NO way out(出口が無い)

生きることは死ぬことだった。

「嫌なら出て行け。お前が悪い。」

一人で生きていくことなど到底できない子どもに対して力ある者からその立場を利用し浴びせられ続ける罵声と呪詛

「生まれてきてくれてありがとう?」
そんなの言われたことない。
一方で無条件に猫可愛がりされている対象を目にしながら、存在も個性、主体性も全否定され続けた。

「生まれてすみません?」
頼んで生まれてきたわけでも望んで生きているわけでもない。謝る筋合いはない。(大学入学前は純文学に傾倒し太宰は特に好きな作家だったけど)望みもしないことを本人の意志に反して押し付けられているだけなのに、どうして恩を着せられ続けなければならないのか。

「どうして言うことを聞かない。こんなに世話をしてやっているのに感謝しない。生意気だ。かわいげがない。」
こんなところに居たくて居るわけではない。感謝などしたくなるような日常ではない。

「死んでしまえ。」
別に好んで生きているわけでもない。ある日素直に「分かりました」と外へ出たら大騒ぎになっていた。「私が」「死ぬと言って」出ていったと主張されていた。普段の言説からすればむしろ口ごたえしなかったと褒められるべきではないか。

イメージと実情があまりに乖離していた。
土地持ちで対外的には良いイメージを振りまき善人面をする一族内の実質的な権力者に攻撃のターゲットにされた。

自分は人にこれだけの施しをしてきた、何町もの土地を人に分け与え身寄りのなくなった親族を育ててやった、住まいを見つけるのが難しい留学生に賃貸を貸してやった、お前にもこんなに世話をしてやっている。

私は望んで「世話になっている」わけではない。自分で選ぶことなどできなかった。

当時はわからなかったけど、攻撃の理由はおそらく
1.その人物の娘を苦しめた男の子どもだから
2.加えてそれがでありかつ能力が高かったから(しかも健康体)
3.さらに一族内のルールに従わず意志を持とうとしたから
というのが主だと思う。

1.に関しては同条件でありながら、明らかに能力が劣っている男は無条件で甘やかされていた
私であれば、できたら束縛が強まりどうしてもっとやらないのだ、ああしろこうしろとなり、それが嫌だからとできることを放棄すれば罵倒が始まるところが、(私より)できない男がそれを理由に咎められることは一切無かった。
小学生時代に自律神経失調症になったりして「かわいそう」とされたその男が、症状が無くなり、スポイルされ続ける中で傲慢さや暴力性を高めていったにもかかわらず、一族の中では男が「かわいそうで、弱い、守らなければいけない」存在だという認識は変わらず、対して私が「健康で能力が高い女のくせに口ごたえをして言うことを聞かない生意気で気に食わない」反乱因子だという認識は、男との比較において、強化増幅していった。

閉鎖的、保守的な村社会の価値観である。そもそも「女より男」であるのに加え、一族の敵(の娘)でしかも鼻につく存在を、歪んだ集団内の緩衝材、スケープゴート、サンドバッグにしたのだろう。

積極的な加害者は土地資産を持つ人物が主だったが、他は全て傍観者だった。見て見ぬふりをしていたのか、そもそも認識することすらできなかったのかは分からない。ああいった世界の中では認知が歪む。集団の利益利便性のために白も黒に、黒も白になっていく。
封建社会のしきたりは「御恩と奉公」である。権力に媚び諂い、奉公しなければ利権にはありつけない。誰も止めなかったし、見向きもされなかった。問題だと思われることすら無かったのかもしれない。そして、おかしいと言えば言うほど、報復は強くなっていった。

できることは自分を損なうこと
できなくすれば攻撃をされる

健康体であることが庇護の意識を遠のかせる

理不尽だ。おかしい。

男として生まれるか女として生まれるか、そもそも生まれてくることすら選択などできなかった。能力だって、体調だって、自分で選んだことではないのに、一般的には「恵まれている」とされている要素が自分を追い込んでいく。強固な土地利権に絡んだ集団力学の中で。

私が私である限り、攻撃は止まない
こんなところにいたいわけではないのに

どこにも出口がなかった。

どんなに望んでも叶うことなどない。望めば望むほど無力感と絶望を味わうだけだ。変わることなどないし、助けは来ない。

期待することをやめた。
はじめから期待をしなければ、裏切られ傷つくこともなくなる。
気付けばいつしか私は集団の主張を内面化し、「私が悪い」と認識し言うようになっていた。

生きることは死ぬこと、殺されること。
長生きしたい、生きるのが幸せだなんて、思ったことない。

生を無条件に肯定できるのは、生や存在を肯定されて「生きて」きた人だ。
私はそうではなかった。それだけの話。


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