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写真とカメラを大仰に語る

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写真とカメラについて、思ったことを書き連ねたものです。小さなことを大袈裟に。読んでために…ならないコラム集です。
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#スナップ写真

期限切れのフィルムで。

期限切れのフィルムで。

家の片隅で眠っていたフィルムが一本あったので、ライカM3に詰めて撮影してみた。
学生の頃、寮に一年半ほど住んでいたのだけれど、共用の冷蔵庫にたくさんフィルムが入れられていたのを見つける。寮の先輩で、そんなに知っているわけではないけれど同じ大学の違う学部にいた方のものだった。彼は大学新聞の学生記者をやってらして、そのためのフィルムだった。

 あのコンクリート製の湿度の高い寮で保管するには冷蔵庫が良

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フォトヨドバシの東京感光が良かった

フォトヨドバシの東京感光が良かった

 自分が写真を趣味だ、としたのは働き始めて2年後のこと、もうすぐ20年となる。それから相変わらず下手だが、ネットでいつもうまいなあ、いいなあと思っているサイトがある。それがカメラ好きなら皆が知っているあのフォトヨドバシだ。
 新発売されたカメラのレビューをするサイトだが、それだけでなく、いろんなコンテンツをあげてくれるので、撮影の参考にもなる。そして、「このカメラを買えばこんなふうに上手く撮れる」

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半径500メートルの撮影旅

半径500メートルの撮影旅

 撮影のために遠くへ行くことはあまりない。それこそ日帰りできるような県内のスポットを撮りにいくなんてこともしない。わりと昔からそうで、時間に自由のきいた独身のころでも、カメラを持って行く場所は限られていた。今思えばちょっともったいなかった。

 万事がそんな感じで、日常の生活圏を飛び出すことを面倒に思うきらいがある。県北にあるネモフィラと太平洋の景色を撮りに、とか、巨大な人形と練り歩く祭を撮りにと

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都市の光を撮りたい

都市の光を撮りたい

 学生のころは練馬に住んでいて、そんなに派手に遊ぶほうでもなく、部活仲間と朝方まで飲むというのが関の山だったから、例えば新宿とか池袋とか、当然渋谷なんかで飲んだり踊ったりなんて(踊れないし)経験は皆無だ。
 いや、皆無ではないけれど、ごく稀のことだった。踊ってはいない。
 それに自分の住む駅にはそれなりに良いお店はあったし、リーズナブルだったから、生活も遊興もその駅界隈で済んだ。貧乏学生だったし、

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冬はスナップ日和

冬はスナップ日和

 冬こそスナップ撮影に適した時期だと思う。正確に言えば秋から春にかけて。
 この時期なら都市部、山野林、海、どこでも絵になる。絵にしやすい。そんな気がする。

これからの季節がいい理由日差しの角度

 まずはこれに尽きる。斜めから降り注ぐ光は、あらゆるものを美しく見せる。これを撮りたいという意欲で出かける撮影ではないスナップは、光と陰を追いかけるという指針をより実行させやすいから、これからの季節は

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私の半径500メートルを撮り続けるために。

私の半径500メートルを撮り続けるために。

 繰り返し書いてきていることですが、僕の撮影はそのほとんどが休日の、朝方です。それ以外は時間が取れない。冬の今だと、6時過ぎから。夏場ならもう少し早めに。

 で、もちろん、それを数年繰り返していれば飽きてくるわけです。また同じ場所にシャッターを切る。だからほとんど何も撮らずに帰宅ということも。散歩ですから、一人になる時間を得ただけでも良い気分転換になるのでそれはそれで構いませんが、やはりシャッタ

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都市形成とスナップ

都市形成とスナップ

 オーストラリア、ジーロングという街に仕事で滞在していたときに、近くの大都市、メルボルンへ行くことがあった。
 バスに揺られて1時間、ジーロングの街中を抜けると、あとはもう道は一本で、その左右は、ここは広大なサファリパークか?と思わせるほどの草原と、ポツポツとした木々。そこに野生らしきカンガルーなんかがたくさん佇んでいるものだから、見ていて飽きない。国土がでかい、ということがどういうことか、という

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写真が眼差すもの。

写真が眼差すもの。

 月を見て、小さな子どもが言った。
 ほら、お月さまが笑ってるね。

 男がため息混じりに呟く。
 今日の月は泣いてんなあ。

 和歌の世界や詩の世界で行われる擬人法によって、泣いたり笑ったりする、それら人ではないものの感情は、その実、その言葉を口にした者の感情に他ならない。自身の気持ちを、自分ではない何かに託すのである。

 写真は、撮る対象がなければ成立しない表現だから、自身の外へ目を向ける必

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ライカを持って旅に出たい…のだけれど。

ライカを持って旅に出たい…のだけれど。

 

旅に出たい欲求というのは定期的に沸々とわいてきて、その度にあそこに行ってみたい、ここもいいかもしれないと妄想だけが膨らむが、実は純粋に撮影のための旅に出たということは一度もなくて、それは例えば家族旅行だとか、仕事とか、学生時代の仲間に会うためとか、そんなある種の「きちんとした理由」に乗っかって、カメラを持ってそのイベントの隙間に自分の撮影時間を設ける、というのが主であるから、それこそ写真を始

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ノーファインダーと7歩分の歩幅。

ノーファインダーと7歩分の歩幅。

 ライカの良さを語る動画やブログでは、その良さの一つに、ノーファインダーで写真を撮るのに向いている、ということを挙げられる場合が多い。
 レンズについている距離指標を頼りに撮影すれば、フォーカスにかかる時間は実質ゼロ。スナップに良いというような話になる。

 確かにそんな撮影方法もあるわけで、自分もやってみたりするのだけれど、ちょっと待てよ、それは別にライカでなくてもできるんじゃないっけ?と思った

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