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【短歌】操車場にオレンジ色の孤独たち発車できるとまだ信じてる

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心のままに詠んでみました。ベクトルを定めないスタイルで綴ります。
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2023年2月の記事一覧

短歌 いのち未満

短歌 いのち未満

生卵いのち未満と決めつけて割り掻くひとの細胞分裂

毎朝、溶き卵の味噌汁を作っている。寝ぼけ眼で生卵を割ると、一気に目が覚める日がある。決まって、あまり眠れなかった朝だ。

この卵は、無精卵なのはわかるんだけど、じゃあ、いのちではないのか。いのちとは、どこからどこまでなんだろう。

そのあたりの倫理等について、無知蒙昧な私には全然理解できないのだけれど、出来上がった味噌汁を飲むときには、手を合わせ

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短歌 小夜風

新宿へ向かう列車の最後尾 は、る、と口にし小夜風を待つ

ラッシュと逆向きの列車に乗る時の、ほんのりとした愉悦。こんな時間から新宿に向かうのには、ちょっとした理由があって。

その理由を、早くきみに話したくて、駅のホームで私は、すっかり浮き足立っている。

寒さらしい寒さも、今日までらしい。明日からはスプリングコートを常用できるのが、心まで身軽になれたみたいで、とても嬉しい。

春が来たら、たくさ

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短歌 ナイフ片手に

短歌 ナイフ片手に

おそろいのタオルはためく昼下がりナイフ片手に影も揺れてる

なんてことない日曜の昼。ベランダでは朝に干した洗濯物が風にはためいている。

なぜか胸がざわつくのは、きみが苺のヘタを果物ナイフで切っている、トン、トン、というやけに規則正しい音のせいだろうか。

私はヘタを取るとき、口に含んでから手でむしってしまうのだけれど、きみの丁寧さを少しは見習わなきゃな、と思う。

それにしても、トン、トン、トン

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短歌 きみの黯い目

短歌 きみの黯い目

枯れていく花束見つめ幸せを過去形にするきみの黯い目

花束って、もらったときは嬉しいんですが、徐々にしおれて枯れていく経過を見届けるのが少し悲しいです。

誕生日に贈ってもらった花束が、そろそろくたびれてきてしまいました。捨てるのがしのびないんだよなぁ。。

それでも、次の燃えるごみの朝になったら、容赦なく、ためらいごと処分するんだろうな……。

気まぐれに、上野動物園へ行ってきました。シャンシャ

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ぶらり春さがしさんぽ

ぶらり春さがしさんぽ

今日はとても天気が良かったので、ダウンコートからスプリングコートに装備をチェンジして、一駅となりの駅とその近くの大きい公園まで歩いてきました。

花の写真がたくさん撮れたので、花テロってみようと思います。

歩数にして12,000歩超え!歩いたな~。

途中で喫茶店に立ち寄りました。ソイラテが美味しかった(こちらは撮り忘れたです)。

さらに道中で図書館に寄って、瀬戸夏子の歌集「かわいい海とかわい

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短歌 叫べたら

短歌 叫べたら

叫べたら壊れることもなかったと軋む吊り橋の上できみは

きみの抱く塞がりようのない生傷を目の当たりにして、「大丈夫だよ」なんて言ったらきっと軽率で、きみに嫌われてしまうかもしれない。

それが怖くて、あと一言がどうしても口から出てこない、そんな日もある。

それも、ふたりで暮らせばこそ。許し手放してようやく進める日もあれば、拘泥し意固地になり後退する日もある。

待てば甘露の日和あり、とはよく言う

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短歌 わざわざ口に出す

短歌 わざわざ口に出す

「生きている」わざわざ口に出す日々となって久しい春一番よ

私の住む街では、まだ春一番が吹いていません。いよいよ季節が春へと動き出したなと感じたのが、職場近くのビルの前に植えられている桜の木から、ぐるぐる巻きになっていたLEDのコードが取れていたことでした。

よく見ると、つぼみもまだ固かったものの、少し膨らんでいたような。

春先は、どうしても調子が不安定になります。生まれて初めて精神面で調子を

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短歌 リボンをかけて

短歌 リボンをかけて

めでたし、のつづきをみんな生きている罪の意識にリボンをかけて

人は誰もが悪業を抱いて生きている、らしい。だから、もれなく私もだ。(私は、特定の宗教は信仰していません)

日々、たくさんの選択をして私たちは生きている。前提として選択肢があるということが、そもそも大切なんだけれど。

どんな選択をしても、その結果が悪業に繋がらないとは限らない。どんなに素晴らしい(とされる)選択をしたとしても。

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短歌 二月 十首

短歌 二月 十首

1
傷つけた人の顔にはモザイクをかけやり過ごす二月の短さ

2
泣きたいと泣くの間の距離感を埋める二月の生ぬるい風

3
花ですか、それとも可能性ですかきみが二月に失ったのは

4
ただ画面のなかに映る海があり見つめるだけのぼくたちがいた

5
傷あとはまだ傷だったあの頃の二月因果を知って悶える

6
性格の悪さと見た目が反比例するという仮説が膾炙する

7
ブレーキの音がきゅるりとたぶんあれ間に

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短歌 ひと 十首

短歌 ひと 十首

1
まだ夢を見ているのって笑うひとびとは夢に見限られたひと

2
渋谷系のひとは「渋谷系」って書かれたシャツは着ないよたぶん

3
ああそうかほうちって法治じゃなくて放置のほうか(だからくるしい)

4
三月を待つひとの背に咲く梅を剪定鋏で根元から切る

5
溶けかけの雪が舗道を泣かせてる街が滲んで立ち尽くすひと

6
捨てられた雪でできてる雪うさぎ目玉までそのへんの小石で

7
蹴飛ばせば地球が

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短歌 大雪 十首

短歌 大雪 十首

1
Bメロを繰り返してる口笛が金曜の夜の雪に消される

2
「積もったね」返事をせずに訥々と雪を人さし指で追ってた

3
新雪に初めて足跡つけたからそこからここは支配空間

4
コンビニのおでんが今日は優しくて窓の外では雪降り続く

5
マグカップに注ぐ白湯も舞い踊る雪も水と思えば春はもうすぐ

6
「雪は降る」「あなたは来ない」「雪は降る」ごめん続きはよく知らないの

7
臆病になってばかりの雪

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短歌 雪の日のラジオ 十首

短歌 雪の日のラジオ 十首

1
ふつおたはフランスのオタクじゃないの。「よくある質問」に入れておく?

2
大雪の予報を告げる予報士の隠せぬ笑みが音声に乗る

3
眠れない夜に何処かのくだらないトークに励まされる(ありがとう)

4
まだまだだまだまだすぎてまだなのだ それでもいいとおもえたらよい

5
線路上に雪が積もれば列車らは鉄塊として息を潜める

6
秒針を見つめる瞳炯炯と 生きているのがつらいんですね

7
「みず

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【日記】プリンづくりと新刊の構想と

【日記】プリンづくりと新刊の構想と

冷蔵庫に、クリスマス時期に買ってそのまま使わずに放置されていた液体ホイップがありました。消費期限の2月8日がそろそろ近づいてきたので、さてどうしようと考えた結果、「そうだ、プリン、つくろう」と思ったのが今日の午後。気まぐれに有給休暇を取ったので、ここはひとつ有意義に過ごしてみようと思った次第です。

以下に、とても簡単なレシピをメモしておきます。不器用クィーンの私でも作れて、本当に簡単なので、よか

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短歌 箱庭 十首

短歌 箱庭 十首

1
そのなかに神の文字あり僕たちは何を治しているのでしょうか

2
こころには絆創膏が貼れなくていつになっても血が止まらない

3
夕食後カップを持って行列になって薬を待つ午後七時

4
映画にもカフェにも買い物にも行けず何を癒しと呼ぶのでしょうか

5
過去がなおいまを蝕むエビデンスになりませんかこの苦しみは

6
手遊びをしていた老婆はもしかしてタイムスリップしてきた私

7
空の青よりもしん

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