#文藝春秋
桐野夏生『もっと悪い妻』(毎日読書メモ(522))
桐野夏生が昨年6月に刊行した『もっと悪い妻』(文藝春秋)を読む。表紙こわ! 人形の仮面が宙に浮かび、それを抑える指先の下に続く身体には首から上がない...。cover photograph by Miguel Vallinas Prietoとある。検索したら、やはり首のない体の上に、色んな頭部がのった写真がいっぱい出てきた...。
桐野夏生、基本長編作家の印象が強いが、今回は短編集。「悪い妻」が「
鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(毎日読書メモ(501))
前から気になっていた、鈴木忠平『嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか』(文藝春秋)を読んでみた。
読んではみた。しかし、中日ドラゴンズというチームについては殆ど何も知らない。名古屋ドームに行くのは、名古屋ウィメンズマラソンの時だけだ。星野仙一や落合博満が監督をやっていたことは知っているが、他の監督も、選手も、殆ど知らない。
読んで面白いのか?
と、思ったが、面白かった。Interestin
滝口悠生『死んでいない者』(毎日読書メモ(494))
滝口悠生が『死んでいない者』(文藝春秋、のち文春文庫)で芥川賞をとったのが2016年下期、本谷有希子『異類婚姻譚』と同時で、ちなみに1期前が又吉直樹『火花』と羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』だった。
最近あんまりきちんと芥川賞受賞作をフォローしていなくて、この頃の受賞作、あまり読んでなかった。評判の良かった『長い一日』(講談社)を読んだのをきっかけに、近作『水平線』(新潮社)も読み、満を持し
市川沙央『ハンチバック』(毎日読書メモ(493))
第169回(2023年上期)芥川賞の発表まであと1週間ちょっと。乗代雄介『それは誠』(文藝春秋)に既に心を持っていかれているわたしだが(ここで絶賛)、注目度という意味では候補作の中でも屈指(いや、候補が5作なんだから指足りるけど)の市川沙央『ハンチバック』(文藝春秋)も読んでみた。単行本もすでに店頭に並んでいるが、この作品は第128回文學界新人賞受賞作なので、「文學界」2023年5月号(『それは誠
もっとみる乗代雄介『それは誠』、絶対お薦め(毎日読書メモ(491))
先月、新聞に出ている文芸誌の広告を眺めていて、これは絶対読まねばならぬ、と直感に導かれ、「文學界」2023年6月号購入。乗代雄介『それは誠』、表紙には「4人の若者のかけがえのない生の輝きをとらえた、著者の最高傑作!」と書かれている。えー、なんと陳腐な!
それがまとめか? なんか違うぞ。そもそも4人の若者じゃないと思うし(もっと沢山だろ)、クローズアップするならこれは終始、誠ひとりの物語だし(だっ
山本文緒『ばにらさま』(毎日読書メモ(374))
遂に、山本文緒最後の作品集となる『ばにらさま』(文藝春秋)を読んでしまった。書店の店頭で見かける、強烈な少女像(タカノ綾)の表紙の印象が強かったが、本を開いて見ると、中表紙は、この図柄、『プラナリア』の装丁と一緒だ...と懐かしくなる(装丁・大久保明子)。
もてない青年にすり寄るようにすがってきた、真っ白な少女の本音と打算を描く「ばにらさま」、倹約生活を送る専業主婦の何故?、を最後にがらっと明か
毎日読書メモ(210)新井満の思い出的な
昨年12月に、アーティゾン美術館へ「M式「海の幸」ー森村泰昌 ワタシガタリの神話」展を見に行ったとき(感想ここ)、あわせて見た常設展示の中に「挿絵本にみる20世紀フランスとワイン」という特集展示があり、ユトリロやデュフィなどの小品や出版物などが展示されていてとても興味深かった。その中に、トップ画像にあげたラウル・デュフィの「開かれた窓の静物」という水彩画があり、一目見て、はっとする。これは、新井満
もっとみる毎日読書メモ(159)『アフリカ人学長、京都修行中』(ウスビ・サコ)
『アフリカ出身サコ学長、日本を語る』(朝日新聞出版)読んだら面白かった、京都精華大学のウスビ・サコ学長の本を、もう1冊読んでみた。『アフリカ人学長、京都修行中』(文藝春秋)。前作は、サコさんが、どういうきっかけで日本にやってきて、京都の学校で地歩を固めていったか、サコさんから見て日本人はどういう風に見えるか、といったことが書かれているが、今回は主に、結果的に自分の生涯の半分以上住むことになった京都
もっとみる毎日読書メモ(152)栗田有起『ハミザベス』、古川日出男『ベルカ、吠えないのか?』
読みかけの本を読み終えられなかったので、過去日記から読書日記を拾う。この間触れたばかりの村上春樹Remixと、あんまり間があかずに読んでいたのか。
栗田有起『ハミザベス』(集英社)読了。中編2本、いずれも、特殊な境遇にありながら、その特殊さを特殊さとしてアピールすることのない、淡白な少女の物語、という感じ。表題作で母の更年期を扱っているのが、逆にわたし的には卑近であったが、もう一声欲しい感じだっ