見出し画像

Guitar1004

Savage Gardenの2ndアルバム"Affirmation"に向き合ってみようシリーズ?
今回の課題曲は"Two beds and a coffee machine"。これを何故タイトル避けしていたかというと、どう考えても生活の香りがするから(ロマンスですら鳥肌なのに)。
私は「」や「家庭」というものの気配に戦慄する。新しくできた庁の名前なんて、悪夢以外の何物でもない。勝手にあるべき姿の幻想を描いてそれを強制する既得権益者の既得権益者による既得権益者のための集団。や家庭、家族、絆、連帯が大切?そんなの大切だと思える環境にいた者、もしくはそう思い込まざるを得ない者の神話でしかない。困難を抱え支援を必要としている当事者ではなく、自らの利権とイデオロギーのために動く政策。ちっとも「子ども」の方向を向いていない。埼玉の例の条例がいい例だ。

話を戻すと、コーヒーマシンは一人暮らしでも持っている可能性はあるけど、ベッド2つは独りの世界ではまずあり得ない。二人かそれ以上(子ども)のいる生活感、寝室が浮かび上がるタイトル。当時これを聴いていたらダレンの(はじめの、女性との)結婚生活を想像したんだろうけど、実際の内容はかなり悲しい。どう思っただろうな。

主人公は子どもを抱えた母親。夫はDVをおそらく繰り返している(ダレンは暴れる側にはならないはずだから、これは彼&女性パートナーの話ではない)。この日も夜中に男は暴れ回っていて彼女は起こされ、そして早朝、部屋の残骸を片付けながら家を出る決意をする。子どもを車に乗せ、自分や子どもの行く末を案じながら運転を続ける。
興味深いのは、そもそも書き置きを残して出ているところ。本当にさよならする気ならそうはならないだろう。そして、頭の中は次の安宿を探しながらも理想の家庭生活に溢れている。いつかきっとそんな日が訪れたら、訪れるかもしれないと、望みを捨てきれない。だから本気で断ち切れないのだ。かくして彼女は、買わなければならないもの、自らの居場所、生活を思い出し、「に戻らなければ」となる。全く同じように不安を抱えたまま。
きっとそんなことが繰り返されてきて、この先も繰り返されるのだろう。私にはそこがわからない。大人なのだから、自らを脅かす存在とわざわざ過ごさなければいけない理由は無い。だから私は(大人になる前にだけど)脱出し、その後はずっと独りで過ごしてきた。
皆、独りがこわいのだろうか?私は危害を加えてくる人間が周りにいるほうがよっぽどこわい。常にリスクを突きつけられ続けるなんて地獄でしかない。メリットも皆無。デメリットしか無い。
愛着があるからだろうか?勿論、互いに尊重し合って、納得のいく関係性が継続できるのであれば、そうできたほうが良いだろう。私だって、危害を加えてこない、互いに尊重し合える方々にはそれなりに愛着を感じていたし、実際仲良くしてもいた。でも、明らかに歪んでいるのに、それでも一緒にいようとする感情は出てこない。即逃げる。だめな人間は改善も見込めない。全て無駄。

哀しすぎて歌にあまり気持ちが乗っていない、、気乗りしなさすぎてピッチもいつも以上に不安定。。そして歌いながらますます悲しくなっている。。"another alibi to write"の部分はぼんやり歌詞が入ってくるようになったかなくらいの段階では"another arbeit arrives"って聞こえていて、暮らしや逃避行のために日雇い的なバイトをして繋いでいるのかなって思っていた。まさしく「LとR」問題だね。自分でもうまく言い分けきれていない。そういえば、アルバイト(arbeit)は大学の時にうっかりエッセイの中で使ってしまったら「それはドイツ語だから英語(part time job)をつかうように」とのコメントがついたことがあった。そして数年後、ビルケナウ(アウシュビッツ)の入り口で"Arbeit macht frei"を目にした。「自由」って何だろうね。

歌詞の中に"there's hope in the darkness"とあるんだけど、ダレンと私の絶望の違いは、ダレンは闇の世界にいるけど光を信じている、一方私は光なんて無いと思っていること、自分には(他の人にはあって欲しいと思うし、自分にもあったほうが良いに決まっているけど、無いものは無いんだから仕方ない、期待するだけ無駄だというスタンス)。
ダレンは光を求める力が残っているから、人を時に狂気的に求め、深い/深すぎる愛と未練を包摂する形になる。私には既に光が失われているから人を/人に求める気が立ち上がらない。はじめから期待しないからある意味安定している。
この差の根源はやはり幼少期のネグレクトとその後の弟にのみ無条件に向けられる甘やかしがあるのではという気がする。そしてそのスポイルが野獣を生んだ。しかしそれすら直視しないような輩に何を言っても無駄。この、を出た直接のきっかけとなる一件の存在も大きい。
人間など元より理不尽な存在である。それが「家庭」生活の中で私が得た教訓。温かい生活?ホームシック?そんなの向こう側の世界過ぎる。

BBCのインタビューの内容からすると、この曲はお母様と幼少期の彼の生活がモデルなんじゃないかと思う(こう考えていると"To the moon & back"の"she"もお母様がモデルではとも思えてくる)。"Night screaming"という語もあるし床に散乱したグラスや家具という内容からすると男は夜中酒に溺れ激しく暴れ手当たり次第に物を投げ薙ぎ払いぶち撒けたのだろう。この日は直接の被害は無かったようだけど、いつもそれで済んでいるとは思えない。サビで何度も繰り返される"another ditch"、直接的には道の陥没を意味しているんだけど、私には殴られてボコボコに傷付いた顔や体、アザやたんこぶなんかも連想させる。"Night screaming"は女性や子どもの悲痛な叫びでもあったはずだ。それが何度も何度も現れる。終わらない悪夢の日常。きっとダレンも夜に怯えていたのだろう。「壁が押し迫ってくるように感じる時」と歌っていた"Crash and burn"では、PVに暗闇の中耳を塞ぐ女性が出てくるんだけど、これもきっとお母様や自身が反映されているのではと思う。野獣に怯えながら身を潜め、雄叫びや破壊音を遮断する日常。こんなこと許されていいはずがない。しかし起きる、し、続く。
終盤に"Silent fortress"(静かな要塞)、身を守るためのスペースに触れている部分があるんだけど、そんなの「」の中に作ったとしていとも簡単に突破される。相手は理性の無い野獣なのだから。だから離れるしかない。私にはそう思える。けれども人それぞれだよね。せめて不本意な形で失われる命が無ければと思う。

曲中、主語は基本的に"She"で描かれているんだけど、"I"になっているところがあって、それは"wonder how I ever made it"の部分。これは、"She"(お母様?)の視点で、彼女の台詞として「私はどうしたらいいのだろう」と言っている部分も勿論あるんだろうけど、当時の子ども、そして大人になり曲を書き歌っているダレン自身の"I"、つまり自身の「自分はどうすれば」が投影されているように私には見えた。いずれにしても哀しく切ない。やり切れない。歌いながらどんどん落ち込んだ。

きっとこの曲はこの時になってしまっていたの、自身へのレクイエムだったのではないかと思う。

やっぱり"Affirmation"は、シングルカットされていない(シングルカットできない)部分の曲に、彼の自身、人生の振り返りや総括のようなものが濃密に出ている。それは志村さん(フジファブリック)の"Chronicle"に近いし、Coccoが自身のルーツ、沖縄に向き合った「エメラルド」にも近い気がする。
志村さんも本当に身を削りながら必死に曲を書いていて不摂生が祟ってしまった。Coccoもあの時期ものすごく不安定で、その前後が拒食や自傷のピークになったんじゃないだろうか。

ダレンが生き残ってくれて良かった。そして、自身を受け入れ、また共に歩めるパートナーと穏やかな日常を送れるようになって良かった。その穏やかな日々が続いてくれればと思う。

野鳥版日本語↓
ーーーーー
そして彼女は次の一歩を踏み出す
ゆっくりとドアを開け
男が眠っていることを確認して
床に散乱する割れたグラスや家具を拾う
夜中の叫び声で半分起こされた早朝、彼女はもう逃げ出す時だと思う
子どもを車に詰め込み
新たな傷と共に逃避行を試みる
新たな言い訳を紙に書き残して

道路に陥没があっても
進み続ける
「止まれ」の標識があっても
それでも進み続けなければならない
年月ばかりがあまりに早く流れ去るけど
私はどうすればいいのだろうと思う

考えなければならない子ども達のことがある
赤ちゃんが後席で眠っている
こんな生き地獄の中を彼らはどうしていけばいいのだろう
でも頭の中は驚くべきことに
甘い夢や新しいおもちゃのことでいっぱいになりながらも次の安宿のことを考えている
二つのベッドとコーヒーマシン
でも買わなければいけない日用品があった
だから帰らなけばいけないと彼女は思う

道路に陥没があっても
進み続ける
「止まれ」の標識があっても
それでも進み続けなければならない
年月ばかりがあまりに早く流れ去るけど
私はどうすればいいのだろうと思う

新たな傷と逃避行
新たな言い訳の書き置き
漆黒の闇の中現れる孤独な高速道路
でも闇の中には希望が光る
そして「何とかなる」と思える

道路に陥没があっても
進み続ける
「止まれ」の標識があっても
それでも進み続けなければならない
そして年月ばかりがあまりに早く流れ去る
静かな聖域を築かなければいけないけれど
私はどうすればいいのだろうと思う
ーーーーー

この曲は哀しすぎて&私とは違い過ぎるから「私のレクイエム」にはならなかった。

そう言えば、名曲とされている「サボテンの花」が私は苦手だ。サウンド面ではなく内容が。だって「ほんの小さなひと言」で部屋を飛び出していくなんて、それまでに散々色んなことや我慢が、女性側には積もりに積もっていたんだよ。それをまるで無かったことのように美化して懐かしんでいるところ、酔っているところがこわい。そしてそれを名曲とする社会もおそろしい。(サウンドは良い曲だと思います。)

今度はこっちのチョコ。
なんだか疲れてきたので京都を補給。音博行ければ良かったんだけど、、


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?