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上辺だけ穏健化(非悪魔化)した極右勢力と戦う(サッカー)フランス代表選手+民衆の敵(プーチン大統領・金正恩総書記)ウクライナではなくロシアがネオナチ(極右民族主義)?

(※ お急ぎの方は、プーチン大統領と金正恩総書記の会談については読み飛ばして、勢いを増す極右勢力と戦う(サッカー)フランス代表選手の話題へ進んでください。)

https://www.wsj.com/sports/soccer/france-election-kylian-mbappe-marine-lepen-0d1508b9

昨日未明に平壌国際空港に着陸した専用機から降り立った(小池百合子都知事と同じ)1952年生れのウラジーミル・プーチン大統領が24年ぶりに北朝鮮を訪問した様子が各局のニュース番組で尺を割いて放送されています。

レッド・カーペットの上で大統領と総書記が握手し抱擁する姿を観ながら、この二人がいなければ、世界が少しは平和になる(北朝鮮からロシアへの砲弾等の補給が滞れば、戦火が止み、資源価格や食糧価格が下がり、インフレも収まる)に違いないと思われた方は少なくないかもしれません。

プレゼントの交換では超高級車や豊山犬が目を引きましたが、包括的戦略パートナーシップ条約の調印によって28年ぶりに軍事同盟関係が復元される等、外交成果もあがったようです。

大統領と総書記は空港で最後まで別れを惜しみ、総書記の一行はプーチン大統領が搭乗した専用機の離陸を滑走路の脇で手を振りながら見送ったようです。

歴史にタラレバはありませんが

前者については、ボリス・エリツィン大統領およびその家族と取り巻きが大統領在任中の数多の不正が追及されることのないよう(ユーリ・スクラトフ検事総長を女性スキャンダルで失脚させたり、エフゲニー・プリマコフ首相によるエリツィン排斥クーデターを未然に防いだりして、信頼を得ていた)ウラジーミル・プーチンを後継指名することがなければ、大統領に成り上がることはなかったかもしれません。

後者については、マンハッタン計画に携わった複数の科学者や技術者が原子爆弾に関する機密情報をソ連へ流出させていなければ、ソ連による原子爆弾の完成が遅れ、中朝連合軍に対して原子爆弾が使用されて、韓国が北朝鮮に勝った(金王朝は一代で終わった)かもしれません。

さて、世界中で、多数の国が右旋回するだけでなく極右勢力に対する庶民の支持が高まる状況を眺めながら、プーチン大統領はほくそ笑んでいると報道されていますが

戦前戦中のナチや戦後のネオナチとは異なり、極右勢力が反ユダヤ主義の旗を掲げることはありません。(尚、パレスチナにおける戦闘が反イスラエル(反ユダヤ主義)に結びつくことのないよう、各国で活動しているユダヤ系市民は少なくないようです。)反ユダヤ主義に代わって、移民の流入に反対しながら、反イスラム主義や白人至上主義の旗が掲げられています。

プーチン大統領は、隣国への武力侵攻(特別軍事作戦)を開始する前から、ウクライナからネオナチを排除することを目的の一つとして挙げています。ユダヤ系であるゼレンスキー氏が大統領の職にある間はネオナチ呼ばわりを否定し続けることはできそうですが、ロシア国内と同様に、ウクライナ国内でも少数民族に対する政治的・経済的な差別の方がネオナチより大きな問題であるとの意見もあります。

ウクライナをネオナチと罵るプーチン大統領が欧州各地で台頭する極右勢力(領土拡大の野望は抱かず、ロシアに攻め込むことはないと考えられる現代版ネオナチ)を侮蔑するどころか歓迎している姿をみていると、高遠な理想を掲げながら立派な御託をあれこれ並べていても、最終的には世俗的な損得勘定に従って発言し行動する政治家には幻滅します。

さて、日本ではあまり報道されていませんが、欧州議会選挙における中道~左派の敗北に動揺したマクロン大統領が総選挙(国民議会(下院)の解散)に打って出たことを受けて、パリ・サンジェルマン(来シーズンはレアル・マドリード)所属のキリアン・エムバペ選手(父はカメルーン出身、母はアルジェリア系)、インテル・ミラン所属のマルクス・テュラム選手(プロサッカー選手(元フランス代表)であった父リリアン・テュラム選手もフランス領西インド諸島グアドループ出身)、パリ・サンジェルマン所属のウスマン・デンベレ選手、他、フランス代表チームの選手による極右勢力の台頭を懸念する発言が注目されています。

(※ 日本では先日行われた欧州選手権(UEFA EURO 2024)1次リーグ初戦(対オーストリア)の終盤にエムバペ選手が鼻を骨折したことの方が大きく報じられています。)

https://www.youtube.com/watch?v=YuAk5fD4suY

サッカー以外のスポーツ界でも賛同する意見が増えています。

https://www-lequipe-fr.translate.goog/Tous-sports/Actualites/Tribune-des-sportives-et-sportifs-appellent-a-voter-contre-l-extreme-droite/1475159?_x_tr_sl=fr&_x_tr_tl=ja&_x_tr_hl=ja

Les principaux signataires

Brahim Asloum (boxe)
Arnaud Assoumani (athlétisme)
Benjamin Auffret (plongeon)
Isabelle Autissier (voile)
Béatrice Barbusse (handball)
Mathieu Blin (rugby)
Marion Bartoli (tennis)
Serge Betsen (rugby)
Mourad Boudjellal (rugby)
Morgan Bourc'his (apnée)
Axel Clerget (judo)
Benjamin Compaoré (athlétisme)
Lénaïg Corson (rugby)
Matthias Dandois (BMX)
Ophélie David (ski cross)
Pauline Déroulède (tennis)
Vikash Dhorasoo (foot)
Stéphane Diagana (athlétisme)
Yohann Diniz (athlétisme)
Kito de Pavant (voile)
François Dhaene (trail)
Gévrise Emane (judo)
Monique Ewanjé-Epée (athlétisme)
Isabelle Fijalkowski (basket)
Sébastien Foucras (ski acrobatique)
François Gabart (voile)
Denis Gargaud Chanut (canoë)
Alain Gautier (voile)
Astrid Guyart (escrime)
Adrien Hardy (voile)
Fabrice Jeannet (escrime)
Roland Jourdain (voile)
Marie-Amélie Le Fur (athlétisme)
Tanguy Le Turquais (voile)
Julien Lizeroux (ski)
Renaud Longuèvre (athlétisme)
Marie Martinod (ski acrobatique)
Florence Masnada (ski)
Anne-Flore Marxer (snowboard)
Mickael Mawem (escalade)
Malia Metella (natation)
Nodjialem Myaro (handball)
Emmeline Ndongue (basket)
Maguy Nestoret Ontanon (athlétisme)
Yannick Noah (tennis)
Yannick Nyanga (rugby)
Fulgence Ouedraogo (rugby)
Sarah Ourahmoune (boxe)
Marie Patouillet (paracyclisme)
Dimitri Pavadé (athlétisme)
Marie-José Pérec (athlétisme)
Benoît Peschier (kayak)
Candice Prévost (foot)
Franck Piccard (ski)
Mathieu Rosset (plongeon)
Yannick Souvré (basket)
Raphaelle Tervel (handball)
Xavier Thévenard (trail)
Ysaora Thibus (escrime)
Martin Thomas (canoë)
Jo-Wilfried Tsonga (tennis)
Pierre Villepreux (rugby)

La liste complète de tous les signataires

極右勢力は早速(日本的に言えば『俳優や歌手や芸人が政治に口を挟むな』という感じで)嚙みついていますが、賛同はスポーツ界以外にも(一部では国境を越えて)広がっているようです。

https://www.reuters.com/world/europe/french-far-right-leader-bardella-slams-mbappe-election-comments-2024-06-18/

近年、日本のスポーツ界でも国際結婚したご夫婦のお子さん達の活躍が目立つようになりましたが、戦中から戦後にかけては、本人あるいはご両親(両方・片方)が数少ない日本の植民地で生まれたり育ったりした事例が殆どであったと思います。

・大鵬 幸喜さん(南樺太出身、父上はウクライナ人)
・王 貞治さん(東京都出身、父上が中国浙江省出身)
・金田 正一さん(稲沢市(愛知県)出身、在日韓国人2世)
・金 信洛(力道山)さん(咸鏡南道(現在の北朝鮮)出身)

 等々

アフリカ系をはじめ多様な人種がアメリカに溢れているのは植民地支配の結果ではありませんが

統治支配していた地域が第二次世界大戦後に次々と独立するまで、ヨーロッパ各国はアフリカやアジアに数多くの植民地を領有していました。植民地時代も、植民地が独立した後も、植民地・元植民地から宗主国・旧宗主国へ移民した人々は数多く、サッカーを例にとれば、ヨーロッパ各国の代表チーム(ナショナル・チーム)の白人比率が低いことに(ワールドカップをテレビで観戦し始めた当初は)首を傾げたこともありました。また、今日まで移民に寛容であった国々には、長年に渡り、旧植民地以外からも大勢が移り住んでいます。

投票日が迫る国民議会(下院)選挙で国民連合(旧国民戦線)他の右派政党が勝利すれば首相に就任すると思われるジョルダン・バルデラ(国民連合)党首のご両親はイタリア系(但し、ご父君の祖母はアルジェリア系)だそうですが、同じ移民でも、肌の色が違えば、考え方が(白人至上主義も包摂しながら)右に傾くことは避けられないようです。

(前略)

脱悪魔化――。国民連合はマリーヌ・ルペン前党首(55)のもと、10年ほど前からこう呼ばれる戦略を進めてきた。表向きは、声高に唱えてきた差別的な移民排斥や欧州連合(EU)からの脱退などの極端な主張を封印。「庶民の味方として都市と地方の格差解消や治安の回復を訴えて、「普通の政党の姿をアピールする

(後略)

最後にプーチン大統領の話に戻りますが、欧米各国や日本が全体主義の枢軸国(中国、ロシア、格下であるにも関わらず両国によいしょされている北朝鮮、他)に経済力や軍事力で足蹴にされる昨今、ウクライナではなくロシアがネオナチ(極右民族主義)のように目に映るのは私だけでしょうか...


Baromètre politique Ipsos-La Tribune Dimanche - Juin 2024


「異邦人」の孤独を映したフランス暴動

2023年7月7日

「きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かもしれないが、私には分からない」

そんな衝撃的な書き出しで知られる小説は、アルベール・カミュの不条理文学の傑作とされる「異邦人」です。フランス支配下のアルジェリアで主人公ムルソーがアラブ人を殺害し、裁判でその理由を「太陽がまぶしかったから」と説明します。「異邦人」は世間の常識から隔絶した主人公その人でした。

1942年の初出版から70年以上を経て、アルジェリア人ジャーナリスト、カメル・ダウドは物語で名前すら与えられなかった被害者のアラブ人に視点を移し、「もうひとつの『異邦人』ムルソー再捜査」という小説に描き直しました。過去の植民地主義とアラブ人差別に対する痛烈な皮肉とみられ、フランスの権威あるゴンクール最優秀新人賞を受賞しています。

フランスの移民系の人々は「二級市民」のような差別的な扱いと苦しい生活環境に不満を募らせてきました。彼らこそ現代の異邦人といえるでしょう。

不満のマグマがついに吹き出したのでしょうか。6月末、パリ郊外のナンテールでアルジェリア系の少年が警官によって射殺された事件をきっかけに抗議が広がり、フランス各地で暴動へと発展しました。

「バンリュー」と呼ばれる都市郊外の開発の遅れや劣悪な治安状況に改めてスポットライトがあてられています。発展から取り残された貧困地区では住民らの暮らしが物価高で一段と厳しさを増し、一部は限界に達しているのかもしれません。

尋問中に車を発進させようとした少年をいきなり射殺した警官の行動についてマクロン大統領は「弁明の余地はない」と指摘しています。一方で、放火や略奪など平和的なデモから逸脱した破壊行動も批判しました。パリ郊外では自治体の市長の自宅が襲撃を受ける事件も発生しました。

中道のマクロン政権は議会では急進左派と極右政党にはさまれ、過半数を割り込む「ねじれ」に直面しています。今春にも年金改革法案が激しい反発を招き連日、デモが繰り広げられました。

暴動を機に秩序回復を訴えるマリーヌ・ルペン氏が率いる極右「国民連合」が支持率を大きく伸ばしています。彼らは貧困地区の公金依存を批判する立場です。左派も事件を機にマクロン氏への批判を強めるとみられ、政権運営は一段と厳しさを増しそうです。

フランスは欧州域内でも移民受け入れに積極的だった国で、いわゆる移民1世だけで人口の1割を超す700万人に達します。多様性は社会に活力をもたらします。サッカーのフランス代表スターであるエムバペ選手の父親はカメルーン出身、母親はアルジェリア出身です。同じく代表のカマヴィンガ選手はアンゴラの難民キャンプで生まれた苦労人だそうです。

日本は外国人や移民との共生という点でフランスなど多くの国に周回遅れの状況です。今後、日本の労働力不足は世界でも際だって深刻になります。かつてのグローバル化論争と同じく、外国人受け入れは好むと好まざるとに関わらない不可避の現実になるでしょう。同化政策に苦悩するフランスは日本の未来でもあります。

安全を守りながら、異質な人々と共生し、活力へと変える知恵と工夫が必要です。異邦人たちの孤独と苦境に寄り添える想像力をわれわれは持っているでしょうか?

岐部秀光/編集委員兼論説委員


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