同じ仕事の繰り返しがつまらないと思う前に ー成長し続けるための視点
「毎日同じ仕事の繰り返しでつまらない」「このままでは自分は成長できないのではないか?」と不安や不満を感じることがある人は多いでしょう。
確かに、毎日同じ業務ばかりしていると、まるで時間が止まっているかのように思えて、今日も明日も来年も5年後も同じ毎日がやってくるような気分になってしまうかもしれません。その結果、「もっと成長できる仕事がしたい」と転職を考えることもあるかもしれません。
けれど、少し立ち止まって考えてほしいなと思うことがあります。
新しい環境や仕事に飛び込めば一時的に刺激を感じるかもしれませんが、結局どんな仕事も一定のレベルに達すると繰り返しの仕事に行き着くもので、毎日毎日刺激があり、直接的に自分の成長に繋がる仕事ばかりではないのが現実です。
では、同じ職場で同じような仕事を続けている状況で自分が成長するにはどうすればいいのでしょうか。
大切なのは、同じ仕事の繰り返しの中であってもどうやって成長の機会を見つけるかという視点です。
今回は、私自身の経験を交えながら、繰り返しの仕事を成長の機会に変えるための視点とアプローチについてお伝えします。
なぜ「繰り返しの仕事」はつまらないと感じるのか?
まずは、なぜ「繰り返しの仕事」がつまらないと感じるのかについて考えてみると、与えられた業務をただ消化するだけだと新しい刺激や学びがないため、飽きてしまうからです。結果として「自分は成長していない」と感じることに繋がりやすいです。
でも、本当に成長は「新しい仕事」や「新しい環境」だけでしか得られないのでしょうか?
私はそうは思いません。同じ仕事をしていても、やり方次第で無限に成長できると考えています。大事なのは、仕事に対する視点を変え、積極的に成長の機会を自ら見つけることです。
安易な転職がもたらすリスク
気をつけたいのは、「今の仕事が自分を成長させてくれない」という理由で安易に転職を繰り返すことです。もちろん、転職が必要な場合もあります。職場環境が劣悪だったり、どうしても自分に合わない業務内容や人間関係であるなら、新しい場所を探すのも選択のひとつです。
けれど、「新しい環境なら自分を成長させてくれるはず」という期待だけで転職を重ねてしまうと、結局は同じことの繰り返しになります。先述のとおり、どんな仕事でも一定の段階を過ぎるとルーチンワーク化します。
その時にまた「つまらない」「成長できない」と感じてしまうのであれば、転職自体が本質的な解決策ではないことに気づくのです。
自分を成長させてくれる仕事を与えてくれる先を探し続けるだけでは、いつまで経っても自分の成長には繋がりません。繰り返しですが、大事なのは、どんな仕事であれ、自分から積極的に成長の機会を見つける姿勢だと思います。
私が同じ仕事の繰り返しの中でも成長を感じられた理由
私自身も、同じ仕事を何度も繰り返す環境で仕事をしてきました。けれどその中で「つまらない」「成長できない」と感じたことはほとんどありませんでした。それは、常に「どうすればもっと良くできるか?」と自問しながら仕事に取り組んできたからです。
会社員時代は、長いこと司法書士の業界に身を置いていましたが、士業の仕事の多くは定型業務です。依頼内容を伺って、手続きのための書類を準備し、役所に提出する。はっきり言って大半の仕事はこれの繰り返しです。
家の名義を変更したい、会社を設立したい、相続手続きをしたい、破産したい、債権回収したい、依頼内容はさまざまであっても多くの手続きのやり方を熟知してれば別に難しい仕事をしている訳ではないです。
ここ数年は相続などの相談ではコンサルティング要素も必要で、非定型の仕事も増えつつあるかもしれませんが、それでも依頼者が遺言作りたいのであればリスクを想定せずにその希望通りに作るだけの人もまだまだ多いのが実状です。
定型業務なら、いかに早く正確に効率よくさばき、キャリアの浅い人が担当しても同じ成果が必ず出るにはどうすればいいのか。
かつ、お客様の満足度を高めるにはどんな対応をすべきか。また、案件の進捗管理はじめ、受注内容にどんな傾向があるのか、どんな属性のお客様が多いのか、リピーターになってもらうためにはどうすればいいのか。
考えてみれば、日常している業務の改善の余地などいくらでもありますし、マーケティング的な視点に立てばさらに検討すべきことも多いです。
このように、繰り返しの仕事の中にも自分なりの工夫や改善を加えることで、新たな学びや成長を得ることができたのです。
そういう経験の積み重ねが結果として士業事務所のコンサルティングを行うスキルにまで昇華できたと思っています。
仕事への視点を変える4つのポイント
では、繰り返しの仕事の中で成長するためには、どのような視点を持てばいいのでしょうか?ここでは、仕事を効率、質、自動化、標準化、形式知化の観点から見つめ直すポイントをご紹介します。
1. 効率の向上
まずは、効率の向上を常に意識することです。毎日同じ仕事をしていると、そのプロセスに無駄な部分が見えてくることがあります。そこで、「この作業をもっと早く終わらせる方法はないか?」「無駄な手順はないか?」といった効率化の視点で仕事を見直します。
小さな改善の積み重ねが、大きな時間の節約につながり、空いた時間を別の成長のための活動に使うことができます。
2. 質の向上
次に、仕事の質を向上させることを考えます。例えば、同じ報告書を作成するにしても、「どうすればもっとわかりやすく、効果的に伝えられるか?」という視点で工夫を重ねてみます。
報告書のレイアウトを改善したり、データの見せ方を工夫したりすることで、仕事の質を高めることができます。質の向上は自分の評価にもつながり、仕事に対するモチベーションを維持するのにも役立ちます。
3. 自動化と標準化
同じ作業を繰り返す中で、「この作業は自動化できないか?」と考えることも重要です。自動化ツールやスクリプトを使うことで、単純作業を効率化し、よりクリエイティブな業務に時間を割くことができます。
また、業務を標準化することで、自分以外の人にも同じクオリティで作業を任せることができ、チーム全体の生産性向上に寄与します。これもまた、組織の中での自分の価値を高めることにつながります。
4. 形式知化
最後に、形式知化です。自分が保有している経験やノウハウといった暗黙知を文書やマニュアルとしてまとめることで、他の人とも共有できるようにします。
これにより、自分の仕事の成果が個人のものではなく組織全体の財産となります。自分の知識を他人と共有することで、自分自身も新たなフィードバックを得てさらに成長することができます。
具体的なアプローチ/仕事の繰り返しを成長に変える
これらの視点を持って仕事に取り組むと、同じ業務の中でもさまざまな成長の機会が見えてきます。では、実際にどのようにアプローチすれば良いのでしょうか?
●日々の業務に改善の余地を見つける
毎日の仕事を振り返り、「この部分を改善できるのでは?」と考えてみましょう。小さな改善でも積み重ねることで、大きな変化となります。
●新しい方法を試す
同じ作業でも、毎回少しずつ違うアプローチを試してみることで、新しい発見が生まれます。
●他者のフィードバックを取り入れる
自分のやり方に固執せず、他の人の意見やフィードバックを積極的に取り入れることで、新たな視点が得られます。
●成果を見える化する
自分の成長を実感するために、改善したポイントや達成した成果を記録しておくと良いでしょう。これは自己評価の向上にもつながります。
終わりに
「仕事がつまらない」「成長できない」と感じるのは誰にでもあることかもしれません。しかし、その感じ方を変えることができれば、同じ仕事の中でも自分を成長させる無限のチャンスが広がっています。
安易な転職ではなく、まずは今の仕事の中で成長の機会を見つけること。それが、長期的なキャリアの充実につながります。凡を極めて非凡になるという言葉もありますが、誰もが当たり前にこなす仕事を誰よりも質、量ともにこなしていると「同じ仕事をしているのに彼だけは質もスピードもある。」そういう評価を受け続けたら経営側も同じポジションに置いておくわけがありません。
そうした循環に乗ると、次第にリーダーシップやマネジメントに関心を持ち成果を出せば、もっと上流の仕事、経営企画や人事といったポジションに就く可能性も開けます。そして、給与などの待遇面も良くなると思います。
もちろん、専門性を追求したいというタイプの方もいるでしょう。そうであっても質、量ともに十分な成果を出すための成長への基本的な姿勢は同じです。
「青は藍より出でて藍より青し」という言葉があります。これは、本来は弟子や後輩が師匠や先輩よりも優れた成果を上げるといった意味ですが、意訳すると、同じような仕事をしていても、本当に優れた人は本来の仕事以上の価値を出すことができると解釈できるのではないかと思います。
石の上にも3年とか漫然と仕事と向き合うのは個人的にも勧めませんが、新しいもの、やりたいこと、利益を感じるもの以外にも自分を成長させてくれることは目の前にいくらでもあるということを頭の隅に置いておくとよいかなと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。