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エガオが笑う時

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#カゲロウ

クリスマス番外編 エガオが笑う時 騒がしい聖夜(終)

クリスマス番外編 エガオが笑う時 騒がしい聖夜(終)

「エガオちゃん?」
 マダムが私の顔を心配そうに覗き込んでいる。
「ぼおっとしてどうしたの?」
「えっ?」
 私は、目を大きく瞬きして周りを見る。
 マナも、4人組も、スーちゃんも心配そうにこちらを見ている。
 カゲロウも無精髭に覆われた顎に皺を寄せている。
 私は、顔を上げる。
 月と星が煌びやかに光る澄んだ夜空が目に入る。
 そこには流星鳥の群れはいなかった。
「もう行っちゃったよ」
 ディナ

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クリスマス番外編 エガオが笑う時 騒がしい聖夜(2)

クリスマス番外編 エガオが笑う時 騒がしい聖夜(2)

「楽しみね」
 ワイン色の身体の線が綺麗に映えるドレスを着たマダムが隣に座って金色の髪にそっと自分の頬を私の髪の上に乗せて聞いてくる。
 果物のような甘い香水の匂いがマダムの髪や頬を通して伝わってきて心臓が跳ねそうになる。
「はい・・・とても・・」
 私は、羞恥と興奮に頬を赤らめて声を上擦らせる。
 そんな様子を同じテーブルに座る4人組が楽しそうに見ている。
「そのドレス・・とても素敵よ」
 そう

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クリスマス番外編 エガオが笑う時 騒がしい聖夜(1)

クリスマス番外編 エガオが笑う時 騒がしい聖夜(1)

 それは幼い頃の記憶だ。
 それが何歳だったのか?いつ頃のことだったのかは覚えていない。
 だだ、ものすごく寒かったことだけは覚えている。
 グリフィン卿による訓練の後、身体中が痛みと疲れで悲鳴を上げ、ご飯も喉に通らないままにお風呂にも入らないで自室で眠ろうとした。
 しかし、寒さと痛みと疲れでどうしても眠れない。
 その変わりに何とも言えない心細さで不安になっていく。
 この頃にはほとんど笑わな

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エガオが笑う時 最終話 エガオが笑う時(3)

エガオが笑う時 最終話 エガオが笑う時(3)

 フレンチトーストを食べ終えるとカゲロウはアップルティーを淹れてくれた。
 今日は凄いな。
 私の大好物のオンパレードだ。
 カゲロウの淹れてくれたアップルティーは匂いだけで充分に満足出来るもので、いつまでも嗅いでいたい甘さと酸っぱさ、そして心を豊かにする匂いだ。
「鎧のない生活には慣れないか?」
 カゲロウの言葉に私は顔を上げる。
「なんかずっと戸惑ってるだろう?」
 カゲロウは、本当に凄い。

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エガオが笑う時 最終話 エガオが笑う時(2)

エガオが笑う時 最終話 エガオが笑う時(2)

「エガオ!」
 全ての円卓を準備い終えるとカゲロウがキッチン馬車の中から声を掛けてくる。
「はいっ」
 私は、小走りでキッチン馬車まで駆け寄る。
 しばらく運動してなかったのと、身体の軽さに何度かバランスを崩しそうになる。
 料理を運ぶ時、気をつけないとな。
 キッチン馬車の前に立つと口の中いっぱいに広がるような甘い香りが漂ってきて三度、お腹が鳴りそうになるのを私はぐっと押さえる。
 そんな私の仕

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エガオが笑う時 最終話 エガオが笑う時(1)

エガオが笑う時 最終話 エガオが笑う時(1)

 赤い傘を広げると赤い幌が朝の柔らかい光に照らされて林檎のように輝く。
 朝ご飯を食べてない胃袋はそれだけで盛大に音を鳴り響かせ、私は思わず頬を赤らめる。
 キッチン馬車の隣で寝そべったスーちゃんにもその音が聞こえたようで面白そうに嘶く。
 私は、ぷっと頬を膨らませてスーちゃんを睨みながらも赤い傘を円卓の中央に差した。
 キッチン馬車の中ではカゲロウがタンクトップに白いエプロンを付けてせっせと仕込

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エガオが笑う時 第10話 一緒に帰ろう(5)

エガオが笑う時 第10話 一緒に帰ろう(5)

 次の瞬間、私の足は旋律を刻む。

 武舞踏連弾

 タッタッタッタッタッタッタッタッタァ!

 私は、柄の振るい、石畳の上に散らばる大鉈と鎧の残骸を空中に打ち上げる。
 異変に気づいたマナが猟獣の如く私を睨み、熱線を放出する。
 しかし、私はもうそこにはいない。
 大鉈と鎧の残骸と共に私も空中へと舞い上がる。
 熱線が石畳を砕き、炭化させる。
 戦乙女のプレートに爪先を当て、思い切り蹴り上げて落

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エガオが笑う時 第10話 一緒に帰ろう(4)

エガオが笑う時 第10話 一緒に帰ろう(4)

 カゲロウの手から離れると私は大鉈を握り立ち上がる。
 もう2度と立てないのではないかと思っていた身体に力が入る。
 心の奥の奥から湧き上がってくる。
 私は、スーちゃんと戦っているマナを見る。
 マナの中を這いずり回る醜いヌエの顔をした無数の魔印を睨みつけながら戦略を組み立てる。
 私は、半月に抉れた大鉈をじっと見る。
 そして青白い炎に囲まれた空間を見回す。
 これじゃあ・・・ダメだ。
 私は

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エガオが笑う時 第10話 一緒に帰ろう(3)

エガオが笑う時 第10話 一緒に帰ろう(3)

 カゲロウをカゲロウと認識した瞬間、私の身体は勝手に動いた。
 左腕が彼の首筋に周り、頬が彼の熱い胸板に飛び込む。
 口が勝手に言葉を紡ぎ出す。
「カゲロウ・・・カゲロウ・・!」
 そして次に飛び出した自分の言葉に私は驚く。
「会いたかったです・・」
 それはまるで子どもが甘える時のような幼く拙い言葉だった。
 カゲロウは、一瞬、驚いた顔をしたがすぐに口元を綻ばせて小さく笑う。
「ああっ俺もだ」

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エガオが笑う時 第10話 一緒に帰ろう(2)

「私を殺すんですか?」
 朗らかな声が私の耳を打つ。
 私は、旋律を刻んだまま声の方を見る。
 マナだ。
 マナは、先程と変わらない笑みを浮かべたまま私を見る。
「やっぱりエガオ様は私のことがお嫌いだったんですね」
 心臓が大きく跳ねる。
 大鉈を握る左手が汗で濡れる。
「マナ・・・?」
 旋律が狂い、集中が解ける。
 マナは、深い笑みを浮かべる。
 石畳を蹴り上げて私との距離を詰めると左腕を振り

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エガオが笑う時 間話 とある姫の視点(3)

エガオが笑う時 間話 とある姫の視点(3)

「魔印はな。魔号と呼ばれる力のある印を組み立てることで始めて意味を成す」
 紫の光が消える。
 それと入れ替わるようにお兄ちゃんの声が耳に届く。
「魔号はこの世界に無限に存在する。木の中にもあれば炎の中、水の中、バルコニーの素材、そして人の中にある」
 紫の稲光は消えたわけではない。
 私のいる場所からでは背中しか見えないがお兄ちゃんの胸の辺りで小さな紫の稲光が弾けているのが微かに見える。
 そし

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エガオが笑う時 間話 とある姫の視点(2)

エガオが笑う時 間話 とある姫の視点(2)

 私は、口元を両手で覆い、その場に膝を付く。
 溢れてくる涙が視界を歪ませる。
 リヒトは、何が起きたか分からず、私とカゲロウお兄ちゃんを交互に見る。
 お兄ちゃんは、こちらには振り返らず奥に立つヌエを鳥の巣のような髪に覆われて見えない目で見据える。
 ヌエは、驚愕に細い目を開く。
「何故、貴様がここにいる⁉︎」
 ヌエの言葉に私は眉を顰める。
 お兄ちゃんとヌエはどこかで面識があるのだろうか?

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エガオが笑う時 間話 とある姫の視点(1)

エガオが笑う時 間話 とある姫の視点(1)

 喧騒と悲鳴が王宮のバルコニーまで轟いてくる。
 その声を聞く度に私は、白い手袋を嵌めた両手をきゅっと握りしめる。
「凄い!あの子本当に強いや!」
 もうすぐ夫となる婚約者がバルコニーの手摺りから身を乗り出さんばかりに金で飾られた望遠鏡を使って騒ぎの発端のなっている場所を覗いている。
 本来なら私達がいたであろう場所を。
 そこにいるたくさんの国民が騎士崩れの仕掛けた魔印の影響で鬼に変貌し、同じ国

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エガオが笑う時 第5話 凶獣病(5)

 翌日、私はいつもと変わらずキッチン馬車で働いた。
 いつもと変わらない、いつもと変わらないはずなのに何故か4人組はじっと注文を取りにきた私の顔を覗き込んでくる。
 ニヤニヤと笑みを浮かべながら。
 私は、意味が分からず眉根を寄せる。
「何ですか?」
 私は、思わず不機嫌そうに言う。
 しかし、彼女たちのニヤニヤは止まらない。
 私は、むっとなって唇を紡ぐ。
「エガオちゃん」
 サヤが眼鏡の奥でに

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