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常夜灯だって豆電球

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ぼんやりと滲み出る日々のひらめきを、エッセイ風味に仕立て上げていきます。不定期更新。
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記事一覧

私の陰嚢はよく腫れる

私の陰嚢はよく腫れる

 私の陰嚢はよく腫れます。

 初めて腫れたのは忘れもしない、15年前の冬。父の誕生日を祝い、家族でささやかなパーティーを開いていた時のことでした。

 食卓の上には普段は買わないような贅沢な総菜や割引シールのついたお寿司が並び、まるで帝国ホテルのバイキングのようです。

 唐揚げをひとり1パックずつ食べてよいなんて!いまの若い方には信じられないかもしれませんが、当時の人々にはめったに出来ない極上

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僕と炎症と「8」の話

 足の裏外側の真ん中辺りがどうにも痛い。

 揉んだり撫でたり摩ったり、果てには湯たんぽで温めながら寝てみたりと様々を試してみましたが……どうにも良くならない。しまいには歩くのにも支障をきたし始める始末。

 痛み方や部位を元に調べてみた結果、「短腓骨筋腱付着部炎」というのが私の今の症状にピタリと当てはまりました。

 本来はバリバリのスポーツマンがトレーニングのしすぎでなってしまう……いわゆる”

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ミニカーに自我が芽生えたときの話

 幼い頃の私がミニカーを人間だと思い込んでいた話は以前にもした通りですが(「僕とミニカーと”人間”と」参照)、今回はその続き。

 ミニカーに自我が芽生えた時の話です。

※「僕とミニカーと”人間”と」を読んでないと、少し分かりづらいかもしれません。↖にリンク貼ってますのでお時間よろしければ先にどうぞ※

 ミニカーが人間であるという偉大な発見をしてしまった私は、それ以降、学校から帰るやいなやミニ

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「主人公」になりたかった私の話


主人公の方程式 ゲームにおける「主人公」というものは、何故だか知らないが歩くスピードが異常に速い。

 名もなきNPCたち・・・ノロノロと歩く、というよりはむしろ這いずるようなスピードでどこへとも無い無為な移動を続ける彼らの間を、しかし彼らを一瞥もせずスイスイと闊歩する主人公。ゲーム画面を眺める私に電流が走った。これだ、と。

 何を隠そう、私は何かの「主人公」になりたかった。いや、今でもそうだ

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僕とミニカーと「人間」と

僕とミニカーと「人間」と

 何よりも先ず最初に。これだけは伝えておきたい。

 かつて私のクラスメイトはミニカーであり、ミニカーは私のクラスメイトであった。 と。

※重度の下ネタを含みます。ご注意下さい。

 今回はミニカーについてのエッセイ。小学生の頃の私の「趣味」のお話をさせていただきます。

 当時の私は、それはそれはクルマが大好きでした。

 クルマ・・・というよりはトミカが、と言った方が正しいやもしれません。誕

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あかい硝子

あかい硝子

※[前回]に引き続き、金赤硝子についてのエッセイ。赤い硝子は人を魅了するんです。

 小学生の時分、「たからもの」を集めるというのは私の大切な業務のひとつであった。我が家に設置された『宝箱』には、各所より拾い集めてきた数多のお宝が仕舞い込まれており、これを撤去せんと目論む母とは日々熱い戦いを繰り広げていたものである。

 形の良い木の棒につるつるの小石、ネジにボルトに錆びたバネ…。そんなに集めてど

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桜の花は 別れの栞

 ―――そんな歌詞の曲があちらこちらから漏れ聞こえてくる季節になった。

 別れの季節は同時に出会いの季節でもあるんだ・・・なんて安っぽい言葉を聞いたことがあるが・・・そもそもが人の心はプラスの記憶よりもマイナスの記憶の方がより強く刻み込まれやすいように出来ているのだ。

 春は、別れの季節。間違いない。

―――――この文章は半フィクションです

 先日、私は大学生としての3年間を共に過ごしたと

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「●んぽ材」ってなぁに? ―明日使えぬ豆知識①―

「●んぽ材」ってなぁに? ―明日使えぬ豆知識①―

 前回の更新から、実に2か月ほどの期間が空いてしまいました・・・。

 これまでの遅れも取り戻すべく、この1カ月は昨年以上の勢いでもって、毒にも薬にもならぬ文章をただひたすらに書き連ね通す所存でございます・・・。あなかしこ。

 さて、そんなわけで今回は小学生もビックリな豆知識。

 江戸時代の林業についての うんちく で御座います。どうでもいいですが今「く」って書くか30秒くらい迷いました。うん

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言の葉を「紡ぐ」ということ。

言の葉を「紡ぐ」ということ。

 言の葉を紡ぐ、ということ。

 話すとき。書くとき。思考の海の中で、曖昧なままにふんわりと漂う「もや」の中からピッ・・・と、細く洗練された一筋を引き出してくるということ。

 紡ぎ出された言の葉は、糸となり、紡ぎ手の「意図」としてその色、長さ、太さを他者からつぶさに観察されることとなる。衆目にさらされた糸は、しかし、その様相を紡ぎ手の「意図」そのままに見てもらえるとは限らない。

 故に、慎重に

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調理法に「どう考えたら コンビニの三景」(東京都 21歳学生男性)

調理法に「どう考えたら コンビニの三景」(東京都 21歳学生男性)

 ※本記事は朝日新聞に投書されたエッセイ「どう考えたら 新幹線の三景」をリスペクトしたものです※

 11月も半ばの秋の夕暮れ。学校帰り、腹が相当に減っていたので最寄りのセブン-イレブンに寄ってみた。

 お世辞にも広いとは言えない店内ではあったが、薄暗い外の街路とは対照的に煌びやかな店内には、所狭しと陳列された品々が彩りを加えていた。

 ふと見ると、壁際の冷蔵陳列棚の一角にパック詰めされたおか

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第27回文学フリマ東京 参加レポ

第27回文学フリマ東京 参加レポ

 2018年11月25日。

 東京流通センターにて開催されました第27回文学フリマ東京!私の所属するサークル Gotta-ninovels. もバッチリ出店させていただいておりました。

 まずはブースにお越しくださった皆様。本当に、本当にありがとうございます。

 今回も様々な形で、多くの方に私たちの本を手にして頂くことができました。

 自身の本を手に取って頂けるということは(端くれでしかな

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”Challenge”の中に”Change”を見る

”Challenge”の中に”Change”を見る

 「Challengeという綴りの中には、“Change”という単語が含まれている。挑戦の中にこそ、変化は存在する。挑戦しなければ、変化はない」

 

 私の所属するゼミの教授が、何かの折におっしゃっていた言葉です。

 まあもっとも、これ、教授自身の言ではなく教授が誰かから聞いただけの受け売り言葉らしいんですがね。HAHA。

 いや、それはともかく。確かに良い言葉ですよね。

 先週の記事で

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勇者ツケメンと僕らのキセキ

勇者ツケメンと僕らのキセキ

~合同誌「STARDUST TALES #1 」より抜粋~

 ゲーム終盤にふと訪れてみると、ただの片田舎だったはずの「始まりの村」から、何故だか知らないが魔王討伐に役立つ便利グッズがゴロゴロと転がり出てきたりする。退魔の剣に大賢者のローブ、大魔導士の杖、e.t.c…。

 実はこの村は、遥か昔に英雄が骨を埋めて云々、主人公は勇者の血を引いており云々・・・。

 ありがちな展開ではあるが、主人公を主

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未来視の経済学と、日替わりもやし定食

未来視の経済学と、日替わりもやし定食

 金がない。とにかくない。

 年末が近づくにつれ、夕食にもやしが並ぶ頻度がどんどんと増えていってる気がします。今日の日替わりもやし定食はコチュジャンを使ったピリ辛風炒め。やったね!

 日毎にこけてゆく頬、痩せ細る体躯。大学生というイキモノは、得てして金がないものなのです。

 んで。

 金が無くなってくると脳裏をよぎり始めるのが「節約」の二文字。金が無くなってから節約し始めても何の意味もない

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