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冬はスナップ日和

 冬こそスナップ撮影に適した時期だと思う。正確に言えば秋から春にかけて。
 この時期なら都市部、山野林、海、どこでも絵になる。絵にしやすい。そんな気がする。

これからの季節がいい理由

日差しの角度

 まずはこれに尽きる。斜めから降り注ぐ光は、あらゆるものを美しく見せる。これを撮りたいという意欲で出かける撮影ではないスナップは、光と陰を追いかけるという指針をより実行させやすいから、これからの季節は光を味わうのに適した時期だと言える。

東京の光

 お見せできないのが残念なくらいなのだが、冬、東京で、浅草からお台場へ向かう船に乗って川を下った。午後3時くらいだったろうか、とにかく光が良くて、船の上で撮った記念写真たちの写りはまさに近年稀に見る美しさだった。東京という遠くを見るのに苦労する場所で、隅田川の抜けの良いロケーションというのもあったのだろうが、とにかくいい。
 あるいは武蔵の森の、枯れ葉が落ちる中の日差しも良かった。これも午後3時過ぎだったろうか、赤色に変わりつつある光が木々や建物に反射しているのを見るのは、それだけで良い気分になった。杉林の多い九州は宮崎の人間からみて、関東の落葉樹の様は、東京の美点だと常に思っている。
 東京の冬は、まだ昼間の感覚でいるはずの午後三時くらいには夕刻が始まっている。それは、あらゆる被写体を美しく照らし出す。
 数年前までこの時期に出張があったが、あれがもう一度復帰するといいのに、と悔やまれてならない。

朝ゆっくり起きられる。

 夜討ち朝駆け当たり前の写真の世界だが、朝はゆっくりとやってくるので、その分遅く起きられる。この時期、こちらの日の出は6時半くらい。その分、ゆっくりと起きられるってものだ。

朝の顔つきが違う。

 寒くなると、湿度の関係で水辺に霧が立ちやすい。渡鳥なんかもいる。空気も澄んでいる日が多くなるので遠くの山もきれいに見える。だから視野が広く遠くなったり、近く狭くなったりする。また、個人的には、太陽が昇ってきたときの、光が川面に反射したときのあの輝き方は、日常の中で見ることのできる絶景だと思う。水鳥たちも、日の出と共に鳴き始めた。あれはなかなかの光景だった。

夜の光が暖かく感じられる。

イルミネーションもだが、普通の光も温かみがあっていい。寒暖差で窓辺がしっとりと濡れている。そういうのもいい。

人がさまざまなスタイルをしている。

 ファッションに疎い自分だが、他人の服装を見て、かっこいいとかかわいいとか思うのは好きだ。特に秋から春にかけては人それぞれのファッションの傾向がよりはっきり出てくると思う。スナップで人が入り込んでいるのも、冬の方が楽しいし、ポートレートは冬の方が楽しそうだ。
 冬の色のあまりない格好が好きだが、春先になって色鮮やかな服装になるのもいい。

陰が絵になる。

いつもの街でも、影が伸びるこの季節は格別な撮影場所になる。まだ自分の街で、影がいい感じになっているところをあまり見つけられていない。だから影を探してスナップするのは楽しい。

寒いのは暑いのよりマシ

寒いのであれば着込めばいいし、歩けばいいのだ。暑いとスナップ程度の運動でさえ危険である。特に昨今の夏はひどい。

昨年の冬はけっこう自転車でも走った。走りながら撮った。朝の話だ。すごい寒いが、着込めば大丈夫だし、むしろ汗をかくのでその対応に悩んだりするくらいだった。

個人的に爛漫より枯れ枝の景色が好き。

 日本は基本色がない。茶色いし、みどりだし、街中も灰色で、だから看板の明るい色合いは、街中のバランスを下卑た配色のキャンバスにしてしまう。だが、それが良かったりする。自然はその色のないなかで微妙なグラデーションをなしているし、そこに美しさを見出せる。
 そんななかで冬の枯れた景色は、さらに色味を失って、だからそこにある風景の微かな色のつながりを見つける面白さがあるように思う。

街中を歩くのが楽しい

夏でもそれはそうなのだけれど、冬は何故か街中を歩くのがより楽しくなる。
冷えた空気の中を歩くのが心地いいし、イルミネーションも、お店の明かりもあたたかい。
そんななかを撮って、時々休憩して、また撮るという行為そのものが、どことなく自分の性に合って好きなようだ。朝方だって、光の差し込む中を歩くのはいいもの。冬こそフォトウォークが捗るってものだ。

冬は静かである。

空気が澄んでいるからか、蝉が鳴かないからか、冬の田舎はとても静かだ。そこに鳥の鳴き声が聞こえてきたりするのに耳を澄ます時間がいい。これは写真を撮ることからは離れた話しだけれど、歩きたくなる理由としてはけっこう大きなものになる。

歩こうよ、これからの季節。

 非常に個人的感想でしかないが、ああ、そうだよね、と思ってもらえる項目があったら幸いである。ここ最近、気候があまりにハッキリし過ぎていて、夏も冬も外に出るのが億劫ではあるが、冬だけでなく夏だって、むしろ気候がはっきりしたときの方が面白いものが撮れそうだと思う。だから、最も寒い時間帯、つまり朝とか、そんな時に出歩いて撮影するのは、冬の最も冬らしい景色を撮りにいくのと同じことになるのではなかろうか。
 もちろん、雪国では危険を伴うことにもなるだろうから、そこは十分気をつけて。寒いから外に出たくないなあという気持ちをぐっとおさえて、外を出歩いてみたら、きっと面白い光景に出会える機会も増えるはずだ。

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