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視覚障害者と伴走者の握る「輪っか」が適度な距離感となり信頼をもたらす

先日、家の近くでマラソン大会が開かれました。
選手からパワーをもらいたくて沿道で観戦していたのですが、
そこで、視覚障害者のランナーに出会いました。

視覚障害者は伴走者と一緒でしたが、二人は輪っかになったロープを握っていました。
「どうして輪っかなのかなぁ?どうして手首を縛る紐じゃないのかな?」と疑問を感じました。だって、輪っかだと手を離してしまうリスクがあるではないですか。

その答えは、伊藤亜紗さんの「手の倫理」に書いてありました。


ロープで二人が繋がれている場合は、力がダイレクトに伝わりますよね。
そうすると、伴奏者が視覚障害者を引っ張るという形にならないとも限りません。
「伴走してあげる」「伴奏してもらう」という主従の関係ができるかもしれません。
でも、輪っかをもつ二人には、優劣は存在せず対等です。
依存せず、互いに自立しています。

互いの息づかいを輪っかを介して感じとり、相手が見ている映像を見ているのではないでしょうか。
相手に触れなくても、輪っかを通して相手の思いを感じることができるのかもしれません。
輪っかという緩みのある柔らかなものを介するからこそ、相手のことを思いやり、理解しようと努め、その結果、信頼することができるのではないでしょうか。

そうやって、視覚障害者と伴走者は輪っかを介して支え合い、一緒にゴールを目指しているのですね。


これは、私達の日常にも言えることではないでしょうか。
良い人間関係を築くには、「見えない輪っか」が必要なのでは?
それが、「程よい距離感」なのだと思います。


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