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散文

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#ショートショート

散文『街路樹と換気扇』

散文『街路樹と換気扇』

 空回りする換気扇を眺めていた。風に吹かれて回るだけの存在はもう何十年もそこにいるらしい。粉のような雪が申し訳程度に降っている。久しぶりにここら辺で降ってみようか、なんて思っているかのように少しずつ、微かに舞っている。

 雀が小さな鉢に植えられたというのに大きく育ってしまった何らかの木に留まった。私にとってそれがなんの木であるかは関係ない。ただ、そこには木があって、窮屈そうに生えているのが心地よ

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散文『ポツポツ』

散文『ポツポツ』

繁華街をポツポツ歩く。

その一文だけがノートに残されていた。過去の自分が何を考えたのか、思い出そうとすら思わなかった。ただ、『繁華街をポツポツ歩』いてみたくなった。

電車が停止し、歩く。
ガヤガヤとした街は暗かった。都会ももう暗い時間なんだと思う。
死んだ都会は、見慣れた場所だと思った。

頭がバラバラと崩れるような、具体性がないような、全てが消え去る瞬間のような思考は断片的で線路の美しさに気

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散文 ずっと見ていたい

散文 ずっと見ていたい



愛情は足ることがなかった
ずっと君を見ていたい

一方的にならないように
迷惑にならないように
そう思ってはいるものの
寝ている時は構いたくなる
触れ合っていたい
君の鼓動を聞いていたい
トクトク鳴るのが気持ちよかった
私を愛して欲しかった

愛が伝わる膝の上の温かさ
猫のモーター音は私に響く

「猫かいなっ!!!」というツッコミであってます😊😊

猫が可愛いんです。ナギが可愛いのです。

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コピー集 旅なんて大それたものじゃなくても

コピー集 旅なんて大それたものじゃなくても

【大学の課題コピーライト入門】
青春18きっぷでの一人旅をしてみようと思わせるキャッチコピーとボディコピーを書く。

最後の猫のやつは先生に「めっちゃ好き」と言われました。だけど、最後にかけてんんーっと言った感じだそうでなるほどなとなりました。

勉強になるぅぅぅぅ

散文 空の青さは敵わない

散文 空の青さは敵わない

踏切の青いライトには、自殺を抑制する意図があるらしい。青色は人の気持ちをおちつけるとのことだ。青色のご飯が食欲をそそらないのとなにか関係はあるのだろうか。多分ないだろうな。
ある有名な大学の最寄り駅には、青いライトが沢山あった。人身事故の多いその駅には、青いライトが沢山あった。
大学生の心を落ち着けることが、青いライトには出来るのだろうか。
自殺を本当に止めるのだろうか。
僕は知っている。その青い

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散文 ホームから飛び立てば、

散文 ホームから飛び立てば、

体がスっと吸い込まれるように、私はふわりと浮こうとした。

自殺なんて考えたことない、とは言わない。いつでも辛くて死にたくなるし、生きてる意味ってなんだろうと思うことの方が多い。だけど、小学生の時に死ねない人間だとわかってから、失敗したあとの地獄のような日々を思って死ぬ努力を辞めた。

だから、私は死なない。

死にたいけど死にたくない。

なのに、私はひとり駅のホームで立ち、電車が滑り込んでくる

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散文 テストなんてくそくらえだろ?

散文 テストなんてくそくらえだろ?

テスト会場はどこまでも静かでうるさかった。いつもは音で溢れる教室が、借りてきた猫みたいに、おすまししたとかげみたいに知らないものとなる。
今ここで私が暴れたらきっともっと別の空気が流れてくれるだろう。
1時間目のテスト監督はあいつだった。紫色のシャツを着た数学教諭。頭がいいのにこんな学校でルートを1から教えてる眼鏡だ。喋りやすいからみんなとよく喋るけど、どこか少し嫌われている。何故か近くにいるとゾ

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散文 猫の恋とは関係ない

散文 猫の恋とは関係ない

楽しいのは会うまでの時間。
会えることにドキドキしながら眠りにつくまでがいちばん私は君のことを思っている。
もしかしたら、君も同じことを思っているかもしれない。
でも、それを私が知ることはない。
そして、君も私の思いを知らずに生きる。
それでいい。
明日はただ大学に行くだけ。隣の席になるわけじゃない。前から五列目の席に座って、君の後頭部を眺めている。
グレーに近い黒のジャケットは、もうすぐ仕舞われ

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