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【楽曲感想文】財津和夫「サボテンの花」

こんばんは!
ドアにカギをおろした時に涙がこぼれるという表現に胸を打たれています。小栗義樹です。

本日は、僕が好きな曲を聴いて感想を述べる【楽曲感想文】を投稿させて頂きます。

本日は題材のリクエストにお応えさせて頂きます。
財津和夫「サボテンの花」
です。

まずこの曲がリクエストされたのが本当に嬉しかったです。いつか感想を述べたいなと思っていました。

もともとはチューリップというバンドの8枚目のシングルとして発表され、メンバーの財津和夫さんがセルフカバーしています。多分ですが、僕の世代の人間でサボテンの花を知っている人は、こちらのセルフカバーのバージョンで聴いている人が多いのではないかなと思います。

オムニバスアルバムが企画されると、ほぼ必ず収録されると言っても過言ではない名曲で、濃いメッセージと鮮明に浮かんでくる切ない情景が特徴の1曲です。

有名な話ですが「岬めぐり」という山本コウタローとウィークエンドの曲を参考に、アンサーソングのつもりで作詞されています。こちらもすごく良い曲なので聴いてみてほしいです。

この曲を聴くと、コントラストが強めな六畳一間の部屋にたたずむ寂しそうな男性を思い浮かべます。不思議と恋人だった女性のイメージは全く湧きません。

あくまでも浮かんでくるのは男性の愚かさと虚無感です。

男性がもともと持っている愚かさと、その果てに待っている避けて通る事のできない虚無感みたいなものが、説得力のある言葉・言い回しで延々と語られ続けます。財津和夫さんの歌声が、優しくて語り掛ける感じだからこそ、聴いていると余計に惨めで、尊い気持ちになってきます。

涙が零れることを表現する描写が、特にたまらないです。

ドアにかぎをおろした時、なぜか涙がこぼれた

この歌詞を聴いたとき、鳥肌が立ちました。

すごくリアルですよね。ドアを閉めたでも、扉を閉じたでもなく、ドアを閉めてカギをおろした時に涙が出る。鍵をしめたではなく、おろしたという表現がより大きな説得力をもたらしています。だからこそ、なぜか涙がこぼれたの「なぜか」という自然さが活きてくるわけです。

どこまでも自然な流れの中で、人が当たり前にとる行動を歌にしています。

そこには思考なんてなく、生きることで精一杯だという状態があって、それがこの失恋の重みを物語っているわけです。こんなに手際よく、きれいな対比で状況を説明できている唄はなかなかありません。言葉を操る技と、情景を切り取る能力がずば抜けていると思います。

そして、この曲は最後に自己完結を迎えます。それも前向きな自己完結です。僕は、これがこの曲を最高だと思わせる最後の一手であるように思います。

主人公の彼からすると、些細な出来事で大切な人を失ったわけです。ことごとく現実味を帯びた鮮明な描写であることから、相当傷つき、希望を見いだせない時間を過ごしたのだと思います。

ただ、主人公は最後にあくまで自然な流れの中で、冬が終わるまでに何かを見つけて生きようという決意をします。些細な出来事で世界が壊れ、些細な日常を無機質に過ごし、些細なきっかけで前を向く。人は、常に何かを決しているのではなく、自然な時間の中で前を向くように出来ています。この短い時間のなかで、こうした人間の常をテンポよくまとめたこの曲が、流行らないわけがなんですね。

これ、誰もが一度は経験したことのある当たり前の出来事なんです。

だからこそ、この先どれだけ人が短絡的に生きられるようになったとしても、サボテンの花のような普遍的な曲は、必ず誰かの心の中に残る印象をもたらし続けることになるのだと思います。

まだ聴いたことがない、特に10代~20代の方にぜひ聴いてもらいたいなと思います。すごく良い曲ですし、語り継がれるべき音楽だなと思いますから。

という事で、本日はこの辺で失礼いたします。
ここまで読んで下さりありがとうございました。
また明日の記事でお会いしましょう!


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