魔女達のユーモラスな物語

オペラ楽団「墓の魚」に登場する200人の魔女一人一人のユーモアと風刺あふれる物語を描い…

魔女達のユーモラスな物語

オペラ楽団「墓の魚」に登場する200人の魔女一人一人のユーモアと風刺あふれる物語を描いていきます。 スペイン風オペラ楽団「墓の魚」公式サイト http://site-1295095-2445-4622.mystrikingly.com/

記事一覧

魔女ドマンドルクス・ド・ラ・パリュ2

【堆肥を運ぶ荷車】

魔女コルタ・エル・バカラオ(鱈切り)

テーブルの上に、腐った南極イバラガニの死体が置かれている。 コルタは思う。 移民の連中が喰う様な蟹だ。 あの連中は自分達の事を魔女(ブルハ)などとは言わない。 暴力男…

魔女カルタ

■■■あるドイツのサバトでの会話■■■ **グローデンフェルト神父** 娘よ。 お前のその目の玉。 入れたり、出したり、 取り外しがきくとはな。 そんな器用な事、何処で…

ある大罪人の独白(前狂言)

永年の中で培われてきた遷移の遺産を、 あるいは人間の愛そのもの、 ある程度、ご都合の主義のものも、 竜舌蘭の名が示す様な真実のやつも、 そこから得る酒も含めてだが、…

ある南米の独裁者

海は、煉獄の深淵まで続く巨大な聖堂だ!! そこでは厳格なミサが毎夜、繰り返される。 ただ単調に。 奉献に始まり、 途中の「暗闇の朗読」(ルソン・ド・テネブレ)、 終焉の…

魔女マリー・ド・アスティコット(蛆虫のマリー)

■マリー・ド・アスティコット(蛆虫のマリー) フランス出身 ジャンは、とても人から愛される日雇い耕作人(ジョナリエ)だった。 持っている財産は馬小屋の様な家と、 ニン…

リュウゼツラン(番外編)

スガラムディ村の魔女達の起こした嵐で 根を失ったアガベが、 乾燥した赤土の崖の上で横たわっていた。 「乾いてゆく・・」 醜悪な日差しからの搾取により、 水を失い、草…

魔女エスケレード・ポードリ

■エスケレード・ポードリ ポルトガル出身 エスケレード・ポードリは、 やっぱり魔女の集会に所属はしていたけれど、 それはとても小さな規模のもので、 若い魔女であるポ…

魔女ガラパタ

■南フランス出身。 ガラパタ、あるいはガラパダと呼ばれる魔女。 彼女には以下の話が伝えられている。 ガラパタは植物に関するまじないを得意とする魔女だったが、 多く…

魔女ウオイ・デ・ジャブチ(赤足亀)

■ウオイ・デ・ジャブチ ブラジル北東部ピアウイ州出身。 ウオイにはなりたいものが何も無かった。 信仰心も無く、ミサでも与えられたパンを取りこぼしてしまう彼女を 人…

魔女ペス・カンポサント(墓の魚)

■ぺス・カンポサント(墓場の魚) カスティーリャ地方出身 ドイツ文学の研究者。 いつも黒い服を着ているのは、 敬愛している詩人インゲボルグ・バッハマン(詩人)に対して …

魔女ゾエ・ド・ラ・ヴォルド

■ゾエ・ド・ラ・ヴォルド フランス・ピカルディ出身 地方の名門の三女として生まれる。 生まれた時から世の中を[死んだ魚達の生簀]と感じ、 世界を冷たい目で眺めていた…

魔女アクトゥリス

■アクトゥリス イタリア出身。 自分の教養にこだわった魔女。 伝わる彼女の物語は以下の様なものである。 アクトゥリス伯母さんが死んだ。 伯母さんは広い世界へ飛び出…

魔女カラバサ・ベネノサ

■カラバサ・ベネノサ 重度のアル中魔女で、 [酒を飲んで酔わないと、悪魔も妖術の世界も見えない] という三流の魔女。 青い舌のカラス(テカレット)が使い魔。 多くの良…

魔女ラ・ガンティエール

■ラ・ガンティエール イタリア系フランス人。 この世で最も年経た魔女。 ラ・ガンティエールは昔、犬を飼っていた。 彼女は自分の相棒である犬に言った。 「いいかい?…

魔女エル・マゴット

■エル・マゴット 全てのフランス魔女達の棟梁(頭目)。 本名はマリー・ヴォアザン。 幼少の頃より、天才、異様児と呼ばれ、 あらゆる分野の習得に異様な速さを示す。 し…

魔女コルタ・エル・バカラオ(鱈切り)

魔女コルタ・エル・バカラオ(鱈切り)

テーブルの上に、腐った南極イバラガニの死体が置かれている。
コルタは思う。
移民の連中が喰う様な蟹だ。
あの連中は自分達の事を魔女(ブルハ)などとは言わない。
暴力男(コンパドリート)だとか、余所者(グリンゴ)だとか言うのだ。
思うに、彼らは彼らなりの幼さを持って、
かつて、事に挑んだんじゃないだろうか?
そう完璧という訳でもなく、
一から何かを作ろうとしたのかもしれない。
まぁ、どの道、意味は同

もっとみる
魔女カルタ

魔女カルタ

■■■あるドイツのサバトでの会話■■■

**グローデンフェルト神父**
娘よ。
お前のその目の玉。
入れたり、出したり、
取り外しがきくとはな。
そんな器用な事、何処で覚えた?
夜に教会の灯(ランタン)を
消しに来る様な連中は幾人も見てきたが、
そんな芸を披露する魔女など初めて見る。

**カルタ**
なんだ?
夕暮れにドーフシュタス(路地)の辺りを
ウロウロしている奴がいるなと思っていたら、

もっとみる
ある大罪人の独白(前狂言)

ある大罪人の独白(前狂言)

永年の中で培われてきた遷移の遺産を、
あるいは人間の愛そのもの、
ある程度、ご都合の主義のものも、
竜舌蘭の名が示す様な真実のやつも、
そこから得る酒も含めてだが、
それらは全て屠殺され、叫び声をあげ、
ラザロの様に腐敗する。
そんな死を上演させる合図となる様な
呪われた錆びた土気色のラッパが目の前にあるとして、
それを吹くか?否か?と問われた時、
俺はその楽器を吹いた。
大変申し訳ないのだが、

もっとみる
ある南米の独裁者

ある南米の独裁者

海は、煉獄の深淵まで続く巨大な聖堂だ!!
そこでは厳格なミサが毎夜、繰り返される。
ただ単調に。
奉献に始まり、
途中の「暗闇の朗読」(ルソン・ド・テネブレ)、
終焉のミサ(イテ・ミサ・エスト)まで
カイアシ類達は歌うのだ。
言葉(シナクシス)が省かれ、
淡々と儀式(エウカリスティア)だけが行われるミサは
そう、
人間味の無いミサだ!!
骨のミサだ。
稀に短いミサ・ヴレヴィスが展開され、
しかし、

もっとみる
魔女マリー・ド・アスティコット(蛆虫のマリー)

魔女マリー・ド・アスティコット(蛆虫のマリー)

■マリー・ド・アスティコット(蛆虫のマリー)
フランス出身

ジャンは、とても人から愛される日雇い耕作人(ジョナリエ)だった。
持っている財産は馬小屋の様な家と、
ニンニクで作ったお守り位なもので(牝鶏七羽と交換して手に入れた)、
子供の頃、プティット・エコール
と呼ばれた学び舎に行く暇すら親から与えられなかった彼は、
学識なども全く持っていなかったが、
誰の話でも真剣に聞く優しさと、他人の気持ち

もっとみる
リュウゼツラン(番外編)

リュウゼツラン(番外編)

スガラムディ村の魔女達の起こした嵐で
根を失ったアガベが、
乾燥した赤土の崖の上で横たわっていた。
「乾いてゆく・・」
醜悪な日差しからの搾取により、
水を失い、草は果てようとしていた。
だが、その時、運よく雨季がやって来た。
幾日も幾日も大地に雨が降り注ぐ事になったのだ。
その雨から生まれた黒魔術の様な濁流に、
沢山の虫や、蠕虫達が流され、
崖の下の海へ落下していった。
「哀れな命は・・・、

もっとみる
魔女エスケレード・ポードリ

魔女エスケレード・ポードリ

■エスケレード・ポードリ
ポルトガル出身

エスケレード・ポードリは、
やっぱり魔女の集会に所属はしていたけれど、
それはとても小さな規模のもので、
若い魔女であるポードリは、
そのコミュニティに入ったばかりの新入りだった。
とはいえ利発で、要領の良いポードリは、
そのコミュニティの中でそれなりに努力して、
自分のやるべき事、
やっておいた方が周りの魔女達に好感が得られるような事
(つまり、それも

もっとみる
魔女ガラパタ

魔女ガラパタ

■南フランス出身。
ガラパタ、あるいはガラパダと呼ばれる魔女。
彼女には以下の話が伝えられている。

ガラパタは植物に関するまじないを得意とする魔女だったが、
多くの同じ門徒の者達が自然と調和し、
人間と距離を置く魔女達であったのに対して、
彼女は人間社会に積極的に関わり、人を愛する故に、
人に害を為す事に自然の知恵の全てを捧げる魔女であった。
人々は、彼女を邪悪な魔女として恐れ、
ガラパタは人々

もっとみる
魔女ウオイ・デ・ジャブチ(赤足亀)

魔女ウオイ・デ・ジャブチ(赤足亀)

■ウオイ・デ・ジャブチ
ブラジル北東部ピアウイ州出身。

ウオイにはなりたいものが何も無かった。
信仰心も無く、ミサでも与えられたパンを取りこぼしてしまう彼女を
人々は、人生の消えゆく松明の灯りの様だと言い、
虚しい食卓の皿の上のカメ「ジャブチ」の様だと言い、
彼女はいつの間にか
カメのウオイ(ウオイ・デ・ジャブチ)と呼ばれる様になった。

彼女は勉強嫌いだったので、勉強も全くする事はなかった。

もっとみる
魔女ペス・カンポサント(墓の魚)

魔女ペス・カンポサント(墓の魚)

■ぺス・カンポサント(墓場の魚)
カスティーリャ地方出身
ドイツ文学の研究者。

いつも黒い服を着ているのは、
敬愛している詩人インゲボルグ・バッハマン(詩人)に対して
喪に服している為。

彼女は三人姉妹の末っ子として生まれた。
裕福な両親から、姉妹の中で最も人形の様に愛されたが、
それは彼女の最も気に喰わない事だった。
しかし、詩が好きで、詩学を学んでいた彼女は、
ある日、唐突に悟った。
「私

もっとみる
魔女ゾエ・ド・ラ・ヴォルド

魔女ゾエ・ド・ラ・ヴォルド

■ゾエ・ド・ラ・ヴォルド
フランス・ピカルディ出身

地方の名門の三女として生まれる。
生まれた時から世の中を[死んだ魚達の生簀]と感じ、
世界を冷たい目で眺めていた。
その独特の目つきと態度により、
周囲から[死んだ魚の令嬢]と囁かれる。

妖術や学問に興味を示し、
特に植物学、中でもアザミ(カルド)の研究に偏執的な才能を発揮する。
植物学により、この世の心理を解き明かそうとする為、
その姿勢は

もっとみる
魔女アクトゥリス

魔女アクトゥリス

■アクトゥリス
イタリア出身。

自分の教養にこだわった魔女。

伝わる彼女の物語は以下の様なものである。

アクトゥリス伯母さんが死んだ。
伯母さんは広い世界へ飛び出して、自由を得る為に、
愚かな男に束縛などされない為に英語を勉強した。
だけど、家の金庫には彼女に使う分のお金が無かったので
(お爺さんがアサリを沢山買ってしまったのだ!!)、
彼女は大学に行く事ができなかった。

彼女の飼っている

もっとみる
魔女カラバサ・ベネノサ

魔女カラバサ・ベネノサ

■カラバサ・ベネノサ
重度のアル中魔女で、
[酒を飲んで酔わないと、悪魔も妖術の世界も見えない]
という三流の魔女。

青い舌のカラス(テカレット)が使い魔。

多くの良識ある人達は彼女に、
「酔わなければ見えないお前の世界など、幻覚に過ぎない」と言った。
だが、それに対して彼女は笑って言った。
「酔わないで見える世界なら幻覚ではない、なんて、
なんで思えるのですか?
あなた方、酔ってるのでは?

もっとみる
魔女ラ・ガンティエール

魔女ラ・ガンティエール

■ラ・ガンティエール
イタリア系フランス人。

この世で最も年経た魔女。

ラ・ガンティエールは昔、犬を飼っていた。
彼女は自分の相棒である犬に言った。
「いいかい?思想を持ってはいけないよ。
思想ってやつは、捕らわれると、
その為に自らを飲み込む大波に向かっていく
[生きる事]とは矛盾した生き物になっちまうんだ」
しかし、やがて犬は社会主義の思想を持ち、
スペイン内戦の義勇軍に参加する為にスペイ

もっとみる
魔女エル・マゴット

魔女エル・マゴット

■エル・マゴット
全てのフランス魔女達の棟梁(頭目)。

本名はマリー・ヴォアザン。
幼少の頃より、天才、異様児と呼ばれ、
あらゆる分野の習得に異様な速さを示す。

しかし反面、精神は未熟で短気な面が目立ち、
特に異様な程の負けず嫌いで、
同世代の子供達と勝負しても、勝つ為に手段を選ばない、
負けた者を徹底的になじるなど、
他者に対しての思いやりに欠けていた性悪な性があった。
その為、徐々に周囲か

もっとみる