手の倫理

21.02.26 【週末の立ち読み・続 #3】さわる、ふれる、把握する──ジャン・ブラン『手と精神』中村文郎訳(法政大学出版局)を読む

 手は人間らしい器官である──という命題は、別に手フェチでなくても、表現にこだわりを持つ人だったら、いつのまにか辿り着くことなのかもしれない。
 僕たちはよく、物事をよくわかったと思うとき、「手に取るように」わかると言い、状況ですら「把握する」ことができる。仕事をするときは「手を動かす」し、行動の速さを指して、「先手」だ「後手」だと言う。生活手段という意味の「活計(たつき)」ということばは、「手付

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「手の倫理」が見せてくれたのは、道徳と倫理の違い、そして、自分の中にある「無限性」

小学校の道徳の授業ほど、つまらないものはありませんでした。

タカシくんが、友達の家で花瓶を割ってしまう。その事実を隠そうとするのだけれど、失敗する。最終的には、その友達に正直に謝って仲直りをする。

こういったお話をクラス全員で朗読をした後に、先生が質問をします。タカシくんの良くなかったところはどこですか?

隠そうとしたことです。そうです。私たちはウソをついてはいけません。正直じゃなければいけ

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大波の中で見つけた強さ

わたしは今、一つの判断を人に委ねている。ある場所の一員として「選ばれる」か、「選ばれない」か。その判断を、他者に委ねているところである。

必要な情報を他者に渡し、その選抜のシーソーに乗った時から、わたしの心は大波のように揺れている。ざぶん、ざぶんと、選ばれたい思い・希望・期待と、選ばれなかった時の怖さと、それらがわたしの心を波打ちながら飲み込もうとする。

そんな扱えない大波を抱えながら、今日一

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コロナな1年であった上、私も自分の身体のことをずっと考える日々、そんな中で、”身体コンシャス”な本が気になった1年でした。ファイヤーラジオでも伊藤亜紗さんの「手の倫理」を取り上げて語るなど、身体感覚から導かれる認知、言葉などへの興味が尽きなかった2020。
私がまず頭木弘樹さんの「食べることと出すこと」(医学書院「シリーズケアをひらく」)で口火を切ると、気になる本についての話はほぼ「シリーズケアを

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官能的所作としての身体診察 ――伊藤亜沙 「手の倫理」感想文(その1かも)――

 「どもる体」に衝撃を受けて以来、伊藤亜沙さんのことは勝手に同志だと思っているのですが、彼女の最新作「手の倫理」の読書は、自分がずっと研究テーマにしていること ――すなわち臨床における決断―― にとても親和性の高いテーマだったので、すごくするするとその内容が入ってきて心地よい体験でした。そして、彼女が「美学者」であることを改めて理解しました。そうか、美学ってこういう学問なのだ、ということがとてもよ

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くま読書 手の倫理

伊藤亜紗さんが書かれた「手の倫理」。

soarの東畑さんと伊藤さんのイベントでお2人の話を聞いた時からこの本を読んでみたいなと思っていました。
私の日々の職業である作業療法士は、仕事中に手を使うことが多く、たくさんの人の体にも触れる機会が多いのですが「手の倫理」って?どういうことだろう?とタイトルから疑問に思っていました。

1.「ふれる」「さわる」

この本のはじまりというか、根幹にあるものは

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焚き火の映像が入っているとデータ量が大きすぎるという方向けに、音声のみのファイルをアップしております。音声のみの方はこちらをどうぞ。

7月以来、久々にお届けするファイヤーラジオとなりました。ご無沙汰しておりました。火鉢クラブ中村です。今回は、今話題の本「手の倫理」の著者・伊藤亜紗さんをお招きして、この本の内容を入り口に、コミュニケーションについていろんな角度から語りあいました。

伊藤さんは東京

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FIRERADIO ファイヤーラジオ#007 「著者と語る話題の本『手の倫理』ゲスト伊藤亜紗(「手の倫理」著者 東京工業大学未来の人類研究センター長)

7月以来、久々にお届けするファイヤーラジオとなりました。ご無沙汰しておりました。火鉢クラブ中村です。今回は、今話題の本「手の倫理」の著者・伊藤亜紗さんをお招きして、この本の内容を入り口に、コミュニケーションについていろんな角度から語りあいました。

伊藤さんは東京工業大学の未来の人類研究センターのセンター長で、中島岳志さんとは東工大の同僚。現在はこのセンターで「利他プロジェクト」を一緒に進めている
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「手の倫理」

伊藤亜紗さんの「手の倫理」を読んでいる。

「触れる」と「さわる」、「道徳」と「倫理」、「信頼」と「安心」のせめぎ合いなど、当たり前だけれど改めて考えるとハッとする話ばかりだ。

第3章の「信頼」でてくる西島さんの話は印象的だ。全盲の西島さんは、街で出会った人の「無責任な優しさ」を頼るうちに、特定のひとつの永続するような関係を信じられなくなったことがある、というのは興味深い。どちらも信じるというこ

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