祐川尚素

介護事業経営のコンサルタントです(1998年~) シナジーワーク・プランニングセンター…

祐川尚素

介護事業経営のコンサルタントです(1998年~) シナジーワーク・プランニングセンター代表取締役 http://www.synergy-work.co.jp/

マガジン

  • 介護事業経営コンサルタントの介護雑記

    介護事業経営コンサルタントを25年超やっておりますが、自分が入りたいと思う施設は本当に少ないです。施設の職員に聞いても自分の働いている施設に将来入りたいと答える職員はほとんどいないでしょう。  より善い介護施設を「如何に創るか」という課題に取り組む前に、日本の劣悪な介護施設の現状を分析し、その原因を構造的に把握することが先決問題だと思います。  介護施設の悲惨な現状の背景、原因等を構造的に把握するということは、マキャヴェリ の名言、「天国へ行く最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである。」に通じることだと思っています。

最近の記事

コロナ禍を振返る‐介護施設の課題 Ⅳ-1

 人は困難な時、非常時にこそ、その人柄がハッキリ見えてくるように思います。介護施設も同じでしょう。ここで、コロナ禍における介護施設のあり方を検証することによって、介護施設の課題を詳らかにできるのかもしれません。 1.面会制限・禁止は人権侵害 日本人の脆弱な人権意識に新型コロナのパンデミックがとどめを刺してしまったのではないかと、私は怖れています。パンデミック[1]という歴史的な災いにより、介護施設での人権軽視、人権無視という病が進行してしまったのではないでしょうか。

    • ブリコラージュとしての自炊と介護

       実に面白い!  國分功一郎(哲学者)さんと、三浦哲哉(表象文化論)さんとの対談です。  三浦哲哉さんの『自炊者になるための26週』(朝日出版社)を題材に、二人の哲学者、評論家による自炊にまつわる対談なのですが、とても刺激的、魅力的な対談になっています。 1.味わうこと 國分さんがアガンベンの次のような考え紹介していますが、これは、「そうだったのかぁ!なるほど」と思いました。  語源的に知が味わうことと密接に結びついていたというのには、とても納得できます。  「知」、「

      • 気候変動の影響で屋外労働者が年86万人死亡!これはヤバいでしょう!

         2024年4月22日に発表された、国際労働機関(ILO)の報告書『気候変動に伴う職場の安全と健康の確保』によると、世界の労働者の70%以上が気候変動に関連したリスクに晒されており、毎年数十万人が死亡しているとのことです。  その中でも、大気汚染によって、屋外労働者が年間約86万人が死亡しているといいます。  また、特に貧困地域の労働者が気候変動による影響による危険に晒されているとも指摘されています。   資本主義は気候変動による危機を、技術(新産業)や空間(グローバルサウ

        • 介護事業者突然の倒産で戸惑う利用者!

           福井県の「デイサービスいしずえ」(2018年4月開業、定員20名、宿泊定員9名:福井市和田2)が、突如、宿泊の利用者の引き取りを親族らに求め、行き場をなくした利用者や親族らに動揺が広がっているといいます。   どうやら、「デイサービスいしずえ」を運営する「サンサン」(鯖江市幸町2)は訪問介護事業と通所介護事情、居宅介護支援事業を営んでいるようですが、現在、破産手続きを申請しており、実質的に運営不可能になってきているようです。 求められる利用者救済制度の確立  政府が介

        コロナ禍を振返る‐介護施設の課題 Ⅳ-1

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        • 介護事業経営コンサルタントの介護雑記
          37本

        記事

          ZENウェルネス運営の「アシステッドリビング宮前」に行政処分

          1.行政処分を受けた施設 川崎市は介護付き有料老人ホーム「アシステッドリビング宮前」(定員80名・川崎市宮前区水沢2-8-60)に対して6か月間、新規利用者の受入停止及び介護報酬の請求上限を7割に制限する、指定の一部の効力停止処分を行ったとのことです。 報道発表資料によると、処分の理由は以下のとおりです。 (1) 不正請求 ア  看護・介護職員の員数が基準を満たしていなかった期間について、本来であれば令和3年 11月~令和4年2月(計4か月間)に算定すべき「看護・介護職

          ZENウェルネス運営の「アシステッドリビング宮前」に行政処分

          止まない虐待-滋賀県野洲市の特養-

           滋賀県野洲市の特別養護老人ホーム「野洲篠原すみれ園」(社会福祉法人「すみれ厚生会」運営)が虐待を隠蔽するなどで、滋賀県から新規利用者の受け入れを来月(5月)1日から1年間、停止する行政処分を受けたと言います。  介護事業所・生活関連情報検索(2024.02.13)によると、特別養護老人ホーム「野洲篠原すみれ園」はユニット型100床。介護職員は常勤29人、非常勤20人、常勤換算数42.6人、看護職員は常勤3人、非常勤3人、常勤換算数5.2人。  看護介護の職員配置は2.1

          止まない虐待-滋賀県野洲市の特養-

          日韓の外国人労働者の平均賃金

           韓国統計局の発表によると、韓国で働く外国人労働者の月平均賃金は、「200万~300万ウォン未満」が50.6%。続いて「300万ウォン以上」が35.8%を占めているといいます。  200万ウォンは224,658円、300万ウォンは336,987円です。ということは、韓国で働く外国人労働者の約85%超が22万円以上の賃金で35%が33万円以上ということです。  厚生労働省の2賃金構造基本統計調査によると日本で働く外国人労働者の平均賃金は2021年の一般労働者の外国人労働者の賃

          日韓の外国人労働者の平均賃金

          制服の功罪 介護施設の課題 Ⅲ-4

          1.制服の効能 多くの介護施設で職員はユニフォーム・制服(以下「制服」という。)を着用しています。制服とは、ある集団に属する人が着るように定められた服装で着用の義務があるものです。制服着用は規律の一種で、警察、消防等の公的または準公的な組織では制服を用いることが多いでしょう。  制服は職員にとっては、「私は仕事で介護しているのであって、プライベートで介護しているのではありませんよ。」と、介護職員と入居者の距離感を確保する効果があります。この距離感は、プロとして冷静に客観的

          制服の功罪 介護施設の課題 Ⅲ-4

          パノプティコン性 介護施設の課題 Ⅲ-3

          1.パノプティコン性 介護施設とは何かということを考えるとき、語るとき、パノプティコン(panopticon;一望監視施設)という概念を外すことはできません。  パノプティコンとは、イギリスの思想家ジェレミ・ベンサム(Jeremy Bentham)が考案した監視塔から監獄のすべての部分が見えるように造られた円形の監獄のことで、ミシェル・フーコー(Michel Foucault) が『監獄の誕生 監視と処罰』(田村俶訳、新潮社、1977年)において、近代管理システムの起源と

          パノプティコン性 介護施設の課題 Ⅲ-3

          介護施設の「全世界化」と「囲い込み」 介護施設の課題Ⅲ-2

          1.「全世界化」による抑圧性(1)施設度と全世界化  多くの人は、たとえ障害があっても、できるだけ自宅で暮らしたいと思っているでしょう。そして、もし介護施設に入居しなければならないとしても、「施設度」が高い介護施設より、「施設度」が低い介護施設の方が望ましいと思うことでしょう。   ※ 「施設度」というのは「施設っぽさ」のことです。  介護施設にもさまざまな施設があり、その「施設度」にも大きな差がありますが、岡本和彦(東洋大学教授:建築学者)さんは「施設度」が高じていく

          介護施設の「全世界化」と「囲い込み」 介護施設の課題Ⅲ-2

          そもそも介護施設とは何なのか 介護施設の課題Ⅲ-1

          1.介護施設における「人間・空間・時間」  そもそも、介護施設とは何なのでしょうか?  介護施設を介護施設たらしめている要因について考えてみたいと思います。   上野千鶴子(社会学者)さんは施設度についての岡本和彦(東洋大学教授、建築学者)さんの見解を紹介しています。  ここでいう施設度とは要するに、在宅介護とは違う、「施設っぽさ」ということですが、この施設度を決定するパラメータ(変数)は、人間、空間、時間の三つだとしています。  岡本和彦さんの施設度は、失見当識[1]

          そもそも介護施設とは何なのか 介護施設の課題Ⅲ-1

          「迷ってみようよ!」 介護施設の課題 Ⅱ-5

          1.「業務日課」システムとは 「業務日課」は介護施設の時間規則を中心としたオペレーティングシステムです。この「業務日課」というシステムに介護業務のマニュアルが付け加わり、効率的で強固な介護現場の最強システムになっているのです。  このシステムは介護施設における円滑な集団生活を維持するという公共の利益に沿うものと言えるかもしれません。  このシステムに則り、忠実に業務を遂行するのが組織の規律であり、組織内の道徳といえます。ですから、多くの職員はこの「業務日課」の遂行を至上命題

          「迷ってみようよ!」 介護施設の課題 Ⅱ-5

          環境危機とコモンと時間

           斎藤幸平さんの記事を紹介したと思います。  斎藤さんはパーマをかけた方がカッコよくて、より、若く見えますね。  髪の貧しい私としては羨ましいです。  斎藤幸平さんにはもっともっとメディアに出て、発言してほしいと思います。この記事も良かったです。  記事の冒頭を紹介します。  介護も当然、このコモンですよね。コモンとしての介護ということを、もっともっと広げていく必要があると、要介護状態に近づきつつある年になるとひしひしと感じます。  気候変動に関する日本の若者のある意

          環境危機とコモンと時間

          「迷いのない介護」が支える「業務日課」至上主義 介護施設の課題Ⅱ-4

          1.思考実験「迷いのない介護」 「業務日課」至上主義を支えているのは、「迷いのない介護」を行う者たちです。「業務日課」至上主義を遂行しようとすれば、介護をするときに、迷ったりしていてはダメなのです。  迷いのない介護職員は、介護する時に一々考えたりしませんし、自らの介護を疑わず、自分の介護を見直すこともしません。自らの介護を疑わないのですから、当然、自信を持つこともできます。  この「迷いのない介護」は、一方的な介護、スピード重視の効率的介護、倫理の欠如した介護へとつながっ

          「迷いのない介護」が支える「業務日課」至上主義 介護施設の課題Ⅱ-4

          異常気象と若者の異常認識 

           スリーエム ジャパンが気候変動などについて世界で実施した調査結果を発表しています。  この調査結果では、「気候変動への対応はどの程度重要ですか?」との問いに対し、「特に意見はない/気にしない」と回答した日本の若年層(18-34歳)は13%と、調査対象10カ国の中で唯一10%(グローバル平均5.1%)を超える結果となったといいます。  要するに、最も気候変動の影響を受けるだろう若者たちが気候変動に対する意識が低いということです。  この調査結果をどのように理解すべきなので

          異常気象と若者の異常認識 

          脱「業務日課」至上主義を目指して-介護施設の課題Ⅱ-3

          1.「業務日課」至上主義からの脱出(EXODUS)  「業務日課」至上主義からの脱出の条件、可能性を探ってみましょう。 (1)問われる経営者の姿勢 「業務日課」至上主義から脱するには、第一に理事長や施設長などの組織のトップの価値の貫徹姿勢がもっとも大切だと思います。当事者(入居者)の尊厳、人権を守り、当事者との相互行為である介護を行うためにはトップの意志が大切ですし、それを多くの職員たちと共有していくことが必須だと思うのです。  旧約聖書[1]の『出エジプト記』(EXOD

          脱「業務日課」至上主義を目指して-介護施設の課題Ⅱ-3