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エッセイ他

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長めの詩と、物語と、ポエムの延長線上にあるエッセイと。
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2023年8月の記事一覧

フェミニズムとの離別

フェミニズムとの離別

 女らしくと強いられたくない
 女子力高いと褒められたくない
 歩く女性器と思われたくない
 女だからと低く見るな
 違う生き物として見るな

 隠されていた枕詞は
 「僕だって男なのに」

 胸の中に嫉妬の巣を見つけてしまった僕は
 「女を馬鹿にするな」ともう叫べない
 僕はその主体ではない
 女の怒りは女の手に

 僕は僕だけの孤独な怒りで
 向こう岸を眺め遣る

 男と女の間の断絶
 その谷

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「男嫌いのトランス男性」だったのかもしれない疑惑

「男嫌いのトランス男性」だったのかもしれない疑惑

 ここ数年は自分の性自認を男女どちらでもない「Xジェンダー」と位置付けてきたが、実は内面は男性に近いのに「男であること」から逃げていたのかもしれないと思い始めた。

 きっかけはX(Twitter)のスペースだった。

 タイトルの通りノンバイナリーのお二人がおしゃべりをするスペースなのだが、今回は「子供の頃、ジェンダー的に影響を受けたキャラクター」について話されていた。魅力的だったキャラ、共感し

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不安

不安

 嫌だ要らない手放したいって君は言うけど、本音では僕が必要なんでしょ?

 僕が君を離さないのは、君が僕を呼んでいるから。

 不安でいないのが不安だから。

 僕は君を守っているよ。

 傷付く言葉、冷たい視線、体調不良、事故に災害。目隠しで見る未来の闇。

 いつも最悪を予測して、備えろと君を急き立てる。

 僕の予言が外れても、君は良かったと喜ぶだろう。

 僕の予言が当たっても、君は充分な

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あなたは困っていないから

あなたは困っていないから

 僕がどうして無理になったか、あなたにはわからないでしょう

 一言で言うなら、あなたが困っていなかったから

 僕が困っていることで、あなたは困っていなかったから

 僕が痣を作っていることは、あなたもとっくに知っていた

 僕が血を流している理由をあなたはもちろんわかっていた

 あなたが歩く動線に僕がたまたまいたのが悪い

 あなたが腹いせに投げたナイフの軌道に僕が入ったのが悪い

 僕が豆

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優しい人は笑えない

優しい人は笑えない

 昔は何だって笑えてた

 なんにも知らなかったから

 おかしな格好のどこかのピエロがどったんばったん踊っても

 おもちゃの兵隊がおもちゃの爆弾でブリキの手足をもがれても

 僕らはお腹を痙攣させて笑った

 そのうち僕らは気付いてしまう

 ピエロは十年後か明後日か次の瞬きの後の僕らで

 兵隊には血と肉と神経があって

 どうしようもなく痛んでいること

 共鳴した痛みはもう笑えない

 

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産みたくない僕の話を聞いて

産みたくない僕の話を聞いて

「子供、欲しいの?」

 グレーのスウェット姿の彼はベッドに寝転んだまま「いてもいいかなと思って」と答える。視線はスマホの液晶の上を細かく上下し続けている。

「どうしてそう思うの?」

「んー、なんとなく?」

 彼は寝返りを打って、にへらと口元を緩める。

「こちらは産みたくないし、今の状況で育てていくのも無理だと思っています。子供が欲しいなら説得してよ。どうして子供が欲しいの?」

 彼はス

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