- 運営しているクリエイター
2021年9月の記事一覧
長月の残月に手を伸ばす
今日、朝目覚めたとき。
いつもと何かが違っていた。
布団のなかで現実と夢とを行き来しながら、もがくように動かす腕や足が何やら軽かった。
上半身を起こす勢いを使って布団を半分に折りたたみ、重力に従って再び身体をベッドに預ける。
ばふっという音と共に身体は沈み込む。
その姿勢のまま両足を上に向け、ばたつかせる。
奇怪な行動ではなく、もちろん理由がある。
そのあと、眠い頭でブリッジをした。
One scene of my youth 恋とか愛とかまだ分からないけど
思えば、彼はよく気がつく人だった。
また、彼は大雑把に見えて、実は真に細やかな人でもあった。
そして、そばにいる人に安心感を与え、欲しいときに欲しい言葉をくれる人でもあった。
そのくせ、私のためにならない優しさは、決して与えなかった。
溶けるほどの愛情を注ぎながらも時には、苦しい表情で突き放す。
時折見せるそんな大人びた表情が嫌いで、そして何よりも尊く感じた。
馴れ合いに走らない彼の心