指々

ドラマー。映画好き。

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  • マイうつ

    うつ病と生きる日々について書いてます

記事一覧

【小説】Wonderwall

コロナ禍に書いた短い小説を引っ張り出してきて、手を加えました。 オアシス、おかえり!!! ーーーーーーーーーー Wonderwall 1 「母さんね、ヒーローになろうかなと…

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5日前
4

「お前、ハゲるよ。」

マクベスに出てくる魔女のように、幼い頃から色んな人が僕にシンプルな予言を託してきた。 「お前、ハゲるよ。」 マクベスは動く森を目撃するし、僕はハゲるのだ。 幼稚…

指々
2週間前
8

耳に蛇を飼っている

一度流れ始めてしまうと、尻尾を噛んだ蛇のように僕の脳に巻きついて、離してくれない。 英語で「頭の中で流れ続けて止まらない曲」のことをearworm(耳の虫)というらし…

指々
2週間前
10

パンダとあそぼう

朝テレビをつけたら、動物園の特集をやっていた。お天気キャスターがパンダを囲う柵の前で「可愛いですね〜!」と言っている。可愛いな、パンダ。観に行くか、パンダ。そう…

指々
3週間前
10

マイうつ #5 : 恵みの湯

最近は気持ちも落ち着いて、前のように朝起きたら突如絶望的な気持ちに襲われるなんてこともだいぶ減ってきました。ただ時々ですが、身体の重みがすごくて「あっヤバいな」…

指々
1か月前
22

チェコの花火をナメるな

「こんなもんだろ」と思っていたら、予想を遥かに超えてきた。そんな経験が、あなたにはあるだろうか。 初見のラーメン屋で替え玉の半券を買ったものの、ラーメンがデカす…

指々
1か月前
17

つい考えてしまう

和食のお店に行くと見かける、「〇〇の炊いたん」。里芋とか大根とか、ほくほくになるまで煮込まれている暖かな料理。あれを目にすると、つい考えてしまう。 時は2XXX年。…

指々
1か月前
5

オカレモンと「ほんとか?」の先

先日、外出前に洗面台で支度を整えていた時のこと。最近乾燥がひどいので、顔に化粧水を塗ろうと思い立ちました。何の気なしにワックスの横に置いてあるスプレーを手に取り…

指々
1か月前
22

ポール・オースターを偲ぶ

好きな作家にポール・オースターの名前を挙げると「どんな作家?」と聞かれます。「僕にとってポール・オースターがどのような意味を持つ作家か」と聞かれているのだとした…

指々
4か月前
12

マイうつ #4 : 映画。

僕なりのうつとの向き合い方、マイうつ。本日は、闘病生活の中で出会った映画をご紹介。 うつ病と向き合う時間の中で、しばしば「集中できない」ことがありました。入院中…

指々
4か月前
21

架空読書感想文: 『お前にピザポテトは似合わない』

「読んだ本の感想をnoteに書いてみませんか?」と自動メッセージが提案してくれました。読んだ本の感想を書き留めること、そしてそれについて誰かと語り合うことは大好きで…

指々
4か月前
12

空席。

隣の席に、人が座らない。僕にとって、これは日常茶飯事です。 東横線の座席にちょこりと座っていると、ぽつぽつと人が乗車してきて気づけば満員電車になっていました。吊…

指々
4か月前
29

マイうつ #3 : 嬉しい。

僕なりのうつ病との向き合い方、マイうつ。今回は入院中の日記をご紹介。 2023年11月20日から1ヶ月、うつ病治療のため入院生活を送りました。うつ病は、脳における神経伝…

指々
6か月前
41

マイうつ #2 : 眠い。

僕なりのうつとの向き合い方、マイうつ。本日は僕の天敵、眠気についてご紹介。 うつと診断されるまでに、様々な症状を経験しました。象でも背中に乗ってるのかなってくら…

指々
6か月前
25

マイうつ #1 : 僕と「うつ」

2023年11月20日、うつ病の診断を受け1ヶ月入院生活を送りました。今は自宅で療養しつつ通院・加療中です。 入院までの記憶は朧げにしかありません。楽しくも忙しい仕事を…

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6か月前
102

でんでらりゅうば。

この歌、知ってる方も多いと思います。 この前ふとメロディが頭をよぎり、鼻歌まじりに歌ってみました。そこで気がついた。この歌、歌詞の意味が全く分からない。 こんな…

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6か月前
8

【小説】Wonderwall

コロナ禍に書いた短い小説を引っ張り出してきて、手を加えました。
オアシス、おかえり!!!

ーーーーーーーーーー

Wonderwall

1

「母さんね、ヒーローになろうかなと思って」

「なんで」

「だってね、世の中、嫌な人っていっぱいいるじゃない。あんまりにも嫌なことする人ばっかりだから、良いことしても意味ないんじゃないかって考えるちびっ子たちが出てきてもおかしくないでしょ。募金しなさい

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「お前、ハゲるよ。」

マクベスに出てくる魔女のように、幼い頃から色んな人が僕にシンプルな予言を託してきた。

「お前、ハゲるよ。」

マクベスは動く森を目撃するし、僕はハゲるのだ。

幼稚園生の頃、椅子に座ってテレビを見ている祖父の綺麗な頭を撫で回しながら「脳味噌どこにあるの〜??」と質問攻めにした記憶がある。即座に母親が飛んできて「やめなさい!!」と僕を祖父の頭から引き剥がした。自分がいつかハゲるなんてこと、考えもし

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耳に蛇を飼っている

一度流れ始めてしまうと、尻尾を噛んだ蛇のように僕の脳に巻きついて、離してくれない。

英語で「頭の中で流れ続けて止まらない曲」のことをearworm(耳の虫)というらしい。個人的な感覚としては虫というより蛇に近い。ぼーっとしているとスルスルと耳から入ってきて、尖った牙で頭蓋骨にコツコツと穴を開け、脳に絡みつく。僕の場合、こいつを3匹くらい同時に飼う羽目になる場合が多い。パブで酔っ払った客がジューク

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パンダとあそぼう

朝テレビをつけたら、動物園の特集をやっていた。お天気キャスターがパンダを囲う柵の前で「可愛いですね〜!」と言っている。可愛いな、パンダ。観に行くか、パンダ。そう思い立ち、リュックにカメラだけ詰めて、家を後にする。風が強い。

連休初日に沸き立つ家族連れやカップルに混じって入場券を買い、人の波をすり抜けてパンダのコーナーに向かう。柵の上にはプラカードが吊るされていて、「パンダとあそぼう」の文字。パン

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マイうつ #5 : 恵みの湯

マイうつ #5 : 恵みの湯

最近は気持ちも落ち着いて、前のように朝起きたら突如絶望的な気持ちに襲われるなんてこともだいぶ減ってきました。ただ時々ですが、身体の重みがすごくて「あっヤバいな」と思う瞬間もあります。自分では元気なつもりでいるけれど、いつ何が起こるか分からない。どうやってこの病気と、自分と向き合えば良いのか分からない。今までとは全く違うタイプの悩みが頭の中をぐるぐるする日々。そんな中で、ぼんやりと入院していた日々を

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チェコの花火をナメるな

「こんなもんだろ」と思っていたら、予想を遥かに超えてきた。そんな経験が、あなたにはあるだろうか。

初見のラーメン屋で替え玉の半券を買ったものの、ラーメンがデカすぎて思わず息を呑む。強豪校のアップ風景を覗いて「身長負けてないな」と思ったら、試合直前になって明らかにアップしていた選手達と違う巨体11人が現れる。マッチングアプリのbio欄に「実家が太いです」とだけ書いてあった男と待ち合わせたら、そいつ

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つい考えてしまう

和食のお店に行くと見かける、「〇〇の炊いたん」。里芋とか大根とか、ほくほくになるまで煮込まれている暖かな料理。あれを目にすると、つい考えてしまう。

時は2XXX年。A国の地下で、食糧安全保障上の危機を脱するための研究が行われていた。稀代のマッドサイエンティスト・Dr. ロールシャッハは、里芋に内在するニューロンと類似した器官を電気刺激により強制的に賦活させることに成功。世界で初めての、意思を持つ

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オカレモンと「ほんとか?」の先

先日、外出前に洗面台で支度を整えていた時のこと。最近乾燥がひどいので、顔に化粧水を塗ろうと思い立ちました。何の気なしにワックスの横に置いてあるスプレーを手に取り、顔に2回ほどプシプシと噴霧した瞬間。とてつもない違和感。匂いがキツすぎる。しかも吹きかけたそばから顔がヒリヒリする。ナンダコレ。不思議に思って握りしめたスプレーを見ると、そこにはParfum pour la chambre(お部屋用芳香剤

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ポール・オースターを偲ぶ

好きな作家にポール・オースターの名前を挙げると「どんな作家?」と聞かれます。「僕にとってポール・オースターがどのような意味を持つ作家か」と聞かれているのだとしたら、僕はこんなことを言うと思います。

「あなたが真っ黒で巨大な立方体の中に閉じ込められたとしましょう。前後も左右も分からない、ただのっぺりとした闇だけが広がっている。そんな暗闇に、ふと錐でつつかれたようにポツリと小さな穴が開く。その穴から

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マイうつ #4 : 映画。

マイうつ #4 : 映画。

僕なりのうつとの向き合い方、マイうつ。本日は、闘病生活の中で出会った映画をご紹介。

うつ病と向き合う時間の中で、しばしば「集中できない」ことがありました。入院中の先生に相談したところ、これもうつの症状の1つであるとのこと。脳のキャパオーバーとも形容されるうつ病。記憶力が落ちる、集中できないといった症状も散見されるとのことです。時に一時停止を押して休憩しながら、大好きな映画と自分のペースで向き合い

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架空読書感想文: 『お前にピザポテトは似合わない』

架空読書感想文: 『お前にピザポテトは似合わない』

「読んだ本の感想をnoteに書いてみませんか?」と自動メッセージが提案してくれました。読んだ本の感想を書き留めること、そしてそれについて誰かと語り合うことは大好きです。でも、読んだことのない本の感想を語ったことはありません。読んだことのない本、いやそもそも存在しない本の感想を語ってみたいと思います。

以下、存在しない本の感想です。

ーーーーーー

今回紹介したい本のタイトルは、『お前にピザポテ

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空席。

空席。

隣の席に、人が座らない。僕にとって、これは日常茶飯事です。

東横線の座席にちょこりと座っていると、ぽつぽつと人が乗車してきて気づけば満員電車になっていました。吊り革に掴まる人がこんなにもいるのに、僕の右側はぽっかりと空いたまま。英語の授業、黒板に書かれた単語のスペルが間違っているのに誰も指摘しない。気づいているのに、手を挙げる人はいない。そんな感覚。僕の隣が空いていることは皆知っているのに、座る

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マイうつ #3 : 嬉しい。

マイうつ #3 : 嬉しい。

僕なりのうつ病との向き合い方、マイうつ。今回は入院中の日記をご紹介。

2023年11月20日から1ヶ月、うつ病治療のため入院生活を送りました。うつ病は、脳における神経伝達物質のバトンリレーが狂ってしまうことにより起きるキャパオーバー。入院の最大の目的は療養で、規則正しい生活と服薬によりキャパオーバー状態から脱することを目指しました。そんな入院中、できる限りつけるようにしていた日記。どろどろした感

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マイうつ #2 : 眠い。

マイうつ #2 : 眠い。

僕なりのうつとの向き合い方、マイうつ。本日は僕の天敵、眠気についてご紹介。

うつと診断されるまでに、様々な症状を経験しました。象でも背中に乗ってるのかなってくらい体が重い、人と話している時に言葉が出てこない、記憶力がすこぶる落ちて思い出すのに時間がかかる、などなど。診断を受けた後も症状はずるずる引きずっていて、それぞれの症状にエピソードがあります。

そんな様々な症状の中でも、僕にとっての天敵は

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マイうつ #1 : 僕と「うつ」

マイうつ #1 : 僕と「うつ」

2023年11月20日、うつ病の診断を受け1ヶ月入院生活を送りました。今は自宅で療養しつつ通院・加療中です。

入院までの記憶は朧げにしかありません。楽しくも忙しい仕事を前にもがき続けていた記憶と、「死にたい」という焦げ付くような感覚が脳を埋め尽くした記憶くらい。慌てて病院と職場に連絡し、入院させていただくこととなったはずです。

うつ病と一緒に過ごす日々は、地獄です。だいぶマシにはなってきたもの

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でんでらりゅうば。

でんでらりゅうば。

この歌、知ってる方も多いと思います。

この前ふとメロディが頭をよぎり、鼻歌まじりに歌ってみました。そこで気がついた。この歌、歌詞の意味が全く分からない。

こんな感じの歌詞です。

意味が分からない。「でてくるばってん」はかろうじて分かる。何かが出てくるんだろう。おそらく、龍。名前は「でんでらりゅう」でしょう。「でんでらりゅうが出てくるぞ…」みたいな。その続きに関しては、想像もつかない。特に、「

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