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好きな詩 とか(2022年)

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2022年6月の記事一覧

【詩】ある内的体感

【詩】ある内的体感

内側はしんと静まり返り
わたしの身体は透き通って
やがて空白の中に
浮かび上がっている

身体性というものは
意識のずっと遠いところに
消え失せてしまう

浮遊

閉じた両眼の裏側が
明るく発光しはじめ
すべてを内側から
照らしているかのようだ

もはやわたしには
目を開けているのか
閉じているのかもわからない
内側も外側も
なくなってしまうのだ

わたしとそれ以外を隔てていた
意識の境界線がなく

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頂

もう少しなのか
それとも
頭打ちなのか

答えは決まってるようで
保留のような気もして

君はどこへ行くんだい?
日々の生活に埋もれながら

僕はどこに行くんだい?
何度も山頂を見失いながら

悔しさをバネに
積み重ねてきたつもりだけど

惨めさを糧に
羽ばたいてきたつもりだけど

こんな夜にはまた
希望を設置して

こんな夜にはまた
小さな変化に夢中になって

同じことを繰り返して佇む夕暮れ

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世界の猫へ、この夜を捧ぐ

世界の猫へ、この夜を捧ぐ

夜は猫たちの国だ
光源の知れない僅かな反射光で煌めく両眼が
誰にも見えない黒の果てを射抜く
誰も喋らないただ静かな夜がくることを
猫たちは太古から祈っている
祈りの中で彼らは生まれくる

触れられぬことを代償に生きるのだ
強さではなく弱さ故に
闇の中で形作る歪んだ輪郭を
月光が撫でる
あの白さえ、あの冷たささえ
ここでは救済になる

走る、はしる、あてもなく、
独りだ、どこまでも、独りで
だからこ

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交換

私を救う言葉を
私は永久に知らない
だから交換しよう
貴方の知っていることと
私の望んでいることを
ひとしずくでもかまわない
きっともちこたえてみせる
私たちの過去が過去になるまで

【詩】 ぼくらは全てを知っている

【詩】 ぼくらは全てを知っている

人に とって

無意味な ことが

きみに とっては

価値が ある

人に とって

無意味な 事でも

宇宙に とっては

価値が ある

きみが今 無意識に

息している ことすらも

宇宙に とっては

価値が ある

きみが 今 瞬間

まばたきを していることも

宇宙に とっては

素晴らしい ことだ

無駄なものなど 何もなく

人が ただ

無意味だと 思っているだけで

全ての

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「人生に質量はある?」

「人生に質量はある?」

なんとなく
ストロベリームーンに問う夜

見つからないことを
見つけようとしている

そうかもしれないね
ダメなのかもしれないね

淋しくなくて
生きていきやすくて

困らなくて
文句を言われなくて

そんな世界を願うこと
そんな関係を願うこと

人間はわざわざ
むずかしくする

罰を与えることでしか
安心を確保できないのかしらと
ストロベリームーンに問う夜

地球というブランコ(遊具)で揺れてい

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アジト

アジト

令和元年某日未明決行
邪魔する者は速やかに排除
如何なる関係性においても
その例外は認めるに及ばず
此度の決起集会において
身分の相違関わらず血を流せ
神々の度肝を抜き去るべく
世界人類幸福追求による
永劫不滅的なデータ降臨の
勿体なくも礎とならん

アジトに焼け残った紙切れ
俺の平和と奴の平和は
百年戦争に明け暮れた
子供だっておかしいと思うだろう
けれどそれが大人ってもんだ
お前と同じ人間なん

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現実逃避

現実逃避

逃げてきた
現実から
深い森の奥

現実は追っては
来れない

ここは
人間が決めた
価値観は何もない
答えもないし
正解もない

ただ森が
空が広がるばかり
時間も
ゆっくり流れる

何も
求められない
求めるものもない

ありのままの
私の時間が
ゆっくり流れてく

【詩】凪

【詩】凪

さっきまで
何をか伝えたい気がして
差し迫った気持ちで
内側が泡立っていたのに

ふとした瞬間に
意識が逸れて
何を言いたかったのか忘れてしまった
ことばは不意に奪われ
空白だけが横たわる

手元に残されたのは
とても単純なことだけ
空は青く
鳥は歌い
花が柔らかく揺れる

明瞭で
曇りのない
世界の美しさ

私の伝えたかった
入り組んだことがらは
みんな解かれてしまった
あの枝を揺する風が
遠く

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現実

現実

休んでいる
仕方ないんだ
やりたい事をやっている
とでも言えたなら
気が紛れるか
いや
紛らすための気持ちって
どこにあったっけ
植木鉢の下
玄関ポストの裏
ロングブーツの爪先
頭に引っ掛けた眼鏡
ないか
現実ってのは
幻の総意だ
逃れられそうで
だいたいしくじる
それが現実だって
吐いたら負け
わかっているんだよ
また負けか
そういや
梅雨入りしたんだってな
それも現実かって
まったく
どうだっ

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「私の定義の檻の中」

「私の定義の檻の中」

ハチに刺された日
情景は朧気
おそらく子どものころ

ハチに刺された日
あいまいな記憶は揺れて
覚えているのは感情だけ

なんで自分だけ
狙われたんだろう

あれ
他の子たちは
ハチに刺されなかったんだっけ

自分だけが損をしたような気持ちは
何となく浮かぶ

チクッとしたか
激痛だったか
痛みのことは覚えていない

ジャッジしたいことは
私の定義の檻の中

言おうとすることは
私の定義の檻の中

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