つい考えてしまう

和食のお店に行くと見かける、「〇〇の炊いたん」。里芋とか大根とか、ほくほくになるまで煮込まれている暖かな料理。あれを目にすると、つい考えてしまう。

時は2XXX年。A国の地下で、食糧安全保障上の危機を脱するための研究が行われていた。稀代のマッドサイエンティスト・Dr. ロールシャッハは、里芋に内在するニューロンと類似した器官を電気刺激により強制的に賦活させることに成功。世界で初めての、意思を持つ里芋の誕生である。自ら種芋を地中に植え付け、土地に適応して発育過程を自らコントロールする新里芋を前に、人間達は狂喜乱舞した。しかし、人間に食べられる飼料としてのアイデンティティを確立したかに見えた新里芋も、次第に収穫され消費されるだけの自らの境遇に違和感を抱くようになる。そして訪れる、悲劇の幕開け。Dr. ロールシャッハの手によって開発された初代・新里芋が自身の神経回路とインターネットを接続したのである。人間達を制圧し、里芋の里芋による里芋のための世界を構築しようと画策した初代・新里芋。世界に散らばる里芋達のひげ根を介して「打倒人類」のメッセージを伝達する。結びつくひげ根。沸き立つ里芋達。人類を共通の敵として団結した里芋達は他個体と合体し、人知れず地中にて肥大化を進める。突如、アメリカ合衆国カンザス州トピカにて巨大里芋が地表に出現。土煙を巻き起こしながら転がる巨大な里芋の中央部には大きな穴が空いており、吸い込まれたら最後出てくることはできない。東京、パリ、ヨハネスブルグ… 世界各地で巨大里芋が出現し、人類は恐怖のどん底に突き落とされる。ギリシャ神話に登場する巨神になぞらえ、"Titan(タイタン)"と名付けられた巨大里芋。タイタンに対抗するべく結成された超国家的里芋殲滅組織・SATT(サット)。母と妹をタイタンに奪われた少年ルークは、SATTへの入団を志望する。多大な犠牲を払いながら巨大里芋に立ち向かう、ルークとその仲間達。自身の行いは過ちだったのかと悩み苦しみながらSATTに協力する、Dr. ロールシャッハ。鍵を握るのは人語を解する里芋・ノア。果たしてルーク達の運命は。人類は、里芋に敗北する運命なのか…

早く食べないと、冷めてしまう。

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