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世界の猫へ、この夜を捧ぐ

夜は猫たちの国だ
光源の知れない僅かな反射光で煌めく両眼が
誰にも見えない黒の果てを射抜く
誰も喋らないただ静かな夜がくることを
猫たちは太古から祈っている
祈りの中で彼らは生まれくる

触れられぬことを代償に生きるのだ
強さではなく弱さ故に
闇の中で形作る歪んだ輪郭を
月光が撫でる
あの白さえ、あの冷たささえ
ここでは救済になる

走る、はしる、あてもなく、
独りだ、どこまでも、独りで
だからこそここでは光らないことが美徳だ

照らしてくれるなよ、世界
どこまでが自分で、どこまでが世界であったのか忘れて
猫は走る、じきに、夜へ、溶けて、いく
声も、形もなく、一点の闇へ
そうして一つ
夜が深くなる

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