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#本

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気になった本をただただ読む。そのまとめ。
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この世界には確かなことなんて無いかもしれない。けれども、何かを信じることはできる。「騎士団長殺し」/村上春樹

この世界には確かなことなんて無いかもしれない。けれども、何かを信じることはできる。「騎士団長殺し」/村上春樹

『騎士団長殺し』面白く、不思議で、洞察深い物語でした。

『色彩を持たない多崎つくると彼の巡礼の年』『街とその不確かな壁』に続き、村上春樹は3作目です。『騎士団長殺し』の前に読了した2冊で、村上春樹の『手腕』的なものと『文章技巧』的なものと『軸』みたいなものが、概ね把握できたのは、『騎士団長殺し』を読むうえで有益でした。

今回は読みながらその瞬間に思ったことをツイートし書き留める作業をしてみまし

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五線譜で縛られたハーモニーに私自身を見た 「ハーモニー」/伊藤計劃

五線譜で縛られたハーモニーに私自身を見た 「ハーモニー」/伊藤計劃

ユートピアの臨界点を描き出した、国産SF小説「ハーモニー」を読了しました。(少しだけネタバレあります。)

あらすじ:21世紀後半、〈大災禍(ザ・メイルストロム)〉と呼ばれる世界的な混乱を経て、人類は大規模な福祉厚生社会を築きあげていた。医療分子の発達で病気がほぼ駆逐され、見せかけの優しさや倫理が横溢する”ユートピア”。そんな社会に潜んだ3人の少女は餓死することを選択した。-それから13年。死ねな

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壁にひそむ神様を見つける 「進撃の巨人」/諌山創

壁にひそむ神様を見つける 「進撃の巨人」/諌山創

「進撃の巨人」に存在する《壁》こそ、壁内人類を物理的に守り、自己を開花させるような《神様》みたいなものなのだと思う。

そのように思う考え方、つまり《思想》とは何なのだろう、と考えてみる。

このような説明は、思想をすべからく説明し得ないものだ。ある個人Aが、ある特定の思想Bを持ち合わせていたとしても、その思想Bを持つ集団が、特定の性質を共有しているとはかぎらない。個人Aが思想Bに還元できても、思

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私たちが生き延びている世界の中で 『地球星人』/村田沙耶香

私たちが生き延びている世界の中で 『地球星人』/村田沙耶香

「殺人出産」「コンビニ人間」の次に、『地球星人』を読了しました。

あらすじ:恋愛や生殖を強制する世間になじめず、ネットで見つけた夫と性行為なしの婚姻生活を送る34歳の奈月。夫とともに田舎の親戚の家を訪れた彼女は、いとこの由宇に再会する。小学生のころ、自らを魔法少女と宇宙人だと信じていた2人は秘密の恋人同士だった。だが大人になった由宇は「地球星人」の常識に洗脳されかけていて…。

私たちの周囲に存

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私はコンビニ店員が大嫌いだった 『コンビニ人間』/村田沙耶香

私はコンビニ店員が大嫌いだった 『コンビニ人間』/村田沙耶香

村田さんの小説にはまってしまい、すぐさま次の作品を読了。

本著を読みながらまず想起したのが、「過去のコンビニでのアルバイト」の出来事である。

恐らくそのころ、私自身は相当、まわりの店員(昼勤の既婚女性)に馬鹿にされていたと思う。その経験が、自分の思い込みであるという範疇からは、完全に抜け出せないかもしれないが、当時も、今も、そう思う。

何でなのか、今も分からない。仕事っぷりがくそだから?性格

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何かを産み落とすということ 『殺人出産』/村田沙耶香

何かを産み落とすということ 『殺人出産』/村田沙耶香

殺人/出産、という相対する(ようにみえる)題目に惹かれて、数か月前に買った本。(ようやっと読めた。)

概要:今から百年前、殺人は悪だった。10人産んだら、1人殺せる。命を奪うものが保つ日本。会社員の育子(主人公)には十代で「産み人」となった姉がいた。蝉の声が響く夏、姉の10人目の出産が迫る。未来に命を繋ぐのは、彼女の殺意。昨日の常識は、ある日、突然変異する。

まず、「殺人」「出産」、生を消去す

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ジェンダーの海から自分らしさを見つけたい

ジェンダーの海から自分らしさを見つけたい

なぜ
《「自分らしさ」に疑問を抱えるのか?》
《「自分らしさ」に納得するのか?》
《「自分らしさ」に振り回されるのか?》

***

「自分らしさ」が起点の思案は、常に外部に接続された自己が、その外部の広い範囲を占めている《分からないもの》に翻弄されていることの証明ほかなりません。

外部に全ての真実が包摂されているわけがない、と理解しているつもりでも、人というものは《他者》や《自分以外》のモノを

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童貞が世の中を退屈にし、退屈な世の中は「普通」を「普通じゃない」ものにする。

童貞が世の中を退屈にし、退屈な世の中は「普通」を「普通じゃない」ものにする。

童貞とは、性にまつわる特性を示す言葉ではない。この世の中に対し、情報知覚的に《挿入》していない(参画していない)人の比喩である。
知らないということが、いったいどういう状況なのか、何が問題なのか、明確にさせてくれるのがこの本だ。

異質的存在として写る著者だが、異質という存在を「異質」という言葉によってゾーニングすることは、全く問題がないことなのか?

異質だとゾーニングするのは、《ゾーニングしな

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