真島朗

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真島朗

中心はエブリスタ↓ noteはアーカイブ保存用に https://estar.jp/users/1485188336

マガジン

  • 小説『くらくら両想い』

    小説『かたかた片想い』続編

  • 小説『かたかた片想い』

    女子高生百合小説。

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「かたかた片想い」第1話

きらきら ファインダー越しに見る君の涙は儚く美しい――。 *  「――円歌。まーどーか」  私と私の手元にある本との間に割り込む、見慣れた綺麗な白い手。どうやらまた私は小説に集中して、話しかけてくれた親友のことを無視していたらしい。 「あ、葵。何?」 「何じゃない。何回呼んだと思ってるの」 「いつものことじゃん」 「もぅ。開き直るな」  葵は小学1年生の頃からの幼馴染だ。葵は結構な人見知りで、昔は私の後ろをついてきてばかりだった。中学生になってバスケ部に入ってから

    • 「くらくら両想い」第13話 完

      くらくら の あと (おまけ2・バレンタイン編)  バレンタインはずっと昔から憂鬱な日だった。何故なら私は甘いものが苦手だから。事前にできるだけチョコはいらないと周囲にやんわりと伝えるのも手間だし、もらっても食べきれないから心苦しい。ここ数年バレンタインのチョコは円歌からのものでさえ、配る人への分とは別に甘さ控えめのものを作ってもらうのが申し訳なくて断っていた。でも恋人になった今年はどうしてもほしくなってしまって、こちらからお願いしていた。  きたるバレンタインデー当日は休

      • 「くらくら両想い」第12話

        くらくら の あと (おまけ1・クリスマス編)  付き合ってから初めてのクリスマス。それはもう気合を入れて臨みたかったけど、当たり前のように部活はある。部活が終わったら急いで帰ってシャワーを浴び、着替えてから待ち合わせ場所の駅に向かう。さっきまで運動していたから疲れているけど、自然と歩く速度は上がっていく。だって早く会いたい。 「円歌!」 「葵、部活お疲れさま~」  駅前で待っていた円歌は手をこすり合わせていて。 「ごめん、寒かったよね。先にお茶でもしよう?」 「うん

        • 「くらくら両想い」第11話

          くらくら 2 「こっちきて」  ベッドに腰掛ける円歌の声に誘われるように素直に近づく。私が隣に座ると円歌が急に抱き着いてきたから受け止める。昼間から大胆。 「どうしたの」 「昨日の事謝りたくて……ごめんね。送ってくれたのに勝手に帰って」 「なんだ、そのことなら別にいいよ。だって葵の言うこと聞いてくれて、夢まで見たんでしょ?」 「言わなくていい!」 「ねぇどんな夢見たの?」  私のからかうような言動に、円歌はぴったりと私に抱き着いていた体勢から少しだけ体を離して、今日は

        • 固定された記事

        「かたかた片想い」第1話

        マガジン

        • 小説『くらくら両想い』
          14本
        • 小説『かたかた片想い』
          14本

        記事

          「くらくら両想い」第10話

          くらくら 1  文化祭が終わり振り替え休日になった月曜日。今日は私の誕生日。夜中の零時にとりあえずお祝いが来た人に返事をし続け寝落ちして朝になる。気付けば午前中の約束の時間が迫っていて、急いで準備して家を飛び出た。 「ごめん!寝坊した……」 「大丈夫だよ葵ちゃん」  とあるカフェで会う約束をしてたのは寧音ちゃん。いつもの制服とは違ってワンピースにカーディガンを羽織っているけど、いつもの通り清楚で上品な佇まいをしている。先にソイラテを頼んでいたようだ。私は大抵カフェではコ

          「くらくら両想い」第10話

          「くらくら両想い」第9話

          どきどき 2  文化祭2日目。私のクラスは劇が中止になったから、みんなで話し合い怪我をして自宅で大人しくしている晴琉と、ビデオ通話を繋いでおしゃべりをすることになった。晴琉は足首の捻挫以外は大した怪我をしていなかったようで、元気に受け答えをしていた。真っ先に劇が中止になったことを謝る晴琉を恨むような人はクラスにはいなくて、口々に励ます言葉をかけていた。  それから優しい晴琉は怪我の話で暗くならないように、病院へ王子様の格好で運ばれて目立って大変だったかという話を面白おかしく

          「くらくら両想い」第9話

          「くらくら両想い」第8話

          どきどき 1  呆然と立ち尽くしていた私はスマホに大量の通知が届いてることに気が付いた。しかし円歌からのものはない。  その後ふらふらと校舎の端までなんとか辿り着き、崩れ落ちるように座り込んだ。どうして晴琉が……円歌とも連絡がつかない。どうしたらいいか分からなくなる。 「葵ちゃん!」 「志希せんぱ……」  うつむいていたところに、志希先輩が現われた。ただただ無気力な私を見て名前を呼びきる前に抱きしめられた。不安な気持ちが少しだけ減り、先輩の腕の中で思わず涙がこぼれた。

          「くらくら両想い」第8話

          「くらくら両想い」第7話

          ばくばく 2  円歌と部室で過ごした後、お昼ご飯を一緒に食べて。あっという間に劇の準備の時間になってしまった。円歌も午後のシフトに入るから一旦お別れする。  体育館のステージ裏に行くと王子様の格好をした晴琉が目に留まる。本番が近づき緊張しているのか真剣な顔をしていた。背もあるし、程よく筋肉質な体型は凛々しく、かっこ良さが際立っている。部活をしながら劇のセリフを覚えるなんて、晴琉のバイタリティの高さというか、努力しながらも全力で楽しむところは本当に尊敬してしまう。  少しだけ

          「くらくら両想い」第7話

          「くらくら両想い」第6話

          ばくばく 1  数日後。ラウンジで円歌と寧音ちゃんと晴琉と四人でお昼の時間を過ごす。話題は11月の文化祭のこと。少しずつ準備は進められていたけど、テストも終わった今は本格的に準備が始まる。  私と晴琉のクラスは演劇をすることになった。秋に大会がある運動部には気を遣って文化部の子たちが中心に進めてくれている。だから運動部である私や晴琉の負担が少なくなる予定だったけど、クラス中の女子から強く推す声もあって晴琉は王子様役をすることになり最近は忙しそうだった。私は目立つのが苦手だか

          「くらくら両想い」第6話

          「くらくら両想い」第5話

          ぞわぞわ 2  寧音ちゃんのことは頭の片隅に置いて、中間テストに集中する。何とかテストは切り抜けて、部活にまた集中する日々。 「はぁ……」  とある日の部活中。思わずため息がこぼれる。いつ寧音ちゃんに手紙のことを聞こうかタイミングを計りかねていた。そんなことを考えていたから、集中力が切れていたのだと思う。 「葵!」  晴琉からのパスに反応が遅れ、指に直接バスケットボールがぶつかった。 「痛っ」 「葵!大丈夫?」 「……多分」 「葵ちゃん、ちょっと外れてなさい」

          「くらくら両想い」第5話

          「くらくら両想い」第4話

          ぞわぞわ 1  段々と過ごしやすい気温に移り変わる10月。志希先輩と二人、閉じ込められた日から幸いにも何事もなく平穏な日々を過ごしていた。結局あの手紙が誰からの物なのか、私のキーホルダーはどこにいってしまったのか、何も分からないのが不気味だったけど。  今日は学校行事で1年生は芸術鑑賞会の日だった。市民ホールに演劇を見に行くのだけど、私には鑑賞するのと隣に座る晴琉が寝ないように世話をする仕事があった。  クラスごとに固まっているからクラスが違う円歌は遠くの席にいる。隣に座る

          「くらくら両想い」第4話

          セルフリメイク

           物書きになりたくてとりあえず一日千字は書くようになった。  そしてその一環として創作大賞2024に作品を投稿してみた所感。投稿した作品を書いたのは去年のクリスマスで、投稿する際にもう一度読み直して、修正してから投稿した。  書き上げた当時も何回も読み直したはずなのに、間違いはいくらでも目に付くし、内容にも納得はいかない。きっとこれからもずっと何回読み直そうと真に作品が完成することなんてないような気がした。推敲は終わりがない。  映画とかで傑作と言われる作品のリメイクってす

          セルフリメイク

          「くらくら両想い」第3話

          ぎらぎら 2  何とか部活を終えて帰宅したけど、結局キーホルダーは戻っていない。円歌になんて説明すればいいのか考えながら自分の部屋のドアを開けると、そこには私が一番会いたくて、でも今は会いたくない人がいた。 「ま、円歌。何で」  私のベッドの縁に不貞腐れたように座っている円歌。うちのお風呂を借りたのか、私のジャージを勝手に着ていた。私の方が服のサイズが大きいから、自然と萌え袖になっていて芸術点が高い……じゃなくて。 「おかえり葵。私今日泊まるから」  不気味なぐらい

          「くらくら両想い」第3話

          「くらくら両想い」第2話

          ぎらぎら 1 「あ、葵ちゃ~ん」  体育館に着くと他の1年生が準備を始めていた。急いで合流して準備を終えると志希先輩に捕まった。 「志希先輩。今日は早いですね」 「今日は囲まれなかったからねぇ……誰かさんのおかげで」  おかげで早く来れたと言いつつ納得が言ってないような態度を取る志希先輩。先輩はよく部活に遅れて来る。大抵はファンに囲まれたり、告白で呼び出されたり。学校のアイドルみたいな生活をしている先輩が早く来るのは珍しい。誰かさんとは?と首を傾けると先輩の後ろに見慣

          「くらくら両想い」第2話

          「くらくら両想い」第1話

          ゆらゆら  9月に入り新学期が始まった。今日もまた、学校の人気者でバスケ部のエースこと志希先輩にダル絡みされている。 「なぁんで葵ちゃんは付き合ってないわけ~?」  そう、志希先輩が言うように私と円歌は付き合っていない。せっかく先輩の尽力のおかげで両想いに成れたのに。円歌には「レギュラーになるまでは部活に集中したいから」と我がままを言って付き合うことは保留にしてもらっていた。その我がままは半分本心であって、もう半分は先輩が関係していた。  というのも、ほんのちょっと前ま

          「くらくら両想い」第1話

          「くらくら両想い」プロローグ

          ――失いたくないなら、手に入れなければ良いと思っていた。   人見知りだった私は可愛くて誰とでも仲良くなれる器用さと愛嬌を持った幼馴染の円歌(まどか)のことを小学生の頃からずっと好きだった。いつから好きになったのかは上手く思い出せないけど、たぶん一緒に帰る時間が楽しかったとか、一緒に食べたアイスが美味しかったとか、そんな一緒に過ごす普通の時間が幸せだと思うようになったからだと思う。  ずっと気持ちを伝えられないまま中学生になると、円歌が告白されるようになった。全部断っている

          「くらくら両想い」プロローグ