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【読書感想文】梶井基次郎「檸檬」

こんばんは〜
毎週水曜日は読書感想文!読書家、小栗義樹です!

さて本日も、僕が過去に読んだ本を題材に、読書感想文を書いていこうと思います!

この読書感想文を通して、「もう一度読もうかな!」「読んでみようかな!」と思ってもらえれば嬉しいです。

前回・前々回と、芥川龍之介の作品を取り上げてきたのですが、いやぁ、どちらもすごく好評で、本当に嬉しい限りです。

もう一回読みました!という声を沢山頂くことができ、それと同時に多くの方のご意見・ご感想を聞くことで、僕自身の知見も広がったように思います。

色々な効果、様々な発見を前に、やってよかったなぁと思っています!引き続き、そんな実りのある読書感想文にしていきますので、どうぞよろしくお願いします!

さて本日ですが、梶井基次郎の代表作「檸檬」を読んだ感想を述べていきます。明治の終わりから昭和の初めまでを生きた作家、梶井基次郎。30代で亡くなってしまったため作品数はそんなに多くないのですが、詩的で情緒あふれる文章を書き上げる作家です。

そんな梶井基次郎の短編「檸檬」は、京都に下宿していた時の著者の、鬱屈とした気持ち、檸檬を見つけた時の感動、その檸檬を洋書店の書棚に置き、鮮やかな檸檬爆弾を仕掛け逃走するという空想が描かれています。

この方、肺結核を患っていて、文壇に認められた直後に無くなってしまうんです。ずっと病に苦しんでいた為か、書かれる作品の登場人物はどこか病弱です。病に苦しみ、見える景色の捉え方が恐怖やある種の憎悪を感じさせます。ただ、表現がとても詩的なので、そういった苦しみやもがき見たいなものを感じさせなかったりするようにも思います。これがとても不思議で、このバランスが、例えようのない魅力を与えてくれるのです。

檸檬は迷いが良いです。すごく言いようのない不安を抱え、それを払しょくするために芸術に触れるも、正体が分からないから払しょくできない。始まりはそういう内向的な葛藤を、美しい文章で表現していると思います。

檸檬を読むと、文字デッサンという言葉が浮かびます。情景や心情を描写するタッチが鮮明で、いつ読んでも絵が頭に描かれます。それは淡い色使いの絵で、とても優しいイメージです。不思議だなと思います。主人公は、ずっといたたまれない気持ちに脅かされているのに、読んでいる僕は優しい絵を思い描くのですから。内容的にはほっこりしていないはずなのに、とてもほっこりした気持ちにしてくれるのです。

この作品、噛めば噛むほど味がします。1度読んだとき、難解の表現に苦戦しました。しかし、2度目、3度目と読み返すと、どんどん絵が精密になっていって、細部まではっきり見えるようになります。感情のレイヤー構造とでもいうのでしょうか、何度でも読み返せる作品です。

僕は今物語を書いていますが、檸檬は真似できないなぁと思っています。マネしたいのに、マネできません。それは多分、感情の落差を表現できないからで、目に映るものをこれほどまでにイメージとして租借し、それを文字に起こすことが出来ないからだと思っています。だからこそ、檸檬を読んだときには羨ましいと感じました。

音楽をやり、作詞をする僕からすると、これほどまでに言葉を巧みにあやつりたいものです。

この作品には、梶井基次郎の美意識が表れているように思います。物語はなんてことない、日常を切り取っただけなのですが、その随所に、彼が感じる美が散りばめられています。作者の趣向を把握できる作品だと思うのです。

本来は、前回の羅生門のように、ストーリーに対して思う事を書きたいと考えているのですが、この作品は、ストーリーを語るだけ野暮だと思っています。語るべきは雰囲気や印象でしょう。そこにこそ、檸檬のすばらしさがあり、檸檬の物語性があるのだと思いたいのです。

爆発を空想するが、実際に爆発を思い描かないという、彼の思う美しさのすべてが詰まった作品だと思います。

僕は、冬の日や城のある町にてという作品も好きで、そのすべてがとにかく情緒に満ちています。角川文庫版の檸檬を読むと、すべてが収録されています。美しくて麗しい、ニューウェーブの世界に浸りたい方がいれば、ぜひ読んでみてほしいです!

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