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散文

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#人生

傷心と秋の光

傷心と秋の光

秋は光が和らぐ。空気も和らぐ。

心の痛みが和らぐか…というと、そんなことはない。むしろ秋は悲しみが増す。

でも、つらいときには悲しげな曲が聞きたくなるように、わたしの心には秋の寂しさがしっくりくるみたい。秋は心の世界に少し近い。

むかし、ある人が「秋は空白の期間だね」とわたしに言った。そのときは意味がよくわからなかったけど、今はわかる。わかるけど、言葉にならない。言葉にならない空白そのものが

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かっこ悪くていいからかっこつけない

かっこ悪くていいからかっこつけない

休日のいちばんの楽しみは朝食だあ。平日の朝はごはんを味噌汁やお茶漬けの素でチャーッとかき込んで終わりだけど、休日はラジオを聞いたり映画を見たりしながら、前日に買っておいた美味しいパンを食べる。

今日はレーズンとくるみ、紅芋と鳴門金時のブレッド。昨日の残りのシチュー。

で、わたしには先延ばし癖があるので、休日の朝はやりたいことややらなければいけないことを紙に箇条書きにしておくことが多い。

猫の

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孤独な天使

2012年5月7日に、ぼくは自殺しました。そして目が覚めたら、ぼくは天使になっていたのです。いま、ぼくの背中には翼が生え、指の先まで内側から美しく光り輝いています。どうやらここは天国のようです。青空があり、心地のよい風があり、透明な太陽の輝きに満ち満ちています。朝があり、夜があり、もちろん美しい夕暮れもあります。ここにはみんながいます。両親や兄弟、友人や、大好きだったペットたち、あるいは、目も当て

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キリストの愛 釈迦の慈悲 人間の情

キリストの愛 釈迦の慈悲 人間の情

しばらく落ち込んでいました\( ö )/

春の陽気にあてられたのか、なんだか知らない間に怖い夢のなかにひとり閉じ込められてしまったように感じられ、海や空や花にさえ目を瞑りたくなり、木々のざわめきや小鳥の鳴き声にも耳を塞ぎたくなっていました。

にもかかわらず、心の奥底では自分は何があっても絶対に大丈夫なんだという確信のようなものもあって、その信仰心と、何もかもが不確かな現実とのはざまで、大混乱し

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わたしよりもたくさんの

わたしよりもたくさんの

月に二度、精神科病院に行く。今年の夏で通い始めて十年になるけれど、病院にいると、世の中にはじつにいろいろな人がいるものだと深く考え込んでしまうことがある。

たとえば、いつも同じ時間に同じ場所で目を瞑ってぴょんぴょんと飛び跳ねているおじいさんがいる。きっとおじいさんにとってそれは一種の大切な儀式なんだろうな。一生に一度の願いをこめるみたいにぎゅっと目を閉じて、それはもう一心に飛び跳ねている。そのお

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やっと休日、人生の午後

やっと休日、人生の午後

なんだか一週間むだに疲れてしまったような気がするけど、今はヨガマットの上に寝転んで太陽の光を浴びながらAir Supplyを聴いている。今日は何もしない日にするんだ。やっと休日。やりたくないことは念入りに無視する。

窓に貼ったかけら柄のシールが反射して、手のひらに虹色の光を落としているのをぼんやりと見守る。天気予報は曇りでも時々こうして雲の隙間から射し込んだ太陽の光がわたしの手元まで届く。暖房と

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