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優しい人は笑えない

 昔は何だって笑えてた

 なんにも知らなかったから

 おかしな格好のどこかのピエロがどったんばったん踊っても

 おもちゃの兵隊がおもちゃの爆弾でブリキの手足をもがれても

 僕らはお腹を痙攣させて笑った


 そのうち僕らは気付いてしまう

 ピエロは十年後か明後日か次の瞬きの後の僕らで

 兵隊には血と肉と神経があって

 どうしようもなく痛んでいること


 共鳴した痛みはもう笑えない

 誰かの鋭い笑い声が粗塩となって浅い傷口を刺す

 優しい人は笑えない

 いつも胸に苦い涙を

 顔に悲しみの微笑みを

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