マガジンのカバー画像

小説

96
運営しているクリエイター

#短文

コピー集『花がある生活を』

コピー集『花がある生活を』

コピーライトの授業で提出した課題を投稿します!
お題『コロナ禍に花を売るためのコピー』

最後の写真以外は、大学の写真学科の友人の作品になります。

良き写真をありがとう。いい写真撮ってはるので良かったら!

最後のこの作品は、授業中に優秀作として選んでいただきました。「これはびっくりした……」と褒められたのが幸せでした。
初めの2作も先生に気に入って頂けたのでめっちゃ嬉しかった……。

散文 電車は人になる

散文 電車は人になる

無性に泣き出してしまいそうな私は空を飛ぶ蛇のような電車に揺られる。
どこかの何かの赤い光を雨はかき消そうとする。
こんなに寂しい気持ちになるものなんだと、弱い自分を再発見する。
こんなに弱いのか、こんなに弱いのなんてダメだよ、と私は鞭打つことすら出来ない。
会えないことに涙が出そうになるなんて知らなかった。それほどに私はあの人のことが好きなのか。
それとも、ただの依存か。
愛情を注いでくれる人だか

もっとみる
描写の練習② 散文だけの世界

描写の練習② 散文だけの世界

【大教室にて】
頭が落ちた人がいる。きっとあれは人もどき。
動物に「もどき」と名づけるのは、人間だけでは無いはず。ヒトにももどきがいるだろあ。ヒトっぽいけど、何かが違うもの。この教室には何人のヒトもどきがいるのだろう。

【ガイダンスにて】
エアコンの音が響く。学生の邪念が走り出す。一人一人の脳裏にあるものがひとつになり映像となる。それがスクリーンに投影されて、目視できるようになった。

【風呂場

もっとみる
散文 毎日の頭痛

散文 毎日の頭痛

空が白いのは、誰かが牛乳をこぼしたから。
誰かにあの話を聞きたいけど、僕のもとにはそんな人はいない。
心が誰かを求めている。それは僕が一人ぼっちだからかな。

こんなに世界は広いのに、僕はこんなにも一人だ、なんてありきたりな言葉を思い浮かべては、感傷に浸っている自分がいる。
明日になれば、クラスメイトと笑って話す。
当然のように、ただただその時間が楽しいふりをして。
あの時間は、普通に楽しい。楽し

もっとみる
短文 今日も空の下

短文 今日も空の下

この空の下、あいつはどこかに転がっている。ああ、こんな空なら横たわってるのも幸せかもな。
抱きしめるべき人間を抱きしめることができずにいた自分を責めれなかった。
自分に出来ることは限りなく少なくて、笑うだけでそっと許されるような世界ならどれだけ良かったか、と思う毎日だ。
でも、彼女の痛みを少しでも取り除きたいと思うのも本心なんだ。
馬鹿げたことを言ってるってわかっている。
切ないな。
空はこんなに

もっとみる
散文 秋の存在は春の冒涜

散文 秋の存在は春の冒涜

あの日のことはもう覚えていない。何日だったか、何月だったのか、季節はきっと、夏じゃなかったはず。なんの服を着ていたっけな。
何も覚えていない。
何を覚えているべきだったかもわからない。
でも、何かが欠如した気がする。
その欠損は人生の中心では無いはずだ。ないはず、私は何も欠けていない。
欠けているのだとしたら、それも含めて私なのだ。
なんて、どうでもいい。
そんなわけない。
なんの関係もない。

もっとみる
散文 区間準急は乗りたくなる

散文 区間準急は乗りたくなる

1本だけ咲いた桜の木をしっかり見届けたつもりだった。しかし、僕の記憶の中にはまだ咲かない蕾をつけただけの桜の木の方がより深く刻まれていた。
瓦礫が沢山積まれていた。たぶん冷蔵庫とかエアコンとかの類。人の暮らしを支えていたはずの彼らは、人知れず朽ちていく。あの道を1本でたところは毎日通っているのに、僕はそれらの存在を知ることは無かった。
僕は何も知らないのだと思い知らされる。この街並みを見なれて、た

もっとみる
散文 枕元のボタンはいじらない

散文 枕元のボタンはいじらない

虚無を抱く。
1人になったベッドの中で、私はシャワーの音を聞く。
ただ湿り気を感じる。ぼんやりとした視界の中で、私はなんでここにいるのだろうという思考が巡る。
愛した人ではない。
布団の中に入ってきたその人は私を抱く。私もそれに合わせて擦り寄るけど、心は静かに冷えていく。
私は好きでもない人と抱き合えてしまう人間だった。
そのことがもう当たり前だったが、たまに寂しくなってしまう。
誰かに抱きしめて

もっとみる
散文 ここにあるのは

散文 ここにあるのは

真っ暗になる。
視界から色が無くなる。
音が大きく鳴り響き、私の中を揺らす。
どくどくと脈が打つのがわかる。
その時、舞台の上に明かりが存在した。
彼らは天使だ。彼の歌声が私を包み、透き通る。あの人が出した音が私の身体を震わせる。
彼らは天使だ。だから4人組なのだ。
この場所に降臨しては、人々を浄化する。
私の両隣に空いた席はきっと、誰かが座っている。この満席の会場を埋める椅子の半分は空席。
そこ

もっとみる
散文 水面の境

散文 水面の境

まちがいさがしの間違いの方に生まれてきたような気がしてたけど、正解の方じゃ出会えなかったと思う
なんて歌詞を聞いていい歌詞だなぁなんて思うけど、実際間違い探しに正解も不正解もないんじゃないか?
でもなんでか、どっちかを間違いだと思っているもんな。正しいのがどっちかなんて考えてないくせに、両者が間違いだと思っていたよね。

え?右が正解で左が間違い?なんで?
ああ、確かにこっちの方が非現実的か。

もっとみる
SS『制服と隣の席』

SS『制服と隣の席』

【#ほぼ1ヶ月強化お題】
2018年 1周目『初恋』×金曜日『時代、新品、花粉』

あの日初めて着た新品の服は新品のまま。ひどい花粉症だったというのに、今はもう春はただ楽しいだけの季節であった。
特に何を考えるわけでもなく、学校の中を歩き回る。目的は何も無いけれど寄った職員室は誰もいなかった。ああ、そうだ。今日は入学式か。
私は和希と一緒になりたくてこの学校に入学した。残念なことにクラスは違ったけ

もっとみる
散文『寝起きの空と共に』

散文『寝起きの空と共に』

【#ほぼ1ヶ月強化お題】
2018年8月2日
1週目【幼馴染】×木曜日【サンダル、アスファルト、氷】

夏のアスファルトに落ちた氷が溶けるようにその日の夜はすぐに明けてしまった。隣に君が眠っているのは生まれた時から変わらない。けれど、あの頃とは違い、僕の方が先に目を覚ます。君の長い髪にそっと手を伸ばすと君は少しだけ微笑んだように感じた。
シャツを羽織り、並んだサンダルの片方を履きベランダに出る。太

もっとみる
散文『夜の底』

散文『夜の底』

眠れない時に感じるこの感覚はなんなのだろう。何か自分の中にぽっかりと穴が出来、それを必死に埋めようとしているような。
息もできている。心臓も動いている。脈だって。なのに自分はここにいないと感じる。
世界から音が消えたよう……、なんてロマンチック過ぎる。実際は家族の生きている音がする。虫の音がする。夜の音がする。
ひとりぼっちじゃないのに埋まらない穴は、朝になると存在自体忘れ去られる。忘

もっとみる
短文『死は詩では無い』

短文『死は詩では無い』

嘔吐く様な朝が来た。
逃げることも出来ず、ただただ向け合い共存するだけの関係であった。
強い風に吹かれても吹っ飛ばされることの無い人間はしょうもなさそうに歩いていく。
他者がいることで形成されている世界の中で、自分をイヤホンで塞ぐ。
快適とはいえないことがもはや気持ちいいのだった。
苦しまずに死ねることを最大の願いとしておいて、心のどこかでは悲劇の死をやりたくて仕方がない。
些細なことで死ねない時

もっとみる