織部
看取り人をまとめました! 随時更新しています!
半竜の心臓をこちらにまとめていきます! あらすじ 白竜の王と人間の女性との間に生まれた少女。棲家としている雪山で父竜と平穏に暮らしていたが、突如、現れた暗黒竜の群れに父竜を殺され、少女は手足の自由を奪われて虐げられていた。絶望の日々の中、神鳴と共に勇者一行が現れて・・。 数奇な運命を歩む半竜の少女の話し
明〜ジャノメ姫と金色の黒狼〜をまとめました!
あらすじ 宗介は、末期癌患者が最後を迎える場所、ホスピスのベッドに横たわり、いずれ訪れるであろう最後の時が来るのを待っていた。 後悔はない。そして訪れる人もいない。そんな中、彼が唯一の心残りは心の底で今も疼く若かりし頃の思い出、そして最愛の人のこと。 そんな時、彼の元に1人の少年が訪れる。 「僕は、看取り人です。貴方と最後の時を過ごすために参りました」 これは看取り人と宗介の最後の数時間の語らいの話し。 本編 19,991 19,992 宗介は、白い天井の節
不穏な空気を感じ、アズキが目を覚ます。 巨体をゆっくりと起こし、アケに近寄る。 岩のように大きく、背中を燃やした異形の猪に武士達の顔に戦慄が走り、腰の刀に手をかけ、今にも斬りかかろうする。 「やめろ」 浅黒の武士が左手を伸ばしそれを制する。 「お前達では勝てん」 「アズキ……やめて」 アケも顔だけをアズキに向ける。 アズキは、武士達を牽制するように睨みつけたままアケの言うことを聞いて動きを止める。 「お嬢様……」 ジャノメ食堂の出入り口にマンチェアを纏った家精が
翌朝、アケはいつもよりも早く起きた。 ベッドから起きて窓を見ると月はまだ薄く空にあり、遠くの東の空は橙色に燃え上がっている。 あと、少しで日が登る。 一日がまた始まる。 アケは、身なりを整え、寝巻きから茜色の着物に着替え部屋を出てそのまま食堂に向かう。 出入り口となっている大窓と小窓を開けて空気を入れ替え、外にある水道で布巾を固く絞ってテーブルを拭き、床を箒で掃く。 この後はいつもなら草原で寝そべっているアズキの背中の火を借りてお湯を沸かしてクロモジ茶を飲むのだ
「へっ?」 「無ければ作ればいいんだよ!そのなんだっけ………⁉︎」 「香辛料ですか?」 「そうっ!」 ウグイスは、びしっと人差し指を立てて叫ぶ。 アケは、思わずビクッと身体を震わす。 「香辛料みたいに作ればいいんだよ!」 「いや、香辛料はオモチがちゃんと材料を見つけてくれたから……」 「だったらオモチ!」 ウグイスに呼ばれてオモチは、ピンッと耳を立てる。 「今すぐ海水の代わりになりそうなものを探してきて!」 オモチの表情は変わらない。 しかし、赤い目に激しく動揺が走
絶対に美味いに決まっている。 鼻腔の奥で弾けるような匂いがウグイスの、オモチの、アズキの、そして屋敷の中にいる家精の食欲と胃袋を叩きつける。 アケは、そんな四人の様子を見て頬を緩めながら白い深皿に炊き上がった白飯を盛っていく。 「ジャ……ジャノメ〜」 ウグイスが緑色の目を輝かせ、ペタンコなお腹を両手で押さえながら訊いてくる。 「この匂いって……何て言うの?こんな痺れるような匂い……初めて……」 ウグイスは、香りに惚れ込むように頬を赤く染めて訊いてくる。 その後ろで
なんて幸せなんだろう……。 調理台の上で鳥肉を鼻歌混じりに捌きながらアケは、心の奥から湧いてくる温かい気持ちを噛み締めていた。 日が西へと沈みかけ、青々とした草原の色のトーンが落ちていく。 いつの間にかジャノメ食堂と呼ばれるようになった青いとんがり屋根の屋敷は夕日に当てられ、橙色に輝き、長い影を伸ばしている。 食堂の入り口となっている大きな窓の中からマンチェアを纏った金糸の髪の絶世の美女、家精が椅子に座ってアケの淹れたクロモジ茶を優雅に啜りながら柔らかい笑みを浮か
こんばんは! 織部です! 明日よりジャノメ食堂へようこそ!を再開していきます! 穏やかな日常の中で残酷な過去が蘇ってきます! アケは、みんなはどうなっていくのか? お楽しみに❗️
おはようございます😃 織部です。 看取り人エピソード3 看取り落語を読んでくださりありがとうございます♪ 織部作品で現在、唯一のファンタジー要素の一切ない物語。気がついたらもう3作目です。 看取り落語作成の経緯ですが、実はこの話し、まったく考えておりませんでした。まさにポッと出作品です。 なにせその頃の私は、少し凹み気味"で"ジャノメ食堂へようこそ!"に力を入れながらも本当に面白いのかな?皆さんに喜んでもらえてるのかな?って思考の坩堝に片足どころか肩まで使
翡翠の目にアイの大きな二重の目が映る。 アイは、茶々丸のあまりに可愛く、惚けた顔に思わず表情を綻ばせ、自分の鼻と茶々丸の鼻をくっつけて擦り合わせる。 「可愛い」 アイは、低い声で言うと豊満とは言えないと自負する胸に茶々丸をぎゅっと抱きしめる。 看取り人は、アップルジュースを啜りながらじっと二人のじゃれあいを見た。 師匠の看取りを終えた看取り人は報酬とシウマイ弁当を受け取ってからいつものようにアイと合流した。 しかし、集合した店はいつものファーストフード店ではなく、
酸素を送る機械の音が静かに居室を走る。 息苦しい。 幾ら酸素を送られても足りる気がしない。 しかし、それは身体だけの影響で起きているのではない。 身体以上に心が詰まって呼吸を塞いでいるのだ。 茶々丸は翡翠の目でじっと師匠を見る。 師匠は、黄色く濁った目で力なく茶々丸を見返す。 茶々丸は、ぱたんっと尻尾を揺らす。 「……答えは出たかにゃ?」 「えっ?」 師匠は、茶々丸を、茶々丸の後ろにいる看取り人を見る。 もう話しは、終わったはずなのに看取り人は黒子の幕を上
「貴方が茶々丸ね」 似ても似つかないのに茶々丸の声を演じる看取り人の声が元妻の声に被った。 「男の元妻は茶々丸を見て優しく微笑んでいいましたにゃ。その顔は雪のように真っ白であまりにも細い身体からは何かが抜け落ちそうになっているように見えましたにゃ」 得てして正しい表現だ、と師匠は思った。 久々に会った元妻はまさに魂が抜け出し、旅立つ直前だったのだから。 末期癌。 言葉だけなら良く聞くし、周りにいなかった訳でもない。なんなら今の自分だって末期の癌だ。 それでも元妻が
「翌日も翌々日もたくさんの人達がにゃんにゃん亭茶々丸の高座を見に公園を訪れましたにゃ」 茶々丸は、その時のことを思い出したように鼻を舐める。 「戸惑う男は当初はあの時だけだと断りましたが、その途端にブーイングの嵐。また落語を聞かせろ、可愛い茶々丸に合わせろ!茶々丸最高!と言う声が響き渡ります。仕方なく男は茶々丸と一緒に落語をしますにゃ。この時だけ、この時だけ、そう思い落語をしますがその度に観客は増えていきますにゃ」 それでもその時はすぐに収まるだろうと安直に考えていた。
「それから男は毎日、公園にやってきては茶々丸の前で落語を披露しましたにゃ」 師匠は、その時のことを思い出す。 酒に溺れた頭を覚ましてから簡単に着替え、コンビニで朝食と猫用の缶詰を買って公園に向かう。 茶々丸は、師匠がやって来るのをどこからか見ているようですぐに駆け寄ってくる。そして二人で朝食を済ますとそこから落語が始まる。 猫の皿。 猫の災難。 猫忠。 猫怪談。 猫の題材の落語が尽きたら古典落語から創作落語まで様々な落語を茶々丸の前で披露した。 茶々丸は、翡
「男は、飛び降りるのをやめましたにゃ。理由は自分でも分かっておりません。猫を見たことで興が覚めたのか?それとも猫の愛らしさにやられたのか?」 自分で言うか? まあ、さっきからずっとアピールしてるか、と師匠は苦笑する。 でも、確かにそうだ。 俺が自殺を止めたのは茶々丸と出会ったからだ。 あいつを見た瞬間、背中を押してた何かがすうっと消えたのだ。 「気がついたら男と猫はフェンスの内側に戻り、公園のベンチに腰掛けておりましたにゃ。男は自分から着かず離れない猫を横目にし、猫
note仲間のさくらゆき様が諸作"看取り人"のキャラクター、にゃんにゃん亭茶々丸を描いてくれました❗️ このクオリティ❗️ 涙ものです❗️ さくらゆき様ありがとうございます😊 にゃんにゃん亭茶々丸の出てる話しはこちらからになります❗️ よろしかったらさくらゆき様の絵を見ながら是非お読みください❗️ #感謝 #さくらゆき #看取り人
茶々丸は、息を吐くように口を開ける。 師匠は、黄色く濁った目から涙が掠れるように流れていた。 「それからしばらくたったある日のこと。男は家の近くの公園に足を運びましたにゃ。高速道路が近くにあり、野鳥が見えることで地元でも有名な公園ですにゃ。娘が幼い頃、家族でよく遊びに来た公園。設置された遊具で遊び、囲いに覆われた池に集まる野鳥を見て興奮し、妻の手作りのお弁当に喜ぶ娘の姿が蘇る。そしてそんな娘を嬉しそうに、夫を愛おしそうに見る妻の姿が蘇りますにゃ」 茶々丸は、翡翠の目を細