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短歌 叫べたら

叫べたら壊れることもなかったと軋む吊り橋の上できみは


きみの抱く塞がりようのない生傷を目の当たりにして、「大丈夫だよ」なんて言ったらきっと軽率で、きみに嫌われてしまうかもしれない。

それが怖くて、あと一言がどうしても口から出てこない、そんな日もある。

それも、ふたりで暮らせばこそ。許し手放してようやく進める日もあれば、拘泥し意固地になり後退する日もある。

待てば甘露の日和あり、とはよく言うけれど、本当に大切な言葉だと思う。物事がうまくいかない時は、その良くない状況が永遠に続くんじゃないかと感じてしまって、その時はかなりしんどい。

でも、きっと明日は大丈夫。なんて、よくあるポップスの歌詞みたいだけれど。明日もきみの傷は血を流し続けているし、私は相変わらず己の無力に打ちのめされるんだろう。それでも、「大丈夫」と思い込んで、本当に大丈夫になるんだ、私たちは。

あの日あの時、叫ぶことができたなら、どんなに良かっただろうね。抑圧的な沈黙を強制されたきみは確かに、叫びの意味を心で理解している。そのことがどこか誇らしくさえあるのは、私のエゴだろうか。

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