っている。

「離してよ」
「ヤダ」

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「つらつら物思い」第12話

つらつら 1

 夏休みの大きなイベントと言えば花火大会。例年は自宅のマンションのベランダから眺めていた。会場に行くより家の方がよく見えるし、人混みも喧噪もない。ちょうどいい距離で見られるのが自分の家の自慢でもある。でも今日は浴衣を着て会場へ向かっていた。
 待ち合わせ場所に着くと、そこには目的の人物はいなかった。目的の人物である晴琉ちゃんは人を待たせるような性格ではない。遅れるという連絡もなかっ

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「つらつら物思い」第11話

ぷかぷか

 8月。晴琉ちゃんたちが所属するバスケ部の夏の全国大会はあっけなく終わってしまった。なぜなら一回戦目から優勝候補と当たってしまったから。接戦の末の敗北で、鏡花ちゃんが言うには手応えは十分にあったということだった。バスケ部としては悲観はしていないみたい。バスケ部の子たちは残りの夏休みを盛り上げるべく、たくさん練習に励み、そしてたくさん遊んでいた。



 「あらぁ。大きくなったねぇ」

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「つらつら物思い」第10話

ぽかぽか

「あぁあ!頭おかしくなる!」

 バスケ部の全国大会出場が決まったところに無情に迫り来る期末テスト。晴琉ちゃんはバスケに集中していたようで最近は勉強がおざなりになっていたみたい。学校で助けを求められたから休日である今日、私の家で勉強を教えてあげることになった。両親は出掛けてしまったから部屋に二人きり。ローテーブルに教科書を広げて、向かい合って座る。今はとにかくテスト範囲の内容を詰め込む

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「つらつら物思い」第9話

ふわふわ 2

 全国大会への出場がかかった試合の当日。私は円歌と共に会場にいた。飲み物を買ってこようと離れた隙に円歌は他校の生徒に声をかけられていた。私にはもう見慣れた光景。でも会場に既にいるはずの葵ちゃんの目に入ったら困る。試合前にテンションが下がるだろうから。

「ごめんなさい。この子私のなの」

 面倒だから適当なことを言って間に入り、円歌の手を取ってその場を離れた。「寧音かっこいい~」と

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「つらつら物思い」第8話

ふわふわ 1

 7月に入り、すぐの土曜日。私の誕生日。でも翌日にバスケ部の全国大会出場がかかった大事な試合があるから、バスケ部の葵ちゃんと晴琉ちゃんに直接お祝いをしてもらうことは私から断った。試合が終わったら四人で遊びに行くことを約束して。今は私の部屋に円歌と誕生日ケーキがある。

「寧音おめでと~」
「ありがと」
「はい。プレゼント」

 円歌からもらったプレゼントは蝶のモチーフのバレッタだっ

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「つらつら物思い」第7話

べたべた 2

 お見舞いに行った翌日。晴琉ちゃんの体調はすっかり戻ったみたいだったけれど、私への態度がおかしくなってしまった。朝に教室で晴琉ちゃんの前の席を借りて座り挨拶をしても目が合わないし、話しかけてもたどたどしい返事をしてきた。これは私が思っていた以上に。

「ねぇ晴琉ちゃん」
「何?」
「……色仕掛け効きすぎ」
「違うって!」

 他の子に聞こえないように配慮して耳元で言ってあげたら、体

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「つらつら物思い」第6話

べたべた 1

 雨に降られた翌日。晴琉ちゃんはお休みだった。円歌に聞いたら「熱出したって。晴琉なのに」って何だか余計な一言を添えて返事がきた。どう考えても昨日、私を追って大雨の中傘を差さずに走ったからだと思う。前のデートで雨に降られた時より濡れている時間が長かったのもきっとある。
 いつもより長く感じる授業をこなしていく。ようやく訪れた放課後に風邪を引かせたお詫びに円歌から晴琉ちゃんがミカンが好

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「つらつら物思い」第5話

ざぁざぁ 2

 風邪が治った数日後。6月はまだ梅雨で明けてはいない。私は放課後に体育館へバスケ部の練習を見に行った。円歌は結局試合は見に行くようになったけれど普段の練習を見に行くことはなかった。葵ちゃんと付き合うようになったからと言って相手に執着しすぎない円歌のことも、それを許していて見に来るように強引に誘わない葵ちゃんとの関係性も私は好きだった。
 
「寧音。最近よく来るね」
「あ、鏡花ちゃん

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「つらつら物思い」第4話

ざぁざぁ 1

 6月。晴琉ちゃんとの二度目のデートの日。なのに。待ち合わせの駅に向かう間にゲリラ豪雨に降られた。駅に到着した時には全身がびしょびしょに濡れてしまった。晴琉ちゃんを見つけて近寄ると晴琉ちゃんも私と同じようにびしょびしょだった。

「うわあぁ……」

 挨拶もそこそこに、その場でうなだれる晴琉ちゃん。本当はこれから美術館に行く予定だった。芸術に興味がない晴琉ちゃんでも楽しめそうな体感

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「つらつら物思い」第3話

でれでれ

 5月の終わり。バスケ部は新入生も加わった状態での初めての練習試合があった。初めてレギュラーになった葵ちゃんの活躍を見るために、ようやく重たい腰を上げて試合を見に行くと決めた円歌を連れて、練習試合をする相手の高校へ応援しに行くことになった。
 私と晴琉ちゃんの関係はというと、あの“デート”の翌日に学校で晴琉ちゃんに会ったら、私が「気にしないで」と言った通り何も気にしてないような、いつも

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「つらつら物思い」第2話

とげとげ

「ゲーセンで良かった?」
「うん」

 ゴールデンウィークのとある日。半ば強引に取り付けた晴琉ちゃんとのデート。でもデートと思っているのは私だけで、晴琉ちゃんは普通に仲の良い友達とのお出かけくらいにしか思っていないと思う。その証拠に私がそれなりに意を決して言ったデートのお誘いに「え?……そういえば二人で遊んだことなかったね!いいよ!」と普通のことのように返してきたのだから。
 本当はゲ

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「つらつら物思い」第1話

きらきら

「晴琉ちゃん。お手」
「ん?はい」

 高校2年生の春。進級して私は晴琉ちゃんと同じクラスになった。円歌と葵ちゃんは別のクラスだけど二人は同じクラスでとても喜んでいた。
 1年生の時の秋くらいから四人で校内のラウンジに集まり、お昼時間を過ごすことが当たり前になっていた。私は活発で人懐っこい晴琉ちゃんのことをワンちゃんみたいだなとよく思う。思っていたから、つい手のひらを出して言ってしまっ

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「つらつら物思い」プリクエル

 ――恋は醜いものだと思っていた。

 一つ年上の志希ちゃんと出会ったのは物心がついたころだったような気がする。気付いたら毎日のように一緒に遊んでもらっていた。かわいくて何でもできる子どもだった志希ちゃんは、年齢を重ねるほどに周りからの注目を浴びていった。あの頃は私も仲の良いお姉ちゃんが人気者になっていくのを見て誇らしく思っていた。
 同じ小学校に通っていてずっと仲良しだった。でも志希ちゃんが中学

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